―運命―


634 名前:鹿島田  投稿日:05/02/05 14:04:01 

ひゅ…、ぱし。ひゅ…、ぱし。先程白の名も知らぬ若手から奪った石を弄ぶ。
「楽勝やったな。」修士がそういうと小堀は俯き、そやな…と悲しそうに答えた。
「…どないしたん?今日はそんなに石、つかっとらへんやろ?」「川島君のこと、思い出してん。」
川島明。田村も勿論強かったが、川島にはもっと、強い意志が感じられた。
「んで?川島が、どないしたん?」「お前に似てる思て。」「何?男前な所が?」
修士が冗談っぽく言うと小堀はちゃうよ、と苦笑しつつ言った。
「優しすぎる所やな。あん時、俺がドジんなきゃお前は今頃きっと【白】の人間やったのに。」
「…阿呆、いらん事いうな。」修士は軽く小堀の頭を叩いた。




麒麟の二人が石を拾う、一週間ほど前。修士と小堀は既に力に目覚めていた。
彼らは襲ってきた悪意のこもった石――つまり、黒の石を封印したりしていた。
丁度その日も、石を封印した帰りであった。
「…やぁ、小堀君、修士君。」「設楽さんやないですか。」小堀が言う。
「あのね、ちょっと用があるんだけど。」「…何ですか?」
「【黒】に、入らない?」小堀、修士には設楽の言っている意味が理解できなかった。
「はっ!?嫌にきまっとるでしょう!」修士に続き、小堀も言った。「断固拒否。」
   「…僕、頭の良い人が好きなんだ。だから、ね?」 にっこりと設楽は微笑む。
    「自分の運命を受け入れようとしない馬鹿は、嫌いなんだ。」
ぞくっ。嫌な汗が、流れた。
「もう一度、聞くよ?仲間になる気はない?」


「ある訳、ないでしょう。」「断固拒否、っちゅー文字の意味辞書で引いたらどうです?」
「…そう。でも、僕らは君たちが欲しいからね。力ずくで、なってもらおうかな?」また設楽は微笑んだ。
「上等やっちゅーねん。」小堀、設楽が構えると同時に設楽は姿を消した。
ズン。小堀に、強大なプレッシャーとは違う、威圧感のある言葉が圧し掛かる。
『君らは、弱い。そのまま攻撃すれば必ず君らは力を失う。そのまま、じっとしてなよ?』
ガクン。小堀はその場に座り込むしかなかった。「小、堀?」修士が呟いた。
設楽はポケットからダイヴァーズナイフと黒い欠片を二つ取り出し、1つを小堀に飲ませる。
そしてナイフを小堀の首元辺りにやった。
「さぁ、どうする?」修士に選ばれた道は、1つだけだった。

「…ほんま、ゴメンな。」「せやから、気にすんなて!俺とお前はコンビやろ。運命共同体っちゅーやつやろ。」
「…さんきゅ、な。」
この運命から、逃れることは出来ないのだろうか。

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