バトロワ風[6]


415 名前:現在執筆中 ◆n28wRDMeV2   投稿日:04/08/20 01:35

「…往生際が悪いなぁ〜。そんな鉄パイプが何の役にたつって言うんだい?
 大人しく、降伏しなよ。」
斎藤は、銃口を井戸田に向けて笑みを浮かべて言う。
正に絶体絶命。
井戸田は銃を突きつけられて何も出来ない、小沢は満身創痍。
「ゲホッ…。」
小沢は咳き込むと、少量の血を吐いた。
意識が、段々と薄れていく感じがする。
背中から流れる血、腕から流れる血は止まらない。
どんどんどんどん流れ出て、床を濡らしていく。
着ている服の右腕部分は既に、血で真っ赤だ。

『…あぁ、俺は、ここで死ぬのか―――?』

どんどん視界はぼやけて、薄暗くなっていく
小沢は、死を覚悟した、己の非力さを呪いながら。

『こんな汚い奴らに、負けるのか…?』

こんな奴らに、負けたくない。
そんな思いとは裏腹に、小沢の意識は薄れていく。
身体に力が入らない。どんどん視界は闇に包まれていく
小沢が、意識が途切れる寸前に抱いた感情は

―憎い・辛い・死にたくない・苦しい

等、様々な負の感情が入り混じっていた。
こんな気持ちを抱いても、どうすることも出来ないのは知っていたけれど
薄れていく意識の中、負の感情が増していくのを、小沢は感じた。
だが、自分の視界は既に闇に堕ちた。後は、眼を閉じるだけ…。

小沢は眼を閉じようとした。
しかしその行動は、淡い蒼い光に遮られた。

目の前に蒼い光を放つ「何か」が小沢に語りかけてくる。

―負ノ感情ハ我ガ糧トナリ、貴様ハ我ガ器トナル。
―貴様ガ望ム「チカラ」ヲ与エヨウ。

「…力?」

―ソウダ。破壊スル「チカラ」ダ。
―貴様ヲ傷付ケ、相方ヲ傷付ケタ、アノ二人ガ憎イダロウ?

「…」

―憎メバ、憎ムホドニ、憎シミガ深ケレバ深イホドニ「チカラ」ハ増ス。
――サァ、我ニ身ヲ任セルガイイ…貴様ニ素晴シイ「チカラ」ヲ与エテヤロウ。

その声を聞いた直後、小沢の身体に異変が起きた。
「!?…く…苦しい…ッ…身体が…熱…ッ!」
突然息苦しくなり、身体は熱を帯び、身体の自由が利かなくなる。

―…安心シロ、スグニ楽ニナルサ……

そして、小沢の意識は闇に沈んだ。

「…あれ?お兄さん、コイツ死んじゃった?」
斎藤がしゃがんで小沢の顔を覗き込む。
小沢は眼を閉じたまま、ピクリともしない。
「あれ、死んじゃった?」
竹内もしゃがみ込み、小沢の顔を覗き込む。
小沢の眼は堅く閉じられ、息もしていない。
竹内は立ち上がると
「…あ〜、こりゃぁ死んだな、ちょっとやりすぎたか〜。」
と竹内は少しも悪びれない様子で言う。
「……嘘だろ…?…小沢…。」
井戸田はその場に力無く、へたり込んだ。
目の前で、相方が死んだ、信じられない、でも現実。

「…ま、殺しちゃったもんはしょうがないかぁ〜…さ、石でも貰うかな。」
竹内は呑気にそう言うと、小沢の固く握り閉ざされた左手を抉じ開け、石を見た。
「さて、一人脱落、と。」
石を取ろうと手を伸ばし小沢の石に触れた瞬間。

小沢の持つ石が眩い程の蒼い光を放ち始めた。
「…!何!?まさか…石が発動する!?」
竹内は手を引っ込め、後ずさった。
小沢の持つ石は光を増していく。
「おい!早くコイツをもう一回撃て!じゃないと石が!!」
斎藤は叫んだ。
「…何!?何これっ!!」
井戸田はへたり込んだまま、叫んだ。
小沢が死んだと思ったら、いきなりあの石が光り始めて…。
何が何だか、わからなくなっていた。
「くっ、銃をっ…!」
竹内は未だ倒れている小沢の頭に照準を合わせて、引き金を引いた。
銃声が空虚な空間に鳴り響く。
「…何…!?いないっ…?」
竹内は驚愕とした。

倒れていたはずの小沢の姿は、其処にはなかった。
銃声を合図にするかのように、血の痕を残して、一瞬で消え去ってしまった。
「…何処に消えた…出て来い!!小沢あぁっぁ!!」
狂ったように叫びながら竹内は銃を打ち鳴らす。
斎藤も、警戒しながら辺りを見回す。

「…お前らだけは、絶対許さねぇよ。」

不意に、声が響いた。
そして、銃を打ち鳴らす竹内の目の前に突如小沢が現れ、竹内の腹部を強く殴りつけた。
「…お前っ!!ぐああぁっ!!!」
ドンッ、と鈍い音がしたと同時、竹内の身体が宙に舞った。
まるで浮いたかのように。
宙に舞った身体はどしゃっ、と地に擦れる様な音を立てて、落ちた。
「…ふん。」
小沢は口元を歪ませて、笑みを浮かべた。

「小沢……?」
井戸田は小沢を呼ぶ。
だが、小沢は何の反応も示さない。
小沢の腕と背中からはまだ、血が溢れ出ていて、地面にポタリ、と痕を残している。
だが、小沢は苦痛も感じないのか、無表情の顔をしている。
「お前…畜生…殺してやる!!」
竹内は立ち上がり体制を整えると、小沢に再び銃口を向ける。
「お前ら、二人とも殺す…。」
小沢はそう呟いた。小沢の握っている石は蒼い光を増す
「ほざくな!死ねぇぇぇぇっ!!!」
竹内は再び引き金を引く。
銃声が鳴る、だが、小沢素早くかわすと竹内の目の前に移動し
少し高く飛び、竹内の顔面に、回し蹴りを喰らわせた。

「がぁぁぁっ…!!」
竹内は銃を落とし、倒れこんだ。
小沢は倒れた竹内の髪を掴み、無理矢理立たせると、ドラム缶目掛けて投げ飛ばした。
―ドカンッ!とドラム缶と竹内が衝突するけたたましい音が響く。
ドラム缶が数個吹っ飛んだ、それを呆然として見つめる斎藤。
「…ヤバイな…ここは俺だけでも逃げるか。」
小沢と竹内の持つ能力の違いを目の当たりし、小沢の圧倒的な強さに驚いた
斎藤は、自分だけでも逃げようと、工場の入り口に向かった。が

「何処行くんだよ、逃がさねぇよ?」
「――な…!!」

声が響くと同時、斎藤の目の前に小沢が現れ
小沢は斎藤の腹部に蹴りを喰らわせる。
「がはっ・・・・・・!!」
斎藤は血を吐いて吹き飛び、竹内のいるドラム缶の塊の中に突っ込んだ
ガシャン!とけたたましい音をたてて、ドラム缶が再び吹き飛ぶ。
「…弱いよな、お前ら。」
小沢はクスリと、冷酷な笑みを浮かべて笑う。
「お前の能力…!!ば…化け物みたいだ…全ての身体能力が尋常じゃない!」
斎藤は、叫んだ。
「さて、じゃあ殺しますか・・・」
そう言いながら二人に小沢は近づいていく。
「…っと…小沢!!」
幾らなんでもやりすぎだ、と井戸田は立ち上がって小沢を止めようと、小沢の前に立つ
だが、小沢は冷たい眼で井戸田を見ると
「…邪魔するの?邪魔すんなら、お前も殺すよ?」

小沢はそう井戸田に言い放った。
「!ど、どうしたんだよ!お前…!」
井戸田は叫んだ。が、その声は小沢には届かない。
―これはいつもの小沢じゃない。
井戸田は、そう確信した。
「…どけよ、まだ決着ついてねぇんだよ。」
小沢は井戸田を突き飛ばすと、二人の方に歩いていく。
ドラム缶に埋もれた二人は余りの恐怖に眼を見開いてしまっている

「…い…石は渡すっ!!だから、殺さないでくれ、な、な?ほら、お前も出せっ。」
竹内は斎藤に呼びかける。
竹内と斎藤はポケットの中から石を取り出すと小沢の目の前に差し出す。
小沢は、竹内の持っている石を見て。
「…石も欲しいけど…お前等の命も、欲しいんだよ。…俺、欲張りだからさ。」
そう言って、小沢は再び冷たい笑みを顔に宿すと
竹内と斎藤の手のひらにある石をパンッ、と払いのけた。
―カランッ、と音をたてて石は地に落ちた。

「…ひぃっ…!!お願いだ!助けてくれっ!!」
竹内の叫びが、工場内にこだまする。
「さ、お前らの命、いただきますか。まずはそこのお前からだなぁ。」
小沢は指をパチン。と鳴らして、竹内を指差す。
「お、俺か!?やめろっ…やめてくれっ!!」
竹内は必死に立ち上がり、逃げようとするが身体が言う事を聞かない。
小沢はゆっくりと、近くに落ちていた鉄パイプを拾った。
あの硬い鉄パイプで、今の小沢に殴られたら即死だろう。
小沢は鉄パイプを握り締めると、竹内に近付く。
「痛くすると可愛そうだからさ〜…一撃であの世に送ってやるよ。」
小沢は相変わらず笑みを浮かべている。

井戸田はそんな光景をただ、呆然として見ていた。
「…どうしよう、このままじゃ…このままじゃ、小沢が…!」
井戸田はどうしたらいいのかわからなくなっていた
暴走する相方、止められない自分。
「何か、何か方法は…。」
井戸田はあたりを見回した。
すると、井戸田から少し離れた所に黒い石と透き通った紅い石があった。
さっき、小沢が払いのけた、やっくんとお兄さんの石だ。
「…石…?…そうだ。あのルール!」
井戸田はゲーム開始前の浜田の言葉を思い出した

―所持者が他の芸人に石を奪われるか、戦闘不能・死亡で失格。
―石を取られた場合、スタート地点…教室に転送。

そう、浜田は言っていた。
なら、小沢があの二人を殺す前に石を取れば―――!!
そう思った井戸田はすぐさま石に向かって駆け出し、石二つともを拾い上げた。
その直後
「地獄に堕ちろぉっ!!!」
と言う小沢の叫びが聞こえた。
振り下ろされる鉄パイプ。
そして、アナウンスが響き渡る。

―あばれヌンチャク 斎藤 竹内 失格。 失格ゾーンに転送します。

小沢の振り下ろした鉄パイプに当たる寸前
竹内と斎藤の身体は姿を消した。
鉄パイプがドラム缶にグシャッ、とめり込む音が空しく響いた。
「……よ、良かった…。」
井戸田はほっと、胸を撫で下ろした
どうやら竹内と斎藤は転送され、無事らしい。
なんとか小沢は人殺しをせずに済んだ、が
小沢の暴走は終わらない。

「…何故…何故、邪魔をしたっ!!」
小沢は鉄パイプを振り下ろした体制のまま、叫んだ。
「まだ…まだそんな事言うのかよ!いい加減、眼を覚ませ!」
井戸田は小沢に叫んだ。
「…じゃあお前の命だけでも…!!」
小沢は井戸田の方を向くと、井戸田にゆっくりと近づく。
「な…?…俺を殺すのか!?」
井戸田は後ずさる、小沢は井戸田に徐々に近づく。
「お前は俺の邪魔をした、だから死ぬ。それだけのこと…。」
そう言いながら、小沢は井戸田の前に立つ。鈍い光を放つ鉄パイプを持ち
自分の邪魔をした『邪魔者』に、止めを刺すために。

そして、小沢は何も言わずに鉄パイプを振り上げる。
井戸田は逃げようとしたが、身体が、言う事を利かなかった。
何故だか、逃げてはいけないような気がしていた
井戸田は、小さな声で呟いた
「どうして…どうしてなんだよ…こんなの…あたし認めないよ…。」
井戸田の眼から、一粒の涙――。
すると、井戸田の石が眩い程の金色の光を放ち始めた。
「!!…俺の…石が…?」
光は徐々に強さを増し、眼も開けない程、光を放つ。
「…!!…コイツ…こんな力が!?ぐ…限界だ…このままじゃ…この身体が…!!」
小沢は持っていた鉄パイプを落とし、苦しみ始めた。

そして井戸田の石は一際煌く金色の光を放って、そして、消えた。
「…何だったんだ…?」
井戸田は眼を開けると、石を見た。
石は金色では無く、ただの石に戻っている。
「…何が起こった…?って…小沢!?」
井戸田は驚いた。
小沢が足元に倒れていたからである。
小沢の手には、あの蒼い光を放っていた石が握られていた。その石は、既に光を失っていた。
「小沢!大丈夫か!?」
井戸田は小沢を抱き起こした、意識は無いが、なんとか息はあるようだ。
「…なんとか生きてる…良かった…。」
井戸田はほっと胸を撫で下ろすと
小沢と自分の傷の応急処置を始めることにした。

「…この石、どうなってるんだ?この石が光ってからの、小沢の変わりよう、あの力…この石は…一体?」
疑問は深まるばかりだった。

あばれヌンチャク 斎藤 竹内 失格。
残り6人



415 名前:現在執筆中 ◆n28wRDMeV2   投稿日:04/08/20 02:13

スピードワゴン 能力


井戸田 潤

石・・・トパーズ
能力・・・あたし認めない!のセリフを使用時、井戸田の周り一帯の中にいる
     芸人の力を全て一定時間封じることが可能。
     応用として、あたし○○(芸人の名前)認めない!というと
     その特定した芸人の力を一定時間封じ込める事が出来る。
条件・・・特定する場合は、封じ込められる時間は長いが
     多数の芸人の力を封じる場合、時間が極端に短くなる
     力もかなり使うため、あまり多用は出来ない。

小沢 一敬

石・・・ダークブルームーン
能力・・・負の感情を呼び覚ます事により自分の全ての身体能力を
     大幅に上げることが出来る。
     負の感情が強ければ強いほど能力は上昇し
     人間離れした身体能力が宿ることもある。
条件・・・「負」の感情を呼び覚ます事により
     石に封印されていた本来の「悪」の力が目覚め
     石の強大な力に逆らえず、石の「悪」の意志に振り回される。
     石に操られているため、操られている間は
     痛みを全く感じないが、その状態が解除されると
     今までに受けたダメージが自分に降りかかる。
     尚、自分の本来の身体能力の何倍もの力を出すため
     骨や筋肉に相当な負担がかかる。