381 :バカルディ・151プルーフ◆yPCidWtUuM :2006/03/13(月) 21:49:48
「すいませんね、いきなりお邪魔して」
意外と礼儀正しい大柄な男は、軽く会釈をする。
襲ってくるような気づかいもないので、石を使うのもやめにした。
「お前、黒なんだな?」
三村が割に落ち着いた態度で尋ねる。
「そうです」
「俺んちに押し入ったの、お前か」
「…半分ハイで半分イイエ、ですね」
「どういう意味だよ」
「お二人の現場のスタッフに黒の奴がいましてね…」
…ああ、やっぱりな。
予想通りの展開だ、と胸の内で呟く。
ロケの時の三村の言葉、聞いてやがったんだ、畜生。
「そいつから連絡受けて俺が家の中に入れるようにお膳立てしました、実際入ったのはもっと若手の奴らです」
「…何でそんなマネしやがった?」
「俺にも守るものがあるんです、って言ったら猾いですか」
「…」
「本意じゃなかったんですよ、信じてもらえるかわかりませんけど」
相変わらず、どこかしらけた態度で話す土田の言葉からはそれでも、嘘は感じられなかった。
三村は静かに土田の言葉を聞いている。俺はその背中が小さく震えるのをじっと見ていた。
「土田」
三村の背中越しに、客人に声をかける。
土田は視線を少しだけ上げてこちらを見た。
「あの文面考えたの、お前か?」
「…すいません」
「ありゃ完璧だな、今二人で黒入る相談してたとこだ」
「…」
「入ったら石は渡さなくても構わねぇか?」
「『黒に入る』って聞いた場合はレインボークォーツだけ回収するように言われましたけどね」
「そーか、んじゃやるよ」
ポイッと投げて渡すと、慌てたように土田はそれをキャッチする。
「ちょっ…何、いきなり投げないで下さいよ」
「持ってけよ、さっさと」
「えっ?」
「さっさと行け、三村が…」
「切れる前に」、と続ける前に、三村の怒りが爆発した。
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