376 :バカルディ・151プルーフ◆yPCidWtUuM :2006/03/13(月) 21:45:30
十字の光が入った黒い石。透明で虹色の光がちらつく石。
ポケットからとりだしてテーブルの上ではじく。
「『ブラックスターとレインボークォーツを渡せ』、ね」
居間で相方と顔を突き合わせつつ石を眺めてみる。
確かにこの2つがあれば、使い方と相性次第でそれなりに誰でも身を守れるんだろう。
まあ、俺にはレインボークォーツは使えないんだが。
…渡せ、って言われておとなしく渡すつもりはなかったんだけどよ。
ちょっと心の中で呟いてみる。でも三村にそんなことは言わない。
結構真に受けるところのある相方に、よけいな心配をさせる必要もないだろう。
要は優先順位の問題だ。今は俺のプライドより三村の家族の方が重い。
「でもあれだろ、俺らが黒に入るんならお前の石、わざわざ渡すことねぇだろ」
「まあな、ブラックスターは現状維持だろうけどよ」
「レインボークォーツは黒の上の奴に渡すとかか?」
「かもな、コレ使えたら結構強力だし、持っていきてぇだろ」
「けど使うと記憶消えるんだよなあ」
「あ、そうか、お前こないだコレ試したもんな」
「おう、お前はダメだったけどな」
「ああ、ダメだったなー…つうかアレだな、琥珀はいらねぇんだなアイツら」
「リスキーすぎんだろ、アレは…もう事務所に返してこいよマジで」
そんなふうにぽつりぽつりと会話を続けていると、玄関のチャイムが鳴る。
嫁さんか? と三村に視線で尋ねると、軽く首を傾げて出ていった。
「はい、どちらさんっすか?」
『どうも、三村さん』
「…誰だ、お前」
玄関から聞こえてきたやりとりに嫌な予感がして顔を出す。
三村が剣呑な表情で扉の向こうと会話していた。
『黒のモンです、開けて下さればわかりますよ』
その台詞を聞いて扉を開けようとした三村を見て、とっさに石を握り込む。
ぐっと手に力をこめると、無色透明の「世界」が広がって、三村ごと周囲を包んだ。
次の瞬間に玄関扉が開き、立っていた人物の姿がはっきりと目にうつる。
「どうもこんばんは、お久しぶりです」
扉の向こう、悪びれない様子で話しかけてきたのは見知った顔。
「…土田」
U-turnの土田晃之が、そこには立っていた。
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