バトロワ風[10]


745 名前:合流バトル編 現在執筆中 ◆n28wRDMeV2   投稿日:04/10/01 23:49:23

「さて、第二回戦を始めようよ…。」
小沢と井戸田が工場内に入っていったのを確認すると
小木は須知に言った。
「ったく…出てきて欲しくない時に出てきて…嫌な奴らやな、お前らは。
 それに、その黒焦げの右腕で、焔を放つなんて、自殺行為やな。」
須知は小木を睨み付けると、そう言った。
小木の右腕は、先ほどの暴走で黒く変色していた。
先程、小沢を助けるために能力を使用したせいなのか、右腕から煙が立ち上っている。
「…何とでも言えよ、右腕なんて、お前らに勝つ為ならくれてやる。矢作…行くぞ!」
小木は矢作を呼んだ。
「任せといてよ、こっちの奴はもう止めといたから!」
矢作が近くの木の陰から現れた。
矢作の右手に、光る緑色の石…
「…!?何や…既に止められてたやと!?」
須知は動こうとするが、身動きが取れない。
「須知!」
木部が叫んだ。
「…俺はいい!木部!お前は逃げろっ!」
須知が木部に言う。
「何言って…お前を置いて俺が逃げるわけないやろ!
 俺がなんとかする、見てろ!」
木部はそう言うと何を思ったのか、飴を数個掴み矢作に向かって走り出す
「木部!!逃げろって!」
須知は叫んだ。
攻撃手段を持たない木部が、敵に飛び込むなんて、自殺行為だ…
が、木部は走りながら須知を見て「ニッ」と笑うと
「…俺は須知に助けられてばかりや…だからな。
 たまには、俺が助けたってええやん。」
と言った。
その時の木部の笑みは、何故だか少し寂しそうな笑みだった。

「覚悟せぇや…!俺にはこの飴を光らせる事は出来んけど!
 須知を助けることぐらい…出来るはずや!」
木部は矢作に向かって走り、掴みかかった。
矢作の石を奪おうとするが、矢作は必死に抵抗する。
「うあッ…!…こいつ止めなきゃ…!」
矢作は須知を止めるために使っていた力をを一回止め、木部を止めることにした。
「させるかっ!!」
すると木部は持っていた飴を矢作の右手に思い切り投げつけた。

―ピシッ。

飴は須知が投げたように光りはしないものの
矢作の右手に鋭い痛みが走った。
「痛ッ…!!」
矢作は思わず石を地面に落とした。
「今や!石を…。」
木部が石に手を伸ばした瞬間。
「矢作の石は渡さねぇぞ!」
と小木の声がした…その時

―ボウッ!

と木部の周りに、突然焔の壁が出現した。
焔が出現すると同時、木部の視界が
「…しまった…!!」
木部は顔を顰めた。
真紅の焔が、木部を取り囲み、燃え盛る。
「もうここまで…か…須知…上手く逃げろよ…。」
木部は目の前の焔を見て、言った。
焔は木部に徐々に迫っていく…。

「木部―!!!」
木部を取り囲む焔の外側で、須知は叫んだ。
「死なせない…死なせて…たまるかー!!」
須知は大量の飴を掴むと、木部を取り囲む焔目掛け、思いっきり投げようとした。

―ピキッ。

その時、須知の右手に、鋭い痛みが走った。
思わず須知は握っていた飴を地面にボタッ、と落とす
「痛ッ…何や…この痛み…でも、こんな痛みに負けてられへん!」
須知は自分にもう一度気合を入れると
飴を大量に掴み、思いっきり投げた。

―ピキッッ。

「―――――!!」
口では言い表せないような激痛に襲われ、須知は顔を顰めた。
だが、飴は放たれた。
後は…飴が直撃して焔が消えれば――。
飴は光弾となって、焔に向かって一直線に進む。
「!飴が…燃やすッ!!」
小木が飴に気付き、焔を放った。
しかし、飴は小木の放った焔を切り裂き、木部を取り囲む焔へ…。

―ビュオオオオオオッ・・・。

凄まじい風が巻き起こり、木々が揺れ、葉が舞った。
そして、燃え盛る焔は光に掻き消された。
「…須知…!」
焔から脱出した木部が、須知に駆け寄る。
「木部!無事やったか…」
須知は木部を見て、安堵した表情を浮かべる。が…

「…矢作を危険に晒した罰だ、受けろ!!」
「!!」

と小木の叫びが、木部の背後から聞こえた瞬間
「―――…ッ!!」
木部の背中に、燃え盛る焔―――。
木部は背中に焔を受け、その場に倒れこんだ。
パチパチと焔をあげて、木部の背中が燃え出す。
木部は倒れた拍子に、石を地面に落とした…。
「…木部!!」
須知の叫びが、空を裂いた。
「…須知…逃げ…。」
木部は、必死に須知に訴える、「逃げろ」と。
「逃げへん!お前置いて俺が逃げるわけないやろ!!待ってろ!今焔を消す…。」
須知は叫んだ。
そして、木部に駆け寄り、必死に火を消そうと努力しようとするが…。
「身体が…動かへん…。」
須知の身体は、ピクリとも動かなかった。
目の前に燃えて苦しむ相方がいるのに。身体が、言う事を利かないのだ。
「動かへん…動け!動けや!!」
必死にもがくが、身体は1ミリも動かなかった。
涙が、溢れてきて、須知の視界を滲ませた。

「…はい、失格―。」
「―――!!」
いつの間にか、木部の石は矢作に拾い上げられていた…。

―――ビッキーズ 木部 失格。
と、アナウンスが流れた。

「き、木部――!!」
須知の叫びは、木部に届くことはなく、木部は姿を消した。
木部の服が燃えた跡だけを残して。

「…木部…。」
須知の小さな身体が、怒りに震えた。
拳を握り締め、唇を噛み締めた。
自分は、何て弱いのだろうか。
こんな能力を持っていながら、木部を助けられなかった。
須知は、自分自身に腹が立つのと、木部に苦しい思いをさせたおぎやはぎの二人への怒り
その二つが合わさって、須知の怒りは頂点に達した。
「殺さなかっただけ、感謝しろよなー…。」
そう言って、小木は須知の目の前に立つ。
「さて、お前の石、渡してもらおうか!」
小木はそう言って右手を天に翳し、焔の塊を創る。
「お前ら…!!」
鋭い目つきで、須知は小木を睨み付け、叫んだ
「…許さへん…絶対に許して…たまるか!!」
怒りに震えた須知の身体が、徐々に動き始めた。
そして、飴を掴み、思い切り小木に投げつけた。
「!!」
その飴は小木の頬を掠めた。思わず小木は焔を消し後ずさる
「木部の恨み…晴らしたる!覚悟せぇ!」
そういうと、須知は飴を手当たり次第に掴み
四方八方に投げ始めた。
「!?おい、矢作??動きを…。」
飛び回る飴を避けながら、小木が矢作に呼びかけた。
「!石が…石の光が…もう力が持たない!」
石の光がもう消え失せている事を確認し
矢作が、小木に叫んだ。
「何だと!?…くそ…。」
工場の入り口付近で、小木は立ち止まり、須知を見た。
怒りで我を忘れていて、手が付けられない状態である。
「…このまま逃げてるだけじゃ…!―――ぐふ…ッ…。」
そう言いかけた刹那…須知の投げた飴が、小木の腹部に直撃し破裂した。
腹部に拳を叩きつけられたような衝撃を受け、小木は工場内へ吹き飛んだ。