バカルディ・ゴールド[4](有吉)


692 :バカルディ・ゴールド (4):有吉 ◆yPCidWtUuM :2006/07/10(月) 23:32:02 

三村さんのことはほとんど知らない、おかげで100円使ってもこのざまだ。 
この程度の情報じゃ森脇に力を使ってもらうこともできない。 
アイツが500円を持って帰ってくるまで、せめてこの場を逃げ切らなければ。 
そう思って空を見る、ありがたいことに夜空には雲がぽかりと浮かんでいた。 


「とう!」 


勢いをつけてその場で飛び上がる、足の下には雲が滑り込んできた。 
キント雲に乗った孫悟空気分。如意棒もあれば楽なのに。 
そのまま雲を走らせ、三村さんにぶつかっていく。 


「うおっ!あっぶねえ…」 
「くそっ!」 


三村さんは器用に地面に座り込み、俺の雲の突撃を避けた。 
どうするかと一瞬迷っているうちに、三村さんの握っていた石からふわりと光が漏れる。 


「フレーッシュ!」 


その言葉とともにざわざわと木々が揺れた。 
冬の、葉を落とした枯れ木にすさまじい勢いで緑の葉がついていく。 
呆然とそれを見ていると、三村さんが叫んだ。 


「おし行けっ!」 


椿のような厚い大きな葉が巻き上がり、一本の帯のようになって襲いかかってくる。 
慌てて雲でその場を離れようとするが、葉の帯に足をとられ、ぐらりと身体が揺れた。 


「うわっ!」 


落ちる、そう思った瞬間、あたりに響いた森脇の声。 


『落ちんな、耐えろ!』 


その声で俺の身体はバランス感覚を取り戻し、真っ直ぐに雲の上に立ち直る。 
力を込めて雲を森脇のもとへと走らせれば、緑の葉の帯はざざっと下へと落ちて、枯れ葉の山になった。 


「おら、500円!」 


森脇はひょいっと硬貨を投げ、すぐに俺の後ろに飛び乗る。 
その左手には煙草の箱が握られており、どうやら煙草の自販機で札を崩したらしいと予測がついた。 



「おし!」 


500円をポケットに入れ、三村さんを見つめる。 
その手に握られた石の情報が頭に流れ込んでくると、すぐに俺は声を上げた。 


「…木の葉の化石!枯れ木に葉をつけてそれを動かして防御と攻撃をする、使えるのは3回程度!」 
「おっしゃあ、『木の葉の化石』、封印!」 


森脇が鈍く光るの鉱物をとりだし叫ぶと、三村さんの石から光が消える。 
とたんに地面に落ちていた枯れ葉の山も姿を消し、その石の気配は跡形もなくなった。 


「諦めて下さい、もうその石しばらく使えないっすから」 


そう森脇が言うと、三村さんは自分の手の中の石を見やってコン、と指先ではじいた。 
そんなことをしても意味はないのだが、石の様子を確かめているようだ。 


「へえ、ホントに使えなくなるんだな」 


これで攻め手がなくなったはずの三村さんは、なぜかちょっと笑ったように見えた。