バトロワ風[11]


110 名前:現在執筆中 ◆n28wRDMeV2   投稿日:04/11/12 02:55:04

―ドガンッ!!

小木の背中とドラム缶が激突するけたたましい音が工場内に響く。
「小木さん!?」
工場内で休んでいた小沢と井戸田が、突然吹き飛んできた小木に驚き
小木の下へ駆け寄った。
「大丈夫ですか!?しっかりして!」
小沢が仰向けに倒れている小木を起こす。
外傷は無いようだが、腹の内部に相当なダメージを負っているだろう。
その証拠に小木の口の端から、血が零れているのが見える。
「…小木!!」
矢作も工場内に入り、駆け寄る。
「…く…あの野郎…。」
小木は立ち上がると、工場の入り口を見た。

「…木部の恨み…。」
そう言いながら、須知が工場の入り口に姿を現す。
その須知の様子は、尋常ではなかった。
怒りに捕われ、我を忘れているように思える。
「お前らまとめて殺してやるわ!かかってこい!!」
須知はそう言うと、飴を再びばら撒く。
飴は光弾となって、四方八方に飛び回り、誰に当たるかわからない状況だ。
「俺は…このゲームで勝ち残る。お前らをぶっ殺してなぁ!!」
そう言った瞬間、須知の石の光が強さを増す。
先程まで手が痛み続けていたが、もう何も感じない。
在るのは、憎悪や、闘うことによって生まれた高揚感
それだけが、須知を支配していた、その感情だけが、須知を動かしていた。
「痛ッ!掠った…。」
誰かが、微かな苦痛の声を漏らした
とりあえず4人は避けてはいるが、素早い光弾は4人の手や足など掠めていた。
「須知さんを取り押さえないと…!」
小沢がそう呟くと徐々に須知に向かって近づいていく。

その小沢の行動に気付いた須知は
「お前…何時かの飴泥棒やな…そんなに飴が欲しいなら、くれてやるわ!!」
小沢を睨み付けて叫び、飴を大量に小沢に向けて投げつけた。
飴は光弾となり、小沢に襲い掛かる。
キラッ、と光る閃光が小沢の前に迫る。
「―――しまった…逃げ切れない!?」
気付いた時には、遅かった。気付いた時には、物事が今までより物凄く遅く感じられた。
スローモーションのように遅く、光の弾は工場内を照らして近づいてくる
小沢は避けようとした、だが自分の身体もスローモーションのようにしか動かない。
そして、数弾の光が、小沢を直撃した。

―ドンッ…

当たってからは、まるで物事が今までの2倍速で進んでいるような感じだった。
あっという間に身体が光弾に押され、鋭い痛みが電流の如く身体を駆け巡る
「…がはっ…」
そして、光弾は破裂した。
小沢の身体の節々から光が溢れ、風が起きる、まるで紙のように小沢は飛んだ。
吹き飛んだ身体は、空に舞い、地へと勢い良く叩きつけられた。
叩きつけられた拍子に、物凄い痛みが小沢に襲い掛かる。
「ぐ…っはっ…げほっ…ごほっ…」
腹部の損傷が一番酷いらしく、小沢は血を吐いた。
地面に真紅の血の跡を残していく。
「小沢!!」
井戸田が叫んだ。
「だい…じょぶ…」
小沢はそう呟くと、口の周りの血を、服の袖で拭った。
だが、身体は酷いダメージを受けていて、少し動かすくらいでも痛むほどだった。

あまりの痛みに、小沢は顔を顰め、蹲る。
だが、立ち上がらなければ須知に狙い撃ちされるのは眼に見えている。

そう思った小沢が痛みを堪えて立ち上がったとき。

―ピッ。ピッ。ピッ。

何かの電子音が、工場内に響いた。
「…何だこの音…。」
井戸田が、辺りを見回した。
辺りにはそんな電子音を発する物は何も無い。
在るとすれば―――首輪。
そう思った井戸田は、急いで自分の首輪が鳴っているのか確認するが
どうやら自分の物では無いらしい。
それに、須知でも、小木でも、矢作の物でも無かった。
「…まさか…。」
井戸田は恐る恐る小沢を見る。
「…お…れ…の首…わ?」
小沢が自分の首輪を掴み、途切れ途切れにそう言った。
小沢の首には、紅い光が点滅する首輪…