バトロワ風[7]


442 名前:現在執筆中 ◆n28wRDMeV2   投稿日:04/08/30 01:17

見渡す限り緑が続く草原の中、歩く男が二人。
「……俺の石は何時までたっても光らへんなぁ…。」
そう言いながら、須知は歩いていた足を止め、言った。
ビッキーズの二人は草原から森へと、移動する途中だった。
「…そんなん言われても、俺光らせ方わからへんし。」
木部も立ち止まり、須知の石を覗き込む。
「光れや〜この石〜。」
須知は石を見つめたまま言った。
「…それはおいといてな、須知。何でお前法被着とんねん。必要ないやろ?」
木部は先程から抱いていた疑問を須知にぶつける。
須知は草原から、森に移動する時から今までずっと、あのハズレ武器の
自分の法被を着たままでいる。
「ええやん、別に。何か武器に入ってたし、必要かな?って思って。」
須知はポケットに石を仕舞い込むと言った。
「それにしても疲れたな〜、もうダメや…。」
須知はその場に座り込んでしまった。
木部ははぁ、とため息を吐く。
須知はさっきからしょっちゅう疲れた、疲れた。と言っていて木部はうんざりしていた。
「…お前なぁ……さっきから疲れた、疲れたて。全然前に進まないやんか!」
木部は須知に向かっていった。
須知は木部を見上げると。
「何だかさっきから身体が妙にだるいねん…熱があるわけちゃうし…
 何か、腹も減ったしなぁ…。食べるもの無い?」
須知の能天気な一言に木部の堪忍袋の尾が切れた。
「…お前…!じゃあこれでも喰え!!」
木部はそう言うと、バッグの中から大量の「飴ちゃん」を取り出し
須知の口に押し込んだ。
「あぐっ!!…なひすんへん!(何すんねん!)」
須知は大量の飴ちゃんを口に含んだまま叫んだ。
「どや!「木部特製飴ちゃん」の味は!」
木部は自慢げにバッグの中にある大量の飴を須知の目の前に出す。
須知は思わず、含んでいた飴を近くの草むらに吐き出した。
「何で吐くねん!味は飴ちゃんとかわらんやろ!?」
木部が不満そうに叫んだ。
「変わらへんけど…気持ち悪いやん…。」
須知は木部を見上げていった。
「…気持ち悪いて…失礼な。」
木部はため息をついて言った。
「…あ〜…まだ飴ちゃん口の中に一粒残ってる…。」
須知は顔を顰めた。
「それくらい喰え!バッグの中こんないっぱいに飴ちゃんあったら重くてかなわんわ!」
木部に言われ、須知は飴ちゃんを急いで噛み砕き、飲み込んだ。
「うぇ…。」
須知はまた吐きそう、と言う素振りを見せる。
「…もっかい喰わせたろか?」
木部は静かに、そして重く須知に言った。
須知はブンブンと、思いっきり首を大きく振った。
「ほら、飴ちゃん食ったんやから、もう行くぞ。」
と木部が須知に立ち上がるように促す。
「しゃあないなー…って…ん?」
須知は突然奇妙な声をあげた。
「…?どうした?」
その須知の声に疑問を抱いた木部が問いかける。
「いや、何か急に身体が軽くなったような気がする。」
須知は立ち上がり、木部を見て言った。
「休んだからか?」
「…いや、座ってる時も凄くだるかったんやけど…この飴舐めたら、治った。」
須知が木部に向かって言う。
「まさか…この飴ちゃん効果?」
木部はそう言ってバッグの中から数個飴ちゃんを取り出すと、口に放り込んだ。
飴を噛み砕いて飲み込むと、身体がふわりと軽くなり
先ほどまで歩いていて感じていただるさも無くなっていた。
「…うわ…凄い、身体が軽いし、だるさも無くなってる…。」
木部は驚いた。
まさか、自分の作った飴に、こんな効果があったとは…と。
「まぁ、これで体力も回復したから、そろそろ行くか!」
木部は須知を見て、言った。
「そうやな…何時敵に狙われるかわからへんし…行こか。」
須知は立ち上がり、バッグを担いで歩き出した。
「あ…須知、待て…って…あれっ!?」
木部は突然、素っ頓狂な声を上げた。
「どうしたん?」
異変に気付いた須知は、歩くのを止めて、木部に駆け寄る。
木部は少し困ったような顔をして
「…足が、動かへんねんけど…。」
と言った。
「…はぁ!?お前何いっとんねん。大丈夫か?」
須知は木部の肩を掴んでガクガクと揺らした。
「大丈夫じゃ…無いかも、何か、足が凄く重い…まるで地面に縫い付けられたように…。」
木部は困ったような笑いを浮かべて言う。
「あ…足だけじゃない、身体が、動かないんや!!」
木部は叫んだ。
「身体が動かない!?…どういうことや…!!」
須知は何とか木部を動かそうと手を引っ張るが、木部はびくともしない。

「…動かないのは当然だよ。」

声が、草原内に響き渡った。
「…!誰や…!!木部を動けんようにしたのは!!」
須知は辺りを見回す。
すると、近くの木陰から、小木と矢作が姿を現した。
「おぎやはぎ…?!」
須知は身構える。
「お前らが、こいつを止めてるんか!?」
木部の肩を叩きながら須知が叫ぶ。
「…そうだよ。この「石」の力でね。」
矢作が石を取り出して言う。
矢作の石は、美しい緑色の光を放っている。
「…!俺と同じ、石が光ってる…!」
木部は驚き、眼を見開いた。
「俺の石は光らへんのに…。」
須知は石を取り出してみるが、何の反応も無い。
「くそっ!お前たち、何が目的なんや!!」
木部が叫んだ。
「動けるようになりたかったらその石を渡してよ。渡さないと―――――。」
そう言った小木の手から、焔の塊が姿を現した。小木は手に真紅に光る石を持っている。
そして小木は何も言わず、須知と木部の周りに焔を放つ。
すると、草原の草が、勢いよく燃え始めてた。
焔は瞬く間に木部と須知を囲み、追い詰める。
「ここで、燃えて、焼け死ぬよ?」
小木は冷笑を浮かべて言った。

「…う…どうする!?須知!」
木部は須知に問いかける。
「俺だけ逃げるっちゅーのも、アカンやろ…!」
須知は燃え盛る焔を見たまま言う。
暫くビッキーズの二人は意見を交わすが結論には辿り着けない。
渡すか、渡さないか。その議論が、延々と繰り返される
「…どうするの〜?渡すの?渡さないの??」
小木は残酷にも、選択を迫る。
「…くぅ…」
二人は黙り込んでしまった
そのまま、時だけが静かに流れる…。
「…あー!!ハッキリしろよ!もういい!!時間切れだ!!」
痺れを切らした小木は右手を焔に向けて出すと、右手を握った。
すると焔はビッキーズの二人目掛けて容赦なく襲い掛かる。
「うあぁぁぁあ!!時間切れってなんやねん!!!!」
二人の絶叫がこだまする中、焔はあっという間に二人を包んだ…。
「…ったく…あんまり殺したくないんだけど…。」
ビッキーズの二人を包み込み、燃え盛る焔を見ながら小木はふぅ、とため息を吐いた。
ふと、矢作を見ると、矢作は草むらに倒れこんでいた。
矢作の石も、光を失っていた。
「――!!?おい!矢作!大丈夫か!?」
すぐさま小木は矢作の下に駆け寄り、矢作を抱き起こした。
「何とか…でも、もう止められそうに無いや…ゴメン、役立たずで…。」
矢作は小木に申し訳なさそうに言った。
「…いや!お前はよくやったよ…。だから、ちょっと休んでろ。」
小木はそう言って、矢作を近くの岩に座らせると
燃え盛る焔を見た。あの二人の声は、もう聞こえない。
「…これで二人は燃えただろう…。」
小木はそう思って、焔を消そうとしたが、何かの気配を感じて、消すのをやめた。
「…!?何だ、あの光は??」
小木が燃え盛る焔の中を眼を凝らして見ると、何やら水色の光が見えた。
「…まさか!?あの石が…?」
小木は不安を感じて、右手を焔に向けて、焔を強めた。
焔は一層強く燃え上がり始める…。