衝撃Drop [5]


191 :衝撃Drop5話 ◆ozOtJW9BFA :2005/09/10(土) 22:15:11 

人間には悪夢の前兆を察する第六感というものが存在するのかもしれない。 

約束の居酒屋にはいると、上田が奥の座敷にいた。 
「来てくれなかったらどうしようかと思ったよ。」 
上田はそう言って酒入ったコップを飲み干した。 
テーブルの上には酒のつまみが置いてある。 
板倉は上田の前の席に座った。 
「…なんの冗談なんですか。上田さん。」 
「なんのって俺が冗談であんな事やるわけないだろ。」 
そう言うと枝豆を口に入れた。 
「理由があるんだよ。今日はその理由を喋るためにお前を呼んだんだ。」 
「…理由?」 
テーブルの上に紙を置いた。 
そこには週刊誌のとある一ページが印刷されていた。 

『くりぃむ有田 重傷!真夜中に何が…?』 

「…これは……この間の…。」 
「そうだよ。…この事件をやった犯人は俺だ…」 
「…え?」 
意外な言葉に板倉は固まった。 

「騙されたんだ…奴らに…」 
上田はゆっくりと口を開いた。 
「俺はあの時…何も知らなかった。だから相方を傷つけたんだ。」 
上田の持ってたグラスの中に入ってた酒の綺麗な泡の粒が上へ上へと舞い上がっていく。 
いつものテレビとかで見るおふざけの怒りではなかった。 
自分に対しての怒り、そしてあの男への怒り。 
そこから思わず出た言葉から静かだが確かなその苛つきが板倉にも伝わった。 


血が後頭部から流れるところをこんなに間近で見たのは初めてだった。 
演技ではない。自分は確かに今震えている。 
自分が罪人になってしまったという恐怖もあった。 
自分たちが積み上げてきたものが一片に崩れてしまったという悲しみもあった。 
自分の子供や妻にこれからどんな顔で会えばいいのかという困惑もあった。 

でもそれを上回る相方を裏切ったという自分への憎しみがあった。 

違う…裏切ったのはこいつだろ!? 

上田は頭の中で必死にバラバラになった思考を整理しようとした。 
しかし目の前にいる相方の姿を見れば見るほどバラバラになっていく。 

違う…お前が…! 

「お前が…裏切ったんじゃねぇのかよ!」 
上田は必死で叫んだ。 
有田は意識もうろうとしながら上田を見てた。 

「上…田……」 
こんな大怪我を負ってるはずなのに、左手はゆっくりと上田の腕首を掴んだ。 
「俺は…あんな事………」 
有田の目は上田に訴えていた。 
「やって……いねぇ!!」 
左手にこんなに力を入れてるはずなのに上田の手はびくともしなかった。 
それがまた悔しさ、悲しみを増やさせた。 
「俺だって……でも…!」 

窓に大粒の雨がぶつかっていく。 
まるでドラマのワンシーンのようだ。 
でもこれは確かにリアルだという事が分かった。 
その手の暖かさを確かに感じたからだ…。 

To Be Continued.