688 :バカルディ・ゴールド (2):有吉 ◆yPCidWtUuM :2006/07/10(月) 23:28:51
「いきなり悪ぃな、邪魔しちまって」
「いえ、そんな…」
広島での仕事から新幹線で帰ってきた俺らの前に現れたのは、バカルディの三村さんだった。
事務所も違うし、ほとんど話したこともない人ではあるが、俺らにとってはかなり上の先輩だ。
芸人になる以前にテレビで見たことだってあるような相手を前に、ちょっと緊張してしまう。
…まあ、緊張したのはそれだけが理由じゃない。
プライベートで、単なる帰り道でこんな風に、先輩とはいえよく知らない人に声をかけられる。
それが何を意味するかなんて、石を持っている人間ならある程度予想のつくことだ。
しかもちょっと便利なこの石は、結構魅力的らしくて敵を呼びがちなのだった。
「それで、お話っていうのは?」
「あー…すげえめんどくせえんだけどさ、」
そう言ってぽりぽりと頭をかいた三村さんは、まるで何でもないことのようにこう続けた。
「…お前らの石をとってくるか、黒に勧誘するかしろって言われてんだよ、どっちがいい?」
傍らの森脇の、ごくりと唾をのみこむ音が聞こえた気がする。
背筋に流れる冷たい汗を感じて、俺も急激に気が引き締まった。
…そんなの、どっちもよくないに決まってる。
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