バカルディ・ゴールド[7](三村)


705 :バカルディ・ゴールド (7):三村 ◆yPCidWtUuM :2006/07/10(月) 23:48:37 

「お、大竹っ?!」 


突然現れた相方の姿に混乱する、なんでこんなところにこいつが?! 
パニックを起こしていると、大竹は憮然とした表情で続けた。 


「せっかく来てやったっつーのに無駄足じゃねーか」 
「や、つーか、何でお前ここにいんの?」 
「土田に聞いたんだよ、ここんとこお前様子おかしかったし」 
「…」 
「まー、なーんか挙動不審でよー、わっけわかんねえ」 
「いや、その、だから…」 


しどろもどろになる俺を不満げに見て、大竹はふっと溜息を一つつく。 
しょうがねぇな、とでも言いたげな表情がこちらにむけられた。 


「お前アレだろ、何か変な気ぃ使っただろ」 
「…」 
「バーカ!バーカ!カバみてぇな顔しやがって!」 
「カバ!?」 
「コラ、お前石…!」 
「あ」 



石を持っているのを忘れて思わずツッこんでしまったせいで、ポンッと空中にカバが現れて飛んでいく。 
ただ、そのカバは疲れのせいか、本物ではなくとても小さなぬいぐるみのような姿をしていた。 
スピードもほとんどなく、弓なりに飛んでいったそのカバは、大竹の手におさまって消える。 


「…ちっちぇーの出たな」 
「…ちっちぇーの出ちゃったな」 


ミニサイズなカバを見たら、何かホントにバカみてぇだと思った。 
こんなん出るまで頑張っちまったぞ、俺。 


「ま、あれだ…次から俺も呼んどけ、じゃねえとちっちぇーの出ちゃうから」 
「おう、ちっちぇーの出ちゃうからな…」 


…そうだな、ちっちぇーの出ちゃうもんな。 
大竹いるんだから、んで大竹は闘うつってんだから、いいんだよな。 
別にいいんだ、二人で。それでいいんだ、俺らは。 
何だか本当に下らないことにこだわっていた自分に気づいて、ちょっと笑った。 
それを見ていた大竹も、何だか少し笑っているように見える。 


そんなおりに、急にガサッとむこうから聞こえてきた音にびくっと肩が動く。 
音がした方を見ると、ちょうど土田が有吉に手を貸して助け起こしているところだった。 


「土田さん、黒だったんですか…」 
「まあね」 


少しだけ身体を起こした有吉が土田を見上げながらぼそりとこぼす。 
問われた土田は、顔色一つ変えずに短く答を返した。 


「…俺は、黒でいいんすかね」 
「こっちは来てもらう方が都合いいけど」 
「黒、楽しいっすか?」 
「俺はそれなりに楽しんでるとこもあるよ、俺の石は黒の方がしっくり来るみたいだし」 
「石が?」 
「…まあ、それはおいおいな」 



有吉は土田の肩を借りてどうにか立ち上がる。 
土田は有吉を支えつつ、空いたもう一方の手を森脇に差し出した。 


「おら、お前も疲れただろ」 


森脇は土田を見上げて、少し泣きそうな顔で言う。 


「…そうっすね、疲れました」 


その言葉と、俺の手の中で光を取り戻した有吉の石が多分、この闘いの終わりの合図だった。