バカルディ・151プルーフ[13](side:三村)


90 :バカルディ・151プルーフ◆yPCidWtUuM :2006/03/13(月) 21:59:10 


電話を機に、大竹と土田を送り出す。 
どうせなら妻と娘を迎えに行ってやろうと俺も一緒に家を出た。 
ずいぶんと時間が経っていたようで、西の空がすっかり赤に染まっている。 
夕暮れの街の景色はあの襲撃の日と何も変わらなかった。 

土田は方向が違うので、大竹と俺が使うのとは別の駅へと向かい、別れる。 
相方と二人、駅への道すがら話すのはこれからのこと。 


「大竹」 
「あん?」 
「変わんねぇんだよな、結局、この先も」 
「同じだろ、ちょっと立場が違うだけでよ」 
「…そうだよな」 


…そうだ、何も変わらない。 

大竹と二人、この世界でやっていくのだから。 
立場が変わっても、大事なところだけは曲げないでいればいい。 



「まあ、襲撃がなくなんのはありがてぇな」 
「それはホント、助かるな」 
「アレだな、もういいな、虫入り琥珀」 
「そうだよ、いらねぇだろ、早く事務所返してこいよ」 
「そーするわ」 


ポケットから出した蜂蜜色の石を、大竹が夕陽に透かす。 
隣からのぞき込んだそれは、小さな羽虫を呑み込んでとろりと固まっている。 
この柔らかな光をたたえた石は、長い長い時の流れの中で、一体どれだけのものを見てきたのだろう。 

この石がなければ切り抜けられなかった闘いもたくさんあったけれど。 
もう俺たちには必要ないし、この先に続く道では邪魔になるだけだ。 

白でも黒でも、どのみち闘っていくしかないけれど。 
こっちが襲撃者になるなら、これを使うような背水の陣じみた闘い方はしなくてすむ。 
たとえそれで良心が痛んでも、もう立ち止まるつもりもない。 
ここからは俺の石と、大竹の石があれば、それで進んで行けるはず。 



「そんでアレだ、大竹」 
「何だよ」 
「もう一回売れて、俺ら、…とれるよな?」 


…何を、とは口にしなかった。 
でも多分、伝わったんじゃねぇかと思う。 


「…バーカ」 


大竹は笑いながら答えて、虫入り琥珀をもう一度しまう。 
ふざけたように言った「バーカ」の後ろに、きっと隠されている言葉。 


『とれるに決まってんだろ、“天下”』 


自分だけに聞こえる声を聞いた気がして、白っぽい駅舎を染めるオレンジ色の光の中、小さく笑った。 

395 : ◆yPCidWtUuM :2006/03/13(月) 22:16:07
以上、これでこの話自体は完結しています。
スレを一気に大量消費しまして申し訳ありません。

さまぁ〜ずが黒に属している理由を考えてみたいと思って書きました。
タイトルはまた「バカルディ」社のラム酒より。
「火気注意」の但し書きがあるほどアルコール度の高い酒です。

レインボークォーツが名前だけ出てきていますが、実際に使われていないので能力は割愛します。
この石の設定は以前と同じで、変更部分はありません。