バカルディ・151プルーフ[5](side:三村)


368 :バカルディ・151プルーフ◆yPCidWtUuM :2006/03/13(月) 21:36:43 

…床の土拭いとくかって。 

まあそりゃ拭いとくけどよ。 
嫁さん帰ってくる前に綺麗にしとかないと、警察とか呼ばれたら困るし。 
でも大竹お前、そういうんじゃないだろ? 何でそんな辛そうなツラすんだよ。 

雑巾をとりだして水に浸しながら、もう一度相方に問いかけてみる。 


「なあ、アレか、お前何かわかったとか?」 
「…」 
「おい、大竹…」 
「とにかくコレ拭き終わるまで待っとけよ」 
「…」 
「めんどくせぇけど、頭ん中まとめてっから、今」 


少し苦い笑顔で大竹は雑巾を受けとり、床を拭きだす。 
こいつがそう言うなら、俺は待つだけだ。 

黙ってフローリングに散った土を拭きとっていく。 
自分が被害者なのに、犯人の残した証拠を消しているように感じて、少し気が滅入った。 
それでも自分の家族の平穏のためには、侵入者の形跡を残しておくわけにはいかないのだ。 



守るべき大切なものを持って闘いに身を投じるのは結構辛い。 
それでもこの世界からトンズラする気がないなら、やるしかない。 
キュッと唇をひき結んで作った真剣な顔は多分、大竹には見えていないだろう。 

汚れた床をこする手に、知らず知らず力が入る。 
おろしてからそう日も経っていない雑巾はまだ白かったが、土がそれを黒く染めていった。 

玄関まで全て綺麗にして、洗った雑巾を干す。 
すえた匂いの移ってしまった手をゆすぎながら、大竹が話すのを待った。 


「なあ三村」 


俺に何かを伝えるための言葉が、大竹の口からやっと出る。 
無言で続きを促すと、予想外の言葉が耳に飛び込んできて、唖然とした。 


「…黒、入ったほうがいいかもしんねぇぞ」