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関西vs関東若手漫才対決勃発殺人事件前編予告編
1 :司会進行:はりけ〜んず :04/03/26 00:01
こんな感じの
中川家 VS くりぃむしちゅー
フットボールアワー VS アンタッチャブル
ますだおかだ VS おぎやはぎ
2丁拳銃 VS 品川庄司
笑い飯 VS キングオブコメディ
千鳥 VS ポイズンガールバンド
麒麟 VS スピードワゴン
チュートリアル VS タカアンドトシ
ハリガネロック VS 18KIN
アメリカザリガニ VS 飛石連休

802 :名無しさん :04/10/11 18:45:15
オケ。
さて残り90KBあるわけだが。

803 :名無しさん :04/10/11 18:54:08
容量どのくらいになったら新スレ立てるべき?よく知らなくてスマソ

804 :名無しさん :04/10/11 19:31:03
>>801
ルールとかもう少しきっちりしなくても大丈夫だろうか。
これから初めて投下する職人さんにはまとめサイトとか参考にしてもらいたいね。

805 :名無しさん :04/10/11 20:44:44
ちょっと細かく足してみたよ

・微妙な表現(痛々しい場面など)が出る場合は、前もって表記してください

・設定だけを書きたい人も、文章だけ書きたい人もщ(゚Д゚щ)カモォン!!

・設定は強すぎたりとかは無しで。条件などを付けてバランス良く

・初投下の人はまとめサイトなど参考にして雰囲気とか掴んでみたらいいかも

・これどうよ?とか思ったりしたら、聞いてみたりしてください
(書きたい芸人さんや力などが既出かとか。)

・設定の形式は↓な感じで
例)
井戸田潤(スピードワゴン)
石・・・・シトリン←宝石言葉が「勇気」や「陽気さ」など太陽っぽい
能力・・・・自分が納得できないことが起こったとき(例えば仲間が自分を庇って倒れるなど)「アタシ認めないよ!」でそれが起こる前まで時間を戻せる。
    体力が満タン状態なら「無かったこと」にもできる(庇って倒れても傷を負っていないとか)くらい強力。
条件・・・・ものすごくパワーを使うので一日に何度も使えない。数回が限度。
    パワーが尽きる(使いすぎる)と発動しない。または戻る時間が極端に短くなる。
    そして自分が本当に納得していない事ではないと力が発動できない。
    (例えばトランプで自分の手札が悪くて負ける→敗因を納得しているので発動しない
     こっちが勝ってるはずなのにイカサマで負ける→納得できないので発動して勝負の前に時間が戻せる)

適当に叩き台にしてちょ

806 :名無しさん :04/10/12 07:04:49
ちょっと考えてみたんだが、一度封印された石でも本人の(悪意の無い)強い意志があれば能力復活可能とかはどうだろう。
暴走する「汚れた石」は黒っぽい色になっていて、拾った持ち主の悪意を増幅する。そして封印されると元の色に戻って(「汚れ」が消えて)使っても暴走しなくなる。
で、どっかに石を汚れさせる本体があって、最終目標はそこ、とか。

個人的な妄想なんで気に入らなかったらスルーしてください。

807 :名無しさん :04/10/12 09:24:39
>>806
分かりやすくていいね。あとはまとめサイトのURLを入れれば完璧だと思う。

ところでオデンヌタソは戻ってこないのだろうか…続きが読みたい

808 :名無しさん :04/10/12 17:21:42
とりあえず、今までのまとめてみた

スレタイ
【石の力】もし芸人に不思議な力があったら【開放】

テンプレ
前スレ
http://tv6.2ch.net/test/read.cgi/geinin/1080226867/

まとめサイト
http://risus.ifdef.jp/index.htm

・芸人にもしもこんな力があったら、というのを軸にした小説投稿スレです
・設定だけを書きたい人も、文章だけ書きたい人もщ(゚Д゚щ)カモォン!!
・一応本編は「芸人たちの間にばら撒かれている石を中心にした話(@日常)」ということになってます
・力を使うには石が必要となります(石の種類は何でもOK)
・死ネタは禁止
・やおい禁止、しかるべき板でどうぞ
・sage必須でお願いします
・職人さんはコテハン(トリップ推奨)
・長編になる場合は、このスレのみの固定ハンドルを使用する事を推奨

809 :名無しさん :04/10/12 17:22:27
>>808続き
(書き手さん用)
・石や能力はなるべく被らない様に(番外編ならば多少被ってもOK)
・文中で新たな能力が出た場合は、必ず最後に記すこと
・文の最初にレス番号をつけて、何処からの続きなのか明記すること
・微妙な表現(痛々しい場面など)が出る場合は、前もって表記してください
・初投下の人はまとめサイトなど参考にして雰囲気とか掴んでみたらいいかも
・設定は強すぎたりとかは無しで。条件などを付けてバランス良く
・これどうよ?とか思ったりしたら、聞いてみたりしてください
(書きたい芸人さんや力などが既出かとか。)
・設定の形式は↓な感じで
例)
井戸田潤(スピードワゴン)
石・・・・シトリン←宝石言葉が「勇気」や「陽気さ」など太陽っぽい
能力・・・・自分が納得できないことが起こったとき(例えば仲間が自分を庇って倒れるなど)「アタシ認めないよ!」でそれが起こる前まで時間を戻せる。
    体力が満タン状態なら「無かったこと」にもできる(庇って倒れても傷を負っていないとか)くらい強力。
条件・・・・ものすごくパワーを使うので一日に何度も使えない。数回が限度。
    パワーが尽きる(使いすぎる)と発動しない。または戻る時間が極端に短くなる。
    そして自分が本当に納得していない事ではないと力が発動できない。
    (例えばトランプで自分の手札が悪くて負ける→敗因を納得しているので発動しない
     こっちが勝ってるはずなのにイカサマで負ける→納得できないので発動して勝負の前に時間が戻せる)

810 :名無しさん :04/10/12 17:23:32
>>809続き
以下はスルーしても構わない設定です。
・一度封印された石でも本人の(悪意の無い)強い意志があれば能力復活可能
 暴走する「汚れた石」は黒っぽい色になっていて、拾った持ち主の悪意を増幅する。
 封印されると元の色に戻って(「汚れ」が消えて)使っても暴走しなくなる。
 どっかに石を汚れさせる本体があって、最終目標はそこ。
・石の中でも、特に価値の高い(宿る力が高い)輝石には、魂が宿っている(ルビーやサファイヤ、ダイヤモンド、エメラルドなど)
 それは、古くは戦前からお笑いの歴史を築いてきた去る芸人達の魂の欠片が集まって作られたかりそめの魂であり、
 石の暴走をなくす為にお笑い芸人達を導く。
・石の力は、かつてない程に高まった芸人達の笑いへの追求、情熱が生み出したもの。
 持ち主にしか使えず、持ち主と一生を共にする(子孫まで受け継がれる事はない)。
・石の暴走を食い止め、封印しようとする芸人たちを「ユニット」と呼ぶ。
 逆に、奇妙な黒い欠片に操られて暴走している芸人たちを「黒いユニット」と呼ぶ。
 (黒い欠片が破壊されると正気に戻る。操られている時の記憶はなし。) 


現在の書き手さん  ()内は出演中の芸人、?は名前未登場芸人、「」は登場予定
本編
オデンヌ ◆RpN7JISHH. さん(ダンディ坂野、スピードワゴン、中川家、「長井秀和」、「劇団ひとり」)
"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE さん(スピードワゴン、江戸むらさき、?)
619 ◆QiI3kW9CIA さん(品川庄司)
カンニング編 ◆8Y4t9xw7Nw さん(カンニング)
672 ◆1En86u0G2k さん(エレキコミック、?)

番外編
現在執筆中 ◆n28wRDMeV2 さん(ビッキーズ、スピードワゴン、おぎやはぎ)
ピン芸人@692 ◆LlJv4hNCJI さん(長井秀和、劇団ひとり、波田陽区)

811 :名無しさん :04/10/12 17:25:25
>>810続き
登場芸人  番外編登場芸人、本編の芸人の能力等の詳細はまとめサイトで
()内は石
本編
・アンガールズ 田中(ハウライト)/山根(アベンチュリン)
・アンジャッシュ 児島(オパール)/渡部(水晶(透明))
・いつもここから 山田(グリーンフローライト)/菊地(ツァボライト、アイオライト)
・江戸むらさき 野村(バイオレット・サファイア(甲))/磯山(バイオレット・サファイア(乙))
・エレキコミック 今立(?)/谷井(?)
・おぎやはぎ 小木(トルマリン)/矢作(ラリマー)
・カンニング 竹山(ルビー)/中島(サファイヤ) 
・麒麟 川島(黒水晶)/田村(白水晶)
・くりぃむしちゅー 有田(パイライト)/上田(ホワイトカルサイト)
・さくらんぼブービー 鍛冶(オキニス)/木村(カーネリアン)
・品川庄司 品川(ラブラドライト)/庄司(モルダヴァイド)
・スピードワゴン 井戸田(シトリン)/小沢(アパタイト)
・ダンディ坂野(花崗岩)
・友近(レッドベリル)
・中川家 剛(キャッツアイ)/礼二(アレキサンドライト)
・ドランクドラゴン 塚地(ヘマタイト)/鈴木(ジャスパー) 
・?("Violet Sapphire")(インカローズ)
・?(エレキ短編)(モルダバイト)

設定のみ投下済みの芸人、石(スルー可)
()内は石
・アンタッチャブル 山崎(シェルオパール)/柴田(ファイアオパール)
・三拍子 高倉(アポフィライト)
・テツandトモ テツ(トパーズ)/トモ(アクアマリン)
・東京03 飯塚(アウイナイト)/豊本(ブルータイガーアイ)/角田(ラピスラズリ)
・バナナマン 設楽(ソーダライト)/日村(スモーキークォーツ)
・ヒロシ(カンラン石)
・ラーメンズ 片桐(カオリナイト)/小林(トルコ石)

812 :808-811:04/10/12 17:26:36
長々とすみません。
こんな感じでしょうか?


813 :名無しさん :04/10/13 00:02:49
>>810
おいおい…麒麟編の書き手さんがいないぞ…。

814 :名無しさん :04/10/13 01:03:11
>>812
テンプレお疲れさーん。修正もヨロ。こうやって見ると壮観だね
あと80KBくらいか。早く落ち着きたいね。
(小声だけどもう続きが楽しみで楽しみで…)

815 :808-811:04/10/13 01:31:19
>>813
ご指摘ありがとうございます。
そして156=421 ◆SparrowTBE さんすみません・・・orz

>>810修正
現在の書き手さん  ()内は出演中の芸人、?は名前未登場芸人、「」は登場予定
本編
オデンヌ ◆RpN7JISHH. さん(ダンディ坂野、スピードワゴン、中川家、「長井秀和」、「劇団ひとり」)
"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE さん(スピードワゴン、江戸むらさき、?)
619 ◆QiI3kW9CIA さん(品川庄司)
カンニング編 ◆8Y4t9xw7Nw さん(カンニング)
672 ◆1En86u0G2k さん(エレキコミック、?)
156=421 ◆SparrowTBE さん(麒麟、いつもここから、友近)

番外編
現在執筆中 ◆n28wRDMeV2 さん(ビッキーズ、スピードワゴン、おぎやはぎ)
ピン芸人@692 ◆LlJv4hNCJI さん(長井秀和、劇団ひとり、波田陽区)

これで・・大丈夫ですかね?

816 :名無しさん :04/10/13 13:12:25
ピン芸人編は本編じゃないか?

817 :808-811:04/10/13 23:05:18
>>816
>>740
>番外編という事で好き勝手やっていますがお許しください。
と言われていたので番外編にしました・・・コレデOkスカ?


818 :名無しさん :04/10/13 23:30:35
>>817
スマソよく見てなかった…。じゃあ815でイイんじゃないか?
テンプレもイイと思うよノシ

819 :名無しさん :04/10/13 23:54:31
私もいいと思いま〜す

820 :名無しさん :04/10/14 12:55:45
皆様乙です。良いと思います〜。

821 :名無しさん :04/10/14 17:47:38
もう完璧じゃない?容量はまだ余裕あるね…

822 :名無しさん :04/10/14 18:39:30
かなりある。続き投下待ってます。

823 :"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE :04/10/15 00:09:12
>>774-780 の続き

「井戸田さん! それと・・・野村っ!?」
石を持たない人間を戦いから遠ざける為の小沢の結界。
それをぶち破って乱入してきた二人に磯山は声を張り上げ、駆け寄った。

その格好・・・シャツは破れ、腕や膝などに所々擦り傷も見られる磯山の姿に井戸田は一瞬言葉を失うけれど。
小さく微笑んで労いの意図を込めてぽふぽふと彼の砂まみれの頭を軽く叩いてやる。
「悪かったな。大変だったろ。」
「まだ・・・終わってませんよ。」
ムスッとして磯山が言い返すように、今は井戸田の張った山吹色の輝きを放つ防御壁によって
ケツァルコアトルの攻撃を防いではいるけれど。
まだ、本体を倒してはいないし、石だってまだ野放しのまま。
闘争心を失わない凛とした磯山の目に、野村は苦笑を浮かべ、井戸田は小さく肩を竦めた。

「・・・そうだよな。じゃ、とっとと蛇退治と行きますか!」
互いの相方が揃えば百人力。怖れる物などどこにもない。
四人が軽く視線を合わせ、タイミングを揃えると。井戸田がまず叫んで防御壁に意識を集中させた。
壁のように展開していた障壁が、ケツァルコアトルのノドを貫く楔形に姿を変えていく。

「真っ二つに、なりやがれぇっ!」
相手の存在を否定する山吹色の光の楔を井戸田がケツァルコアトルに打ち込むと。
毒々しい黒みを帯びた緋色の蛇の胴体が、光に焼かれ溶けていくかのようにドロドロと崩れていく。
さすがに一刀両断とまでは行かなかったが、胴体の大半をぶった斬られて、
ケツァルコアトルの全身から悲鳴に似たエネルギーの流れが周囲へ迸った。

824 :"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE :04/10/15 00:10:46
「凄ぇ! さすが潤さん!」
思わず歓声を上げる野村に、軽くウィンクなどして見せたりして。
気を失っている間に精神面での休養が取れたのか。
それとも、この状況で脳内アドレナリンが出まくっているのか。
さっきの戦いの際に精神力切れを起こし負傷した人間とは思えない、井戸田の頼もしい石さばきを
彼の背中越しに見やりながら、小沢は思わず目元を擦る。

・・・・・・こういうのを目にしちゃうと、やっぱり一人で戦うとか言えなくなっちゃうんだよな。

自分の代わりに他人が傷付くのは怖いし、辛いけれど。
誰かが居るお陰で、いつも以上の力が発揮できる事は、多々ある話で。
自分も負けていられない。その想いが小沢のアパタイトを輝かせる。

「・・・・・・・・・っ!」
インカローズとシトリンが互いに発したエネルギーが衝突し、周囲の砂を激しく巻き上げた。
仮に結界で封じていない、普通の街中で戦った場合ならばとっくに辺りの建物のガラスは
全部ぶち破られている事だろう。
アパタイトを握る手で砂が顔に直撃しないよう防ぎながら、小沢は言霊を口にした。

  「もうこんな遊び、終わりにしない?」

無我夢中で指を鳴らし、パチリと小さく音が上がって。
小沢はそこで初めて指先の痺れが取れ、元のように意のままに動くようになっていた事に気付いた。
「あ・・・・・・。」
思わず指先に目をやり、それから言霊が無事に発動したのかを見定めるように
小沢は粉塵の中心へ目を凝らす。

シトリンによる一撃でその姿を維持するのも難しいぐらいのダメージを負ったケツァルコアトルに
アパタイトの青緑の鎖が絡みついていた。

・・・封印の言霊は、発動している。

825 :"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE :04/10/15 00:11:55

「お願い、アパタイト・・・もう少しだけ、力をっ!」
「頼むぜ、シトリン・・・小沢さんを助けてやってくれ。」
二人の祈るような想いに応じてか、じわりじわりと鎖はケツァルコアトルを押さえ込もうとしていたが、
やはり所有者の意識を呑み込み、これだけにも肥大した暴走するエネルギーを
元の通りに封印するのは容易ではないらしい。
ケツァルコアトルも、鎖を引きちぎろうとその胴体を揺すって藻掻き、はいずり回る。

「・・・・・・なっ!」
これが野生の闘争本能なのだろうか。それとも最後の足掻きなのか。
砂煙の中からヌッと鎖に繋がれたケツァルコアトルのおぞましいほどの姿が覗いたかと思うと、
四人の方へ倒れ込むように襲いかかってきた。


インカローズの封印に掛かりきりになっている小沢と井戸田の石は使えない。
ならば、と野村の持つバイオレット・サファイアが磯山の持つそれと共鳴するかのように輝きを放つ。
「やっぱヘビガミサマに対抗できるのは・・・『あの御方』しかないっしょ。行くぞ、磯山!」
「ちょっ・・・・・・えぇぇっ!」

その口振りに厭な予感を覚える磯山を一旦放っておきつつ、野村は滑らかな口調で言葉を連ねだした。
「その力は偉大にして、その姿は見目麗しく、雄々しく、恐ろしく、気高く・・・
 ・・・まさに、芸能界のゴッドねぇちゃん、元祖クィーン・オブ・リズム&ブルースっ!」
どこか呪文のように響くそれは、磯山の石が持つもう一つの力、変身の能力を起動するキーワード。

「やっぱりかっ! ・・・よ、よくも見破ったなぁっ!」
厭な予感がまるっきり的中し、思わず磯山は悲鳴じみた叫び声を上げる。
それを無視するという手も彼にある事はあるが、ここで揉めている余裕などない。
渋々というよりもどこかやけっぱちになりながらも磯山はバイオレット・サファイアに想いを込め、
全身の筋力を最大限にまで強化し、跳ぶ。

826 :"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE :04/10/15 00:17:36
意思の能力が開放され、磯山の全身を包み込む紫色の輝きが、彼の肉体を変容させていく。
小柄な磯山の体躯が見る見るうちに長身のそれへと変わり、体格に見合った眩い紫色のドレスすら
その身に纏って。

「・・・・・・・・・・・・えーと。」
磯山の変身後の姿に思わず揃って地上で絶句する小沢と井戸田はさておいて。
地面に全身を叩き付けるケツァルコアトルよりも上に躍り出た磯山・・・というか『あの御方』は身を翻すと
落下エネルギーと、バイオレット・サファイアが生み出すエネルギーとをきらめく右の拳に込めた。
「神の・・・鉄槌っ!」
叩き付ける渾身の打撃に。
まさしく神の雷のような紫の輝きがケツァルコアトルのどす黒い身体を駆けめぐっていく。

『・・・・・・・・・・・・・・・!!』
翼を懸命に広げ、苦痛に悶えるように何とか天を仰ごうとしたケツァルコアトルだったが、
それがインカローズの限界だったらしい。
しばし全身を硬直させたかと思うと、風船から空気が抜けていくように、ゆっくりと縮んでいく。
相手の抵抗がなくなった事で、アパタイトの鎖もしっかりとケツァルコアトルを戒めていって。

数分も経たない内に、辺りには四人と男の姿だけが残されるまでとなった。








827 :"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE :04/10/15 00:18:49
「・・・・・・・・・・・・。」
コロリと地面に転がるインカローズと、その傍らに倒れている男。
どちらも今までの騒ぎが嘘のように静かで、ピクリともしない。
結界の外からは、何も知らずに道路を走る車のエンジン音が微かに聞こえている。

「磯、野村くん。今のが・・・これが、石に呑まれた芸人の姿。」
変身を解いた磯山とその傍らの野村に対し、小沢は穏やかな口調で告げた。
「今ならまだ、二人の石も封印して・・・明日からは何事もなかったかのように過ごす事もできるけど。」
・・・どうする?

そっと投げかけられた問いに、江戸むらさきの二人は一度顔を見合わせて、答える。
「封印する必要はねーよ。」
即答ついでに意図せずハモる二人の言葉に、小沢は肩を竦めて苦笑した。

「そういや、潤さんも封印して欲しくないってダダこねてましたよね。」
「・・・当然だろ?」
呼び掛けられて、井戸田もフッと笑う。
「それよりさ、さっさと石を回収して帰ろーぜ。緊張が解けたせいで・・・ちょっと傷が痛い。」
そんなに痛いなら、自分の石の力で怪我を否定すればいいのだけれど、
治療してくれた野村の目の前だからか、それともやはり精神力が残り少ないのか。
井戸田はその笑みに苦笑いの色を含ませて、一同に提案する。
「みんなで日村さんトコ押しかけてさ、ちゃんこ鍋作って貰お! 決めた!」

「そうだな・・・・・・でも。」
井戸田の提案に一応は同意しつつも、小沢はにわかに表情を曇らせて、呟いた。


「その前に・・・まだ、居るんでしょう? だったら、出てきてくれませんか?」
小沢の声色は低く、鋭い。
「人の腕を金縛ったお礼を、まだしていませんからね。」

828 :"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE :04/10/15 00:21:53
小沢の突然の言葉に、三人は何が起こったのかとそれぞれ口を閉ざす。
不意に沈黙が拡がる中、公園の道路に面した箇所でふわりと空気が揺らいだ。


「・・・参りましたね、気付いていたんですか。僕らの事。」

聞き覚えのある声に、一同が声の上がった箇所を向けば。そこには黒髪の長身の男がたたずんでいる。

「な・・・お前・・・何で・・・何でお前がここに居るンだよ。」
磯山の口から狼狽した声がこぼれた。
「赤岡!」


「・・・赤岡だけじゃないよ。僕だって。」

今度は長身の男・・・赤岡の居る箇所とは四人を挟んで逆の方・・・インカローズと男の方から声が上がった。
振り向くまでもない。カツゼツの悪いこの声が誰の物か、彼らに間違えようのあるはずがないのだから。
「島秀・・・・・・。」
小さく呟いて、野村は信じられないと言わんばかりに眉をしかめた。

確かに、彼らの江戸むらさきとの付き合いもスピードワゴンの付き合いが悪くなったのと同じように
一時期に比べればすっかり悪くなってしまっていたが。

829 :"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE :04/10/15 00:23:25
そう。四人を挟んで立つのは号泣の赤岡と島田。
彼らからすればしょっちゅう顔を合わせている間柄の筈なのに、今の彼らからはいつもは感じられない
強い意志と自信に満ちた気配をひしひしと感じる事ができた。
それは、彼らもまた自信の根拠となるモノ・・・石を持っている事にほかならず。
小沢は軽く眉を寄せ、目前の赤岡を睨み付けながら、問うた。

「赤岡くん。何のつもりでこんな真似を・・・まさか、君達は『黒のユニット』の芸人なのか。」
警戒しつつ発せられる小沢の言葉に、赤岡はフンと鼻で笑って応える。
「別に・・・僕らは『白』でも『黒』でもどちらでもないですよ。」
「そう、僕らはただ・・・強い石とその使い手を捜しているだけ。」
そもそも、『白』と『黒』なんて興味すらありません。
面白くなさそうにそう言い放つ赤岡の言葉を継ぐように、島田も小沢に告げた。

「ただ、僕らの邪魔をするようであれば、『白』であろうと『黒』だろうと容赦はしませんが。」

穏やかに告げる赤岡の目に宿る不穏な輝きは、
その言葉が本気で発せられている事を暗に示しているように思えて。
小沢は無意識の内にアパタイトを握り込む手に力を込めていた。

830 :"Violet Sapphire"  ◆ekt663D/rE :04/10/15 00:31:13
今回はここまで。
ダラダラ長くて申し訳ないですが、多分次かその次ぐらいで終わるかと。

ちなみに「日村さんのちゃんこ鍋」は>>283の設定より。

あと、テンプレ制作乙でした!

831 :名無しさん :04/10/15 13:04:31
>>823-830
キタワァ゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!
手が動かなくなったのも伏線でちゃんとあったんですね。かなりワクワクしながら読みました。
しかも出てきた号泣も気になる…。能力とか立場?とかも…
乙かれさんです!

832 :名無しさん :04/10/15 15:13:25
テポドンが落ちるなら正確に東京を狙ってほしいなぁ、同士討ちになるけど。
こんな糞東京人と一緒に「日本人」でくくられりゃい迷惑だよ。
NAVERで韓国人が動画や画像ファイル貼り付けるんだけど、時々表示されないことがある。
ソースを見てみるとファイル名にハングル文字。
日韓交流掲示板であることなんてお構いなし。
東京人が関西での生活で、もしくはチャットや掲示板で関東弁を使うのと似たものを感じる。
東京民国がどうなろうが知ったことではないが、売国行為で日本の他地域を
巻き込むのはやめてほしいなあ。
レンホウが当選したら、東京人はどうにかして日本人辞めろよな。独立でもいいから。
独立が無理なら、人間辞めてでも日本人辞めろ。
売国奴・レンホウが当選するって事は、東京人全てが売国奴である証だ
関東顔=チョソ顔

833 :名無しさん :04/10/15 21:00:14
>>823-830
ゴッドねぇちゃんに惚れたw

834 :726 ◆B0ZJs1mt1. :04/10/16 06:28:39
「あ、いた!おーい、柴田ー」
楽屋に戻る途中で、山崎が手を振りながら廊下を走ってくる。
「あれ、どうしたよオマエ!」
「いやね、中華まん用意したから」
なるほど、確かに彼の手には中華まんが一つある。
「はい」
山崎は中華まんを二つに割って、肉のあんが詰まったそれを相方の手に持たせる。
「それでわざわざ急いで来たってか?オレ、トイレに行ってただけなのに」
半分の肉まんを渡され不審げな顔をする柴田に、山崎はニッコリと笑顔になって。
「まだ楽屋に置いてあるんだ。冷めないうちに二人で食べたいなって」
そう言いながら背中を押して楽屋へと急がせる。
「サンキュ山崎。でもちょっと急がせすぎじゃねえ?」
内心相方の心遣いが嬉しい柴田は微笑みながら山崎に応える。

835 :726 ◆B0ZJs1mt1. :04/10/16 06:30:09
しかし楽屋の扉を開けた瞬間彼は唖然とし、数秒後に山崎が迎えに来た意味も察する。
「……山崎……」
確かにほこほこと湯気の出た中華まんが楽屋に置いてあった。──天井までびっしりと楽屋を埋め尽くして。
山崎は中華まんの大群に楽屋を追い出されたらしい。
「さ、どうぞ。全部食べてもいいよ」
「どうぞじゃねぇよ!こんなもん一人で食ったらもれなくオレの腹破裂するね!」
柴田は山崎の頭をはたいてツッコミを入れる。
他の中華まんの下敷きになっていても全く潰れず丸いままの、物理法則を無視したそれを5秒ほどじっと見て。
「一応聞いておくけど、これはどうしたの?普通一人でテイクアウトできる量じゃないよね」
頭を抱えながら尋ねる柴田に、山崎は飄々としながら応える。
「あー、小腹が空いたんだけど何もないし、でも買いにいくのちょっと面倒かなあって」
これでちょっとね、と白地に虹色の光が遊ぶ二枚貝のような形の石を柴田に見せる。
「やっぱりか!一手間を惜しむんじゃねぇ!余計面倒なことになってんだろうが!」
オレの喜びを返せと迫る柴田の勢いにたじたじとなる山崎であった。


836 :726 ◆B0ZJs1mt1. :04/10/16 06:31:45

「大体オマエ、石使ってまともに物出したためしねぇだろ」
「いやいや、今頼んだらちゃんと出てきたよ」
「どう頼んだ?」
「あんまん二人分」
「ずいぶんサービス過剰だねえ。量多いし、さっきのは肉まんだったぞ」
つっこみながらも、相方が自分の分も用意する気はあったことに嬉しさを覚えてしまう。
そのことに苦笑いを浮かべるものの、目の前の事態は表情を真剣にさせる。
「とにかく、楽屋に一杯はいらねえよ。どうにかできねえのか?」
でも今までに何度もキャンセル効かないことで苦労させられたしなとため息をつく。
「呼び出したものを返す方法ならあるよ。最近できるようになったんだ」
「何だ、じゃあそれやってくんない?山崎さん」
即答する山崎に、柴田はホッとして中華まんを戻すよう頼む。
「でもちょっと勿体なくない?」
「食いきれなくて固くなる方がよっぽど勿体ねえって」
「冷めたらもう一度レンジで」
「チンとかいいから、いい加減オレを楽屋に入れてくれ!!」
「はいはい。『あーざいますっ!』」
いいかげん柴田がキレ始めたのを見て、山崎は元気のいいお礼の挨拶──呼んだ物を戻すためのゲートを開けるキーワードを口にする。
その声に応えて手のひらの石が光り、白い輪が山崎の目の前に出現する。
そして中華まんが──ピクリとも動かない。
「…自分でもどってくれるといいんだけどねえ」
石をポケットにしまい、中華まんを両手いっぱいに抱えて輪の中に放り込み始める山崎。
「手作業!?うわ、大変だなあ」
それを見た柴田も中華まんを抱え、ゲートに入れるのを手伝い始めた。


837 :726 ◆B0ZJs1mt1. :04/10/16 06:36:12
しばし二人は黙々と片付け作業を続ける。が。
「終わらないな」
「楽屋一杯だしね」
未だ大量に残る中華まんに途方に暮れ、沈む二人。
「誰かに助けを求めないとまずいかな」
「片付けるの得意な人って、今日いたか?」
「あー、ゲートが手動じゃなかったらなあ」
「そもそもこうなったのはテメエが大量発注した…」
せいじゃないのか、と言いかけた柴田はあることに気が付き、山崎に背を向けると自分の首から下げていたものを手に取った。

柴田の胸でオレンジの光が瞬き、彼は笑って相方に向き合う。
「おう、いけるぞ山崎!出来る!」
「えっ、柴田?」
「悪い、オレ自分のこと完っ璧に忘れてたわ!ごめんね」
「柴田さん?」
先ほどまでの沈んだ様子からは考えられないほどの柴田のテンションの高さと笑顔に戸惑う山崎。
「ほら、コイツコイツ」
柴田は上機嫌で橙色に炎のような紅い光が浮かぶ石を山崎に見せた。
「……あー、そっかー!」
「そうなんだよー!」
山崎も笑顔になって柴田とはしゃぎ始める。
「じゃあ、頼むわ山崎!」
「オッケー、そっちの方もよろしく!」
満面の笑顔と共に、柴田の石が強く光り鮮やかな橙の光が相方に降り注ぐ。光を浴びた山崎の石も共鳴し、明るく強い光を放つ。
それと共に白いゲートが虹色に輝き始め、中華まんも揺れ始める。
「いっせーの、せっ」
「『あーざいまーすっっ!!』」
二人同時にキーワードを叫んだ瞬間、ゲートがひときわ強く輝いたかと思うと淡く発光した中華まんが浮き上がり、一斉にゲートに向かって飛んでいく。
楽屋を埋めていた中華まんは、またたく間に異空間の向こうへと去っていった。


838 :726 ◆B0ZJs1mt1. :04/10/16 06:37:30
最後の中華まんが帰ったのを見届け、山崎は力を解除する。
「はあー、疲れたー」
連続して石を使った反動が今来たようで、山崎はその場に座り込んだ。
「きっついなー、さすが」
こちらも力を解除し、柴田は肩で息をして壁にもたれた。テンションは通常に戻っている。
「やー、柴田が魔力アップの呪文使えて助かった」
「呪文っていうのかな、これ」
ようやく空いた楽屋に入り、二人は大量の中華まんの下になっていた自分たちの荷物を確かめ、多量の物の下敷きになっていたのが嘘のように何事もない荷物にほっとする。

「あー。お腹空いたー」
楽屋の床に倒れ込む山崎。
「結局肉まん半きれしか口にしてないよ」
「オレは当分中華まんはいいわ…あ」
柴田はふと思ったことを尋ねてみる。
「もしかして、あんまんは食べてない?」
「……あー、失敗したー」
結局食べたかったものを食べ損ねたことに気が付いて、へこんだ山崎は改めて床に潰れる。
そんな相方を見て、本当にしょうがねえなと苦笑する柴田。

そんな能力者コンビのささやかな日常の一コマ。



839 :726 ◆B0ZJs1mt1. :04/10/16 06:38:36
お目汚しではありますが、チャブ話、書いてみました。

アンタッチャブルの能力は>>249を元にしてますが、山崎さんの条件に

   石の力で呼び出したものは返さない限り消えずに留まる。
   返すための門を開くキーワードは「ありがとうございます」。
   基本的には手動で返すことになる。

を付け加えさせて下さい。

840 :名無しさん :04/10/16 10:51:37
726◆B0ZJs1mt1さん乙です!腹抱えて笑いました。手動なんだw
二人のかけあいとか柴田さんの台詞まわしが本当に言いそうですね。

841 :名無しさん :04/10/16 21:23:45
読みました!面白かったです!
「自分でもどってくれるといいんだけどねえ」
「手作業!?」   
のくだりが特にw
楽しませていただきました!ありがとうございます!

842 :名無しさん :04/10/16 22:45:27
>>834-838
面白かった!2人のやり取りが目に浮かぶようです
自分で蒔いた種なのに何故か達成感アリアリなチャブ何か良い


843 :名無しさん :04/10/17 08:40:24
726◆B0ZJs1mt1さん乙っす!面白かったです!なんかほのぼのしてて良い感じw
2人の会話が目に浮かぶようでした。自分も、手作業なのにワロタw

>自分で蒔いた種なのに何故か達成感アリアリなチャブ何か良い


844 :名無しさん :04/10/17 14:23:17
>823-830
ああ続きが!いつも楽しみにしてます。
色々新しい事が出てきて展開がスゴイ気になりますね!
何気にゴッドなねぇちゃんとか出てくるし、戸惑うスピワもw

>834−838
大笑いしました!個人的に最初のほのぼのした感じから
>「どうぞじゃねぇよ!こんなもん一人で食ったらもれなくオレの腹破裂するね!」
の流れ笑いました。あと手作業…w
チャブ良いコンビですね〜。

お疲れさまです!

845 :672 jet:04/10/18 00:25:46
>>732-735 の続きです

「いやあ、感動的だったけど意味のない助っ人だ」
笑いを噛み殺しつつの台詞は的を得ていたが、自分でわかっている失敗ほど指摘されたくはないものだ。
鬼をも殺せそうなほど睨みつけてくる谷井の視線を愉快そうに男は見下ろし、
それから腕時計を確認して、「ああ、もうあんまり時間もないし」とさらりと言った。
自由時間になってまだ1時間も経っていなかったが、早々と戻ってくる者もいるだろうし
そうなればここでの騒ぎを誰かに気付かれる可能性も増えてくる。
男はほんのすこし思案し、やがて宣言した。
「…意味ないついでにお前の使えない石ももらってやるよ、」

今にして思えば流れはそこから変わったのかもしれない。
男が当初の予定を変えて、今立ではなく谷井の石から先に奪おうとしたこと、
無力な相手に気をよくして能力を少々使いすぎていたこと、
そしてなにより、ピンチの時にこそ石はその力を発揮しやすいという原則を忘れていたこと。

「渡すかよっ!」
痛みをこらえて、伸びてきた男の手を谷井が払い除ける。
予想外の抵抗に男はさっと右手をかざしかけたが、なぜか能力は使わずにそのまま掴み合いになった。
体力を削られているために防戦一方の展開を強いられ、
リストバンドをもぎ取られまいとじたばた暴れる姿は格好の良い姿ではなかったけれど、
男がそう動いた理由を、一瞬だけまたたいた石の光の変化を、谷井は見逃していなかった。


846 :672 jet:04/10/18 00:29:04
「…今立!こいつ、疲れてる!!」
相方の鋭い叫びが彼に今成すべきことを悟らせた。
今立は渾身の力で駆け出すと、男の背中に向かって身体ごと体当たりをかける。
ぶつかった勢いで谷井までがぐえ、と潰れた声を上げたがそれに気をつかう余裕はない。
男は石を使わないのではなく使えないのだ。
それなら精神力が回復する前に意地でも石を取る!
初めて巡ってきた反撃のチャンスを逃すまいと必死で男の身体を掴み、動きを封じる。
「この…!おとなしくしてやがれっ!!」
両側に挟まれる形はさすがに不利とみたか、男が気力を振り絞り再び力を解放させようとした。
いくらか明度は衰えながらも、緑色の光は主の要求に応えて広がりはじめる。

(…これ以上好き勝手させてたまるか!絶対こいつ止める!!)
男と激しく揉み合いながら、2人が同時にそれを強く念じた瞬間。
谷井の左腕が、今立の握られたままの右手が、強く輝いた。

「なっ…!!?」
驚きの声は3人分。
桃色と霞のような白色。2つのまばゆい光が、勢いの失せた緑色のそれを圧倒する。
「ちっ!」
しかし一番最初に発動したのは男の石だった。例の衝撃波が今立に襲い掛かる。
羽交い締めようとした腕が解けて後方へ飛ばされたが、その威力は今までと比べ格段に弱まっていた。
(…ほんとに疲れてんだ、こいつ!)
一回転して素早く体勢を整え、前方を見据えようとしたものの、桃色の光の柱に目を開けていられない。
目を細めて状況をなんとか把握しようと試みる視界の中、緑の光がバチっと音を立てるように瞬いた。
相手の石は弱まったとはいえ、人を振り払える位のエネルギーをまだ残しているのだ。
ここで逃げられでもしたら…!
阻止しようと走り寄りかけた今立だったが、ポン!という間抜けな音につられて視線が上がり、
そしてその口がぽかんと開いた。
「………は?」


847 :672 jet:04/10/18 00:31:34
ピンク色の光がある程度安定し、ドーム状に展開する中。
ぴょん、ぴょん、と緑色に輝く小さなカード状のものが男の石から次々と飛び上がっては落ちていく。
落ちたカードは数枚で行進したりじゃれあったり、まるで意志を持っているかのように
好き勝手に周囲を動き回っている。
ユニークでどこか脳天気なその動きは、先程まで散々苦しめられた男の能力とはあまりにかけ離れていた。
「何だあれ…」
ちょろちょろと走り回る不思議なものたちを呆然と見つめ、今立は呟く。
光の中の2人も表情は同じで、取っ組み合ったままの姿勢で固まっていた。
「…な、なんだよ、これっ!?おいっ、やめろ!止まれ…!」
一拍置いて我にかえった男の必死の呼び掛けもむなしく、石はおかしな手品を全くやめようとしない。
男の制御をよそにまたぴょん、と陽気に跳ねたカードの軌道を追った時、谷井と目線がぴたりとかち合った。
(…よくわかんねえけど、今だ!)
そう言いたげな谷井の表情にはっとした今立は、強く頷いた。

右手の白光は静かに瞬き、自分の指示を待っている。
(あいつを大人しくさせる力…なんでもいいから、来い…!)
目を堅くつぶり、拳をぎゅっと握りしめて再び念じる。
手のひらに伝わる石の感触と、ひときわ強い輝き。

すると今立の中に突然、そのための言葉が浮かび上がってきた。まるで昔から知っていたもののように。
頭の中は泉のように澄み渡っていた。
息を吸い、神経を集中させて、依然としてカードを生み続ける男に、その4文字を、放つ。


848 :672 ◆1En86u0G2k :04/10/18 00:33:44
第一発見者に言わせるとその光景は奇妙の一言に尽きるものだったという。
廊下の端で崩れてへこんだ段ボールの山と、ひしゃげて転がる灰皿スタンド、
なぜか廊下の真ん中で深々と眠りこける某芸人と、心身ともに使い切った感の漂うエレキコミックの2人。
それが石を持った人物でなかったら、2人は事情を説明するのに相当手間取ったに違いない。

「はあ…何、じゃあ君らも石使えるようになったの?」
(今立の補足入りの)谷井の説明をあっさり信じてくれたらしい東京03・豊本は最初にそう尋ねた。
「そうね…多分…つーかどういう力なのかよくわかんないけど」
はあ、とため息をつきながら頭をかく谷井に、「俺も」と今立が肩をすくめる。
「なんか変な能力っぽいもんね、2人して」
らしいっちゃらしい、と納得して頷く豊本はこの状況を面白がっているようでもあった。
「笑いごとじゃないっての…」
「でも面白いじゃん」
ラリホーってドラクエでしょ?ありえない!
けらけら笑う声を聞きながら、当の今立も事実を信じきれない気持ちでいた。

あの時自分が咄嗟に男に向けたのは、あるRPGでお馴染みの催眠呪文だった。
相手を眠らせて無抵抗にし、戦いを有利に進められる…といってもそれはあくまでゲームの中での話。
現実世界でそんなもの使えるわけがない!と放った途端急に我に返ったのに、
指先から薄紫色のもやが男めがけて飛んでいったのはどうも目の錯覚ではなかったらしい。
もやに包まれた男は驚いた表情をこちらに向け何か言おうとしたが、
両目が急にとろんとしたかと思うと、その場にばたりと倒れこんでしまった。
カードもそれきり飛び出すのをやめ、やがて主人と同じようにパタパタと倒れて消えていく。
最後の一枚が回転しながら消えた時、2人の石の輝きもふつりとかき消えた。

「…なんだったんだ………」
疲労を封じ込めていた緊張感がなくなると、急に身体のあちこちが軋んで悲鳴をあげる。
能力を使ったせいなのか脳すらもそれ以上の活動を拒否しているようで、
こちらに近付いてくる足音を耳にしても2人はただ座りこんでいることしかできなかったのだ。


849 :672 ◆1En86u0G2k :04/10/18 00:34:42
(これが石の力か…)
谷井と豊本のやりとりをどこか遠くに聞きながら、今立は手の中の石をじっと見つめる。
こんなちっぽけな石ひとつで自分が大の大人を眠らせてしまえたと思うと
使い方次第でどんなことでもできてしまえそうな、裏打ちのない漠然とした全能感が
自分の奥底から一瞬、沸き上がってきたような気がした。
(…ああ、そうか、だからみんなこんなに騒いでるんだ)
決して安定しているとは言えない自分達の立ち位置。数年先を覗いてもなにも映らないかもしれない不安。
そんな時に未知の力をほいと渡されたなら、それに縋る者も頼る者も
それを使って人を押しのけていこうとする者も、存在して当然ではないかとすら感じられた。
だからと言って他人を傷つけることが許されるわけではないけれども、
その当たり前の感覚を壊してしまえるだけの魅力が今、多くの芸人の手の内に握られている。
(しかし、なんでまた…)
そんなおそろしい状況を誰が何の為に作ったというのだろう。

「さて、これをなんとか片付けなきゃ」
豊本の声に意識が引き戻された。今立のやや青ざめた顔には気付かない様子で、
ポケットから携帯を取り出すと数回電話をかけ、それぞれの相手にてきぱきと事情を説明している。
どうやら、この状態を修復できる能力を持った共演者たちに救援を要請しているらしかった。

「今日のライブ、いいメンツ揃ってて助かったよねえ」
うまくいきそう、とにっこり笑って携帯を閉じると、先に楽屋に戻るように2人をうながす。
眠りから一向に覚めない男をつついていた谷井が途端に不安そうな声を出した。
「え、でもこいつどうすんの」
「…石で起きた揉め事は石で解決しちゃえ、ってね」
寝てるうちに封印してもらえば、こいつも全部忘れちゃうだろうし。
こともなげに言って、まだ戸惑いを残したままのエレキコミック両名の背中をポン、と叩いた。
「はい行って行って。少しでも休んだ方がいいよ」

850 :672 ◆1En86u0G2k :04/10/18 00:36:58
惰性のように歩きながら、今立はぼんやりと考える。
自分達は力を持ってしまった。あとはもう、心の問題なのだろう。
この先また巻き込まれるかもしれないトラブルを思えば気分のいいものではなかったし、
納得していないこともわからないことも数多かったが、
とにかく(こんなちっぽけな物の為に)、同業者を傷つける側には回りたくない。

それはお笑い芸人として、一番やってはいけないことのような気もしていた。
それをぼそぼそと隣に告げると、谷井は「だな、」と短い返事で肯定する。
「そんなの面白くねえもんな」

タン、タン、と階段を下りる2人は顔こそ合わせなかったし、ひどく疲弊していたけれども。
「…なんだよ」
「…なんでもないっすよ」
「ひっどい顔してんなー、人前に出る顔じゃない…」
「!あんたにだけは言われたくない!」
若干の気恥ずかしさを抱えつつ、互いになにかを確認しながら楽屋へと戻っていった。

定刻通り無事に開催されたライブは開始直後から盛り上がり、大成功を収めた。
あるコンビの片割れが『体調不良』で急に出られなくなったことと、
アンケート用紙の多くに『エレキコミックの2人も具合いが悪そうだったが大丈夫なのか』
と心配するコメントが記されていたことを除けば、
舞台裏での慌ただしさを最後まで観客が知ることはなかった。

851 :672 ◆1En86u0G2k :04/10/18 00:44:56
谷井一郎(エレキコミック)

石……ピンクトルマリン(電気石。全てを活性化し、理解力や感受性を高める)
能力…周囲にある石の効果を本来とは違う「おバカ」な作用に変えてしまう。
  (役に立つはずの動きが逆に事態を悪化させたり、全く関係ない動きになったりする)
条件…発動のきっかけは「念じて頭を振る(髪が揺れる)」こと。
   有効範囲は自分を中心に最大で半径3メートル程度。
   極端に消耗すると反動で自分自身がコント内のキャラ並にバカになってしまう。
   敵味方の判別なく範囲内にある全ての石に作用するので注意が必要。
   ふわふわさせた激しさに変化のバカ度合いは比例する。

今立進(エレキコミック)

石……ウレクサイト(石の下にある字や絵が浮かび上がる「テレビ石」。明晰な思考や予想、適応を説く)
能力…「あるゲーム内のキャラクター」が持つ能力を自分で使うことができる。
条件…一般的な能力から離れるほど精神力を多く消費する(マリオのダッシュ<ドラクエの魔法)。
   使うエネルギーが大きいため有効時間は短め。
   相手への直接攻撃となる能力やキャラの重ねがけは使用不可能。
   自分がプレイ済みのゲームにしか適用できない。
   使った後、十分な精神エネルギーが貯まるまでの数時間〜数日は、ゲームが一切できなくなる。


というわけでエレキ話完了です。
東京03の能力案が出ていたのでちらっと豊本さんをお借りしました。
もっとはじけた話にしたかったのにうまくいかなかったり
付け慣れないトリップで大失敗したりとひどいありさまですいません。

書き手のみなさん本当におつかれさまです!
(自分で書いてみて偉大さをあらためて思い知った感じです)
これからもお話楽しみにしてます!

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