ジンジャーエール


97 名前:“遅れてきた青年/ジンジャーエール” ◆y7ccA.UenY  投稿日:05/02/23 20:44:10 

-暑い
久々に晴れて外は小春日和といった感じなのにTV局の中は暖房が効きまくっていた。
厚手のパーカーを着ているせいか余計に暑い。
高橋は自動販売機を探して歩いていた。
廊下から奥まった所にある休憩コーナーのような所でやっと自販機を見つけて
缶ジュースを一本買う。
静かな廊下にやけに大きく缶の音が響く。
ベンチに座って飲もうとテーブルの上にジュースを置くと自分の背後にあるドアから
声が漏れてきた。
「…がまた石を探せって…」
ドアの方を向くと細く隙間が開いていた。
高橋は、ドアの方に行き覗き込もうとしたが隙間が細くて中は見えない。
声からすると若い男のようだ。
「石」とはあの石の事だろうか、高橋はとりあえずドアの横に立って聞き耳を立てる。


「下の事も考えろっつーんだよ」
「見た目とかは?持ち主とかはいんの?」
「全然わかんないって、力だけはわかってるらしいけど」
廊下が静かなせいか妙にはっきりと声が聞こえる気がする。
「そんなの見つかる訳無いじゃん。でもどんな力なの」
「なんか、死んだ人間と話ができるとか、生き返らせることができるとか」
「本当かよ?確かにすごい力だけどそんな力どうすんだよ?」
「上が…輩を…」
高橋はドアから離れて携帯を取り出し時間を確認した。
もう収録の時間が迫っていた。
にわかには信じがたい話だが、最近自分の身の回りで起きている出来事を考えれば
非現実的だと一言で片付けられない気がした。
「上」という言い方をしていた事から考えると、白側ではなく黒ユニットと呼ばれる側の
事なのだろうか。
―黒側の情報かもしれないし、後で渡部さんにでも話してみるか…
そう思いながら高橋はスタジオに向かって歩き出した。
廊下の向こう側からこちらに向かって足音が響いてくる。
石川が廊下の角を曲がってこちらの方へ歩いてきた。
「あれ、今日出るんだっけ?俺、先行くよ」
高橋のお守りの中の石が警告するように淡くまたたいた。
高橋がその事に気付かなかったのは分厚いパーカーを着ていたせいだけではない。
「…また後で…」
高橋の背中を見送った石川は口元だけで笑った。
「焦り過ぎだよ」
石川はテーブルの上のジンジャーエールの缶を開けてゆっくりと飲み干した。



 [キングオブコメディ 能力]