God bless you [1]  〜密会〜


476 名前:ブレス ◆bZF5eVqJ9w  投稿日:04/12/30 15:26:25
  
 「最近うちの相方がおかしい」 
 そんな芸人達が増えていた。それは、嵐の前の予兆なのか? 
 ある種慢性的な職業病だよな・・・、と誰かが呟く。 
 「ならうちの相方も、職業病なんかなぁ」 
 全く覚えはないのに、なんだか冷たい。特に、昨日は・・・。 
  
 うちの相方、とはもちろん淳のことである。そして、それを考えていたのは亮。 
 なんと言っても亮のことが好きとテレビでも言うくらいの相方である。 
 自分を何時も大切にしてくれる、かけがえのない相方である。 
 自分のことを今までも、これからも背負ってくれる優しい相方である。 
 その相方が、昨日だけはいつもより冷たい瞳を翳していた。 
 それは、自分の持つ魔性の石・オドントライトの蒼よりも、深く暗い冷たさ。 
 嫌な予感が頭からずっと離れなかった。 
 彼が仄かに見せた、新しめの携帯電話と、それに付けられた石のストラップ。 
 石が光った所をみていたわけではない。しかし、石を見ただけでもう恐怖は迫っている。 
 もしも、石を狙って黒の刺客が現れたら。もしも、淳が石の力に気付いていなかったら。 
 淳に何かあったら・・・。どうしよう。思考錯誤。 


 なんでこんな物と出会ってしまったんだろうか。 
 亮はたびたび思うようになっていた。 
 もしこんな物を手にしていなかったら、今でも自分はきっと平穏の中に暮らしていたはずだ。 
 しかしそれも偽りの平穏か・・・。あるいは、知らないほうが良かった世界。 
 こんな恐ろしい闘いには、さっさと終わってほしくて。それで、亮はずっと考えこんでいた。 
 そんな時だった。 
  
 『亮、明日空いてる?』 
  
 彼が信頼すべきであろう人間からの接触。 
 それが、この日の昼過ぎ、とあるカフェテリアで落ち合う事になった約束。 
 亮は早く来すぎていた。まだ10分はある。 
 窓際の席に1人佇み、珈琲を飲みつづけていた。 
 空いてますけど、なんですか?と言うか、なんで番号知ってるんですか? 
 そんな突っ込みは届かない。 
 ・・・・・・それからしばらくして。 
 ――――カラン。 
 「いらっしゃいませ」 
 小洒落たカフェに、強面の男。全く似合わないな。そうぼやきながら、男が2人入店してきたのが分かる。 
 「・・・ったくよ、なんでこんなとこで落ち合う事にしたんだお前は?」 
 何を考えたらこうなるんだろう、とでも言いたげに、1人はむくれつつ。 
 「まぁまぁいいじゃん?俺今度ここでちょっと・・・さ、んんん?」 
 もう1人はややにやけている。 
 どうせまた女絡みだろう?もうやめてくれよ、と言う悲鳴にも似た突っ込みが聞こえた。 

 「・・・・・・あ」 
 「なんだ?もう来てたのか?」 
 「・・・・えぇ、まぁちょっと前から・・・」 
 男3人で、カフェテリアで密会。一体どうやったらこんなシチュエーションが成立しようか。 
 わりぃな、また仕事が立て込んでて、なんて言葉が交わされている。 
 ずっと珈琲を啜っていた亮の前に、2人の男。 
 片方は不機嫌そうに髪を掻いていて、もう片方はまだにやけている。 
 その廻りに漂うのは『白』には似合わぬ、疲れが見える黒いオーラ。 
 流石邪悪な・・・、と亮は思った。その風貌は一見すればまさしく未だ海砂利水魚であろう。 
 改め、くりぃむしちゅーの2人が、ようやく到着した所だった。 
  
 「ホラ、さっさと座ってコーヒーでも頼もうぜ?俺疲れたし・・・」 
 有田が上田を急かして座らせた。 
 全く落ち着きのない、との呟きが聞こえたのを、亮は聞こえない振りをする。 
 「わーかったっての!はぁ・・・俺も疲れてんだぞ・・・」 
 彼も苦労人のような気がする。 
  
 2人とも座り、コーヒーを2杯、ウェイトレスに注文している。 
 一通り終わり、落ち着きを取り戻した所で、やっと話が始まるのかと思えば 
 「なぁ・・・上田?」 
 「・・・んだよ」 
 「あの子、かわいくねぇー?」 
 「・・・あのなぁ、俺達なんのために来たと思ってんだ?」 
 「分かってるってぇ!・・・でもさ、かわいかっただろ?」 
 「お前分かってねぇよな。」 
 以上のような会話がなされており、亮はただ聞きながら笑っているだけ。 
 一体、この組み合わせが何の為に集ったんだか・・・。と誰かが突っ込みたくなるような状態だった。 
 と、不意に上田が顔を上げる。「亮」と、短く呼びかける。 

 ハイ、と言う返事を確認して、密かになにかを囁く。――――見張られているかもしれない、と。 
 不用意には話を進められない、と理解し、亮が頷く。 
 全てを確認した上で、溜息を軽くついてから有田が話し出す。 
 「やっぱ、さっきの子かわいかったって」 
 「・・・・・・俺は最初の子の方が好みだな」 
 こんな会話で、果たして本当にカムフラージュになるのであろうか。 
  
 ――――カラン。 
 「いらっしゃいませ・・・?」 
 現れたのは、何処かで見た事のある2人組だ。 
 「あっ・・・、握手してください!」と思わず店員が話しかけるも、それをスルーして2人は歩き出す。 
 ゆっくりだが、辺りを見まわしながら歩きつづけている。 
 ――――何かを探すように。 
 徐々にその気配は近づいてくる。石を持つものに対する、殺意のような気配。 
 「・・・つけられてたのか・・・?」 
 上田がやや悔しそうに呟く。 
 元からこの店になにかいる気配を感じていたのに。それは違ったのか?と。 
 「やばいかも?」 
 「あぁ、準備しといた方が良いんじゃねぇか?」 
 暢気なように2人が会話する。亮は目が泳いでいる。 
 そして見つけたような気がした。見覚えのある、昨日と同じ冷たい瞳を。 
 男達はそろそろとこちらに向かってきている。通路の方から仄かに赤い光が放たれ始める。 
 「来るぞ」 
 しかし、その忠告は遅すぎた。 
 言葉が耳に入った瞬間には既に、目の前に赤い影が飛びこんでいたのだから。 

 派手に吹き飛ぶ窓硝子。これまたど派手な衝撃音。 
 走りこんできた赤い影の一撃は、どうやら亮の頭上を超えて外れ、硝子を突き破ったようだった。 
 刹那に飛び交う厳しい視線。 
 店内には幸い客もおらず、先までいたはずの店員達も消えている。 
 「誰もいない・・・?」 
 「まぁいいじゃねーか?誰にもこの事ばれないしよっ」 
 「・・・こう言うときだけ前向きに考えても意味ねぇんだよ」 
 3人はそんな会話をしながら椅子から立ちあがり、通路に残ったもう一人を見つけた。 
 「久しぶりじゃねーか?」 
 との有田の問いかけに短く「そうですね」と答えたのは、テツandトモのトモこと、石澤。 
 しかしその目はいつもとは違い、酷く感情がない。 
 「一体、なんの用だよ?お前等何しに来た」 
 「答える必要はありませんよ、これから、身をもってそれを知るんですから!」 
 石澤がいつもよりも勢いの良い声で3人を脅している。 
 「でも、その格好で何ができるってんだよ?」 
 と、的確に有田が指摘する。 
 見れば、彼はいつものジャージにいつものギターを抱えていた。 
 「それは今から分かりますよ・・・」 
 「へぇ?ってことは・・・、自信あるのか・・・」 
 恐らくは、戦闘向けの能力使い・・・、或いは強化系か? 
 ざっと先輩二人が身構えたのを見て、亮も覚悟を決める。 
 次の瞬間、目の前の景色が凄い勢いでずれていくのを、亮は見た。 
 そして視覚より後についてきた腹部の痛み――――。 
 「り、亮っ??!」 
 視界の外に消えていた先の赤い影、テツこと中本に脇腹を蹴られていたようだ。 
 そして、その中で亮は、赤い光を浴びている中本を睨んでいた。 
  
 [くりぃむしちゅー 能力]
 [ロンドンブーツ1号2号 能力]