アメザリ編 [1]


219 名前:お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA   投稿日:04/11/18 03:38:44

とあるライブの帰り、駅に向かう途中。アメリカザリガニ・平井は後ろの方をつけてきている男に気がついた。
「なぁ…柳」隣を歩く相方に声を掛ける。
「わかっとる。最近多くてかなわんなぁ」声を掛けられた柳原は、面倒くさそうに欠伸をした。
気づかれないように自然に別れ、平井は近くのコンビニに入る振りをした。
柳原は男を路地裏へと誘い込み、後から来た平井が路地を塞いで挟み撃ちにした。
二人は逃げ場を失いうろたえる男と距離を置いて、どうしたものかとその様子を観察する。

「何だお前ら!!俺は何もしてないだろうが!!」
2対1では分が悪いと思ったのか、前後を囲まれて焦ったのか、男は急に一般人の振りを始めたのだった。
「やー…どうしよっか」その下手な芝居に呆れながら、平井は柳原に言った。
「どうするも何も…俺らをつけてきたってのは間違いないんやし」
名も無い若手か、スタッフか。どっちにしろ大した手練ではないだろう。
黒いユニットに無理やり使われているのが見て取れる男に、二人は哀れみさえ感じた。
「相手が悪かったなぁ。一人っきりで俺らに勝てるとは思ってへんのやろ?」
「別に命までとったりせぇへんから。隠してる石をちょっと見せてくれへんかな」
そう言いながら手を差し出した平井が一歩近付くと、男はじりじりと後ずさる。
「一体何のことだか…俺にはわかんねぇな」男は引き笑いを浮かべつつ、必死に逃げ道を探している。
「しらばっくれるのもいい加減にせぇ。俺にはちゃーんと見えとるんやで?
そのポケットの中の真っ黒い石が」男のズボンのポケットを指し、柳原が笑いを含んだ声で指摘した。
「隠し事しても無駄ってこと。折角のお芝居やったのに、残念やなぁ」つられて平井がケラケラと笑う。
「…っく…クソオォォッ!!」これ以上やっても無駄だと、自棄を起こした男が石を取り出した。
「そないな抵抗しても無駄やで」
平井は手に持っていた水の入ったペットボトルを地面に空け、小さな小瓶に入った石を翳した。
「大人できひんのやったら…仕方ないなぁ」
石が深緑に輝き、平井の手元には何とも奇妙な木の根のような物体が出現した。
「っの野郎!これでも食らいやがれぇえええっ!!」男は大声を上げながら、手にした石に力を込める。
「ダメダメ、そんなに遅かったら。簡単にやられてまうで?」

「なにっ!?」男は驚きの声をあげた。手元からは力を発動させようとしていた石が消えている。
平井の手元に出現した木の根が、目にも留まらぬ速さで男の石を奪い取ったのだ。
「ハイご苦労さん。本当はええ石なのにこんなに汚しもうて…」
平井の手元で木の根に包まれたままの石を柳原は見ていた。
男は突然のことに唖然とし、身動き一つとれないでいる。
「取り敢えず元に戻しとこか」
石の黒い光は、あっというまに平井の石の入っている小瓶の中へと吸い込まれていく。
「俺らも封印できたらええのにな」邪気の無くなった石を見て、平井がポツリと呟いた。
「石がたまる一方じゃ、場所とり過ぎてかなわんわ」
柳原は黒い欠片の邪気から開放されて呆然としている男を通り過ぎ、平井と共に路地の出口へと向かう。
「これで何個目やったかな?」平井は手元の石をポケットに突っ込んで相方に声を掛けた。
「数えるのも飽きたわ…」考えたくも無い、と柳原は首を振る。
「もう黒いユニットなんかに近づかんほうがええで〜」
去り際に、振り返った平井が手を振って男にのんびりとした口調で言った。

二人が立ち去った後、路地裏を更に横道に反れた狭い道から二人の男が姿を現す。
「やっぱ1人じゃ無理だったみたいだね」「俺達でやるしかないんだ…」

男の石を取り上げた後、路地裏から出てきた二人は無言のまま歩いていた。
駅まではもう少し掛かりそうだ。
暫くの沈黙の後、早口に柳原が話し出した。
「そういやアンジャッシュの渡部さんから、黒かどうかは分からんが悪い石の力が
あちこちから感じられるようになったから気をつけるよーにって連絡もろたわ。
白いユニットのメンバーも何人か襲われたらしいで」
またいつ襲われるか分からない緊張感を和らげる為、話している方が気が楽だったのだろう。
「物騒やなぁ」平井は普段の調子でのんびりと言う。
「まったくや。こないな石の力を悪用して一体何企んどるのかは知らんが、どーせろくな事やないやろな」
柳原は更に続けた。
「ああ」平井も同じ調子で返事を続ける。
「一つ分かっとるんは、奴等が同業の芸人にまで手をあげるようなしょーもない連中っちゅーことや」
「せやな」
「今のとこ石と無関係な人には被害無いみたいやけど、
いつ危険な石が暴走して一般の人が危険に晒されるか分からんからな。
石を持ってしまった人間として、責任がないとは今更言えんやろ」
まるで俺らヒーローみたいやな…平井がそう言い掛けたその時。

「凄い責任感だね。正義のヒーローごっこかな?」
二人の進行方向に長髪の男と、それよりも幾分か背の高い短髪の男が立ちはだかった。
「なんや、また石取られに来たんか?」道を塞がれ渋々足を止めた柳原が不機嫌そうに言う。
「どっかで見た顔やな。前見たんやけどなぁ…ダメや、思い出せん」
平井は頭に手をやり考える素振りをするが、諦めた様に首を振った。

「どうせ駆け出しの若手さんやろ?こないな事やっとる暇あるんやったら、ネタ作りでもした方がええんやない?」
「せやから全然売れんと、いつまでたってもパッとしないんやで?」
また黒いユニットの連中かと、いい加減苛ついてきた二人の声に毒が混じる。
「僕らも頑張ってるんですけどね…」
「あなた方に言われる筋合いは無いですよ」二人の男はぼそぼそと聞き取り辛い声で言った。
「あーしんど。たまにはヤナが戦ったらええんに」平井は面倒臭そうに伸びをする。
「出来るんやったらとうにやっとるわ!石が交換出来るもんなら喜んでしたるで!!」
柳原はお決まりの高音ボイスで捲くし立て、平井の石を指さした。
「その石をね、返して欲しいんですよ…」
柳原の声を遮る様に、俯いたまま沈んだ声で長髪の男が言った。
肩まで伸びた髪が両側から顔を覆っている。
「何や…そない大切な石なん?」平井が先程の男から取り上げた石をちらつかせて尋ねる。
「あなた方には関係の無いことです」答えた短髪の男の手にはナイフが握られていた。
「随分物騒なモン持ってるなぁ。悪いけど、はいそうですかと返すわけにも行かんねや」
都合よく近くに水溜りがあった為、平井はそれを利用して再び木の根を出現させた。

「へぇ…結構良い石持ってるみたいだね」何も無かったはずの空間に現れた物体を見て短髪の男が呟く。
「うん、凄そうだね。でもお前の石の方が凄いんじゃないの?」
長髪の男は、自分より背の高い短髪の男の顔を見上げるようにして言った。
「どうだろ…でもリスクが大きい分負けてない気もするかな」そう言いつつ彼は己の掌にナイフを押し付ける。
「いきなり何しとるんやアイツ!!自分で自分を傷つけよった…」突然の行動に柳原は思わず声を上げる。
ポタリポタリと短髪の足元に血溜まりが作られた。
「これが、俺の石の力…」ボソリと呟くとまだ血の溢れ出る傷口に取り出した石を押し付け、力強く握り締める。
瞬間、真紅の光がその拳から溢れ出た。
その光はあっという間に細長い形を形成し、光が退くと彼の手には細身の剣が握られていた。

「血液…操作?」柳原はその痛々しい能力を顔色一つ変えずに使う男に、少なからず恐怖を覚えた。
「痛そ…」平井はといえば、相も変わらずマイペースに思いついた感想をポツリと呟くのであった。



225 名前:お試し期間中。 ◆cLGv3nh2eA  投稿日:04/11/18 03:53:04

時間的にはオパール編の最後の話の後ということになります。

短髪の男
石…ガーネット 「血液を活性化させ、エネルギーを高める」赤
能力…血液を操り高質化して攻撃する。
    鞭状にしたり、液体のまま攻撃したり、形は術者の意志で変えられる。

条件…血液は致死量ギリギリまで出すことが出来るが、当然それを超えれば死に至る。
    術者の体重が60キロの場合6リットルが限界。
    限界に近づかなくとも使用後は貧血気味になり、輸血が必要となる場合もある。

能力についての添削もお願いします。
アメザリは白いユニットとして戦うときのバランスを考えてみました。

敵の短髪長髪コンビは現時点では伏せて置きます。
この文だけで分かったら…凄いと思います。ハイ


 [アメリカザリガニ 能力]