God bless you [2]  〜戦闘〜


487 名前:ブレス ◆bZF5eVqJ9w  投稿日:05/01/02 16:25:27
  
 その一撃で、亮は物凄い衝撃と共に吹っ飛んでいた。 
 自分に一撃を与えた本人、中本はと言えば、加速が早すぎたのか、亮と一緒に店内へ滑りこんでいく。 
 ちょうど着地点付近にあったテーブルに、2人が叩き付けられていた。 
 「・・・っ!」 
 「亮!大丈夫かっ!?」 
 心配そうに叫ぶ上田。 
 亮は一瞬、意識を無くしかけたが、その一言に目を覚ます。 
 ――――敵がいる。倒れている場合では無いんだ・・・。 
 「頼むで、ほんま・・・」 
 自分の右腕に収まる腕輪に願をかける。 
 急激に石から蒼い光が零れだして、所有者である亮の体を包み込む。 
 再び場を襲う、強い衝撃。自分の隣で中本がその衝撃をもろに受けた事が分かった。 
 「てっちゃん?!」 
 今度は石澤が叫ぶ番だった。 

 「・・・亮、お前・・・、そんな力が有るなんてな・・・」 
 知らされていなかった亮の能力を目の当たりにして放たれた、驚き。 
 「心配せんと大丈夫ですよ」 
 先輩達の不安もよそに、痛みに耐えながら亮が立ちあがる。 
 中本は、半ば気絶しかかっていて、かなりのダメージを負っている。 
 「・・・てっちゃんが・・・てっちゃんをよくも・・・よくも・・・っ」 
 石澤は怒りに満ち溢れた目線を亮に放っていた。 
 「トモ、先に仕掛けたのはお前等だろーが。」 
 それを冷静に上田がいなす。 
 「五月蝿いぃっ!てっちゃんに傷負わせやがって! 
 お前ら・・・お前ら許さないからな!!」 
 かなりの気迫を込めた言葉を、石澤は返してきた。 
 そして・・・、何を思ったか、おもむろに肩にかけたギターに手を伸ばす。 
 「どんな能力かしらねぇけど、なんか厄介な気がするんだよねぇ」 
 「どっちにしろ、それかたすのは俺じゃなくてお前だからな」 
 上田も有田も、緊張感がなさそうに見える・・・、いや、もっと凄い光景に出くわした事があるのだろうか? 
 ――――ポロン。 
 不意に、あのギターの音が辺りの静寂を掻き切って聞こえてきた。 
 「・・・何だ?トモお前ここでソロライブでも始めるつもりじゃあ」 
 ねぇだろうな?と冗談交じりに上田が問い掛けようとしていたが、それは叶わなかった。 
 「上田さん〜貴方少し黙っててくださいね〜♪」 
 物凄く緊張感がなさそうだ。もはや、緊張感がどうという話では無いとは思うが。 
 だが、その一言がこの状況にもたらした変化は、素晴らしい物だった。 
 石澤愛用のギターピックが、ジャージより少し薄そうな蒼に光った途端に、上田が黙りこんでしまったのだ。 

 「「・・・?」」 
 有田が眉を潜める。石の力・・・?とはいえ、相手を黙らせるだけなら特に戦闘向けでは無い。 
 亮はと言うと、上田の顔をそっと見つめている。 
 「うちの相方の顔凝視すんなよぉ・・・、面白い?」 
 「そうじゃないですよ!なんか・・・目が、とろんとしてる様に見えません?」 
 「・・・目?」 
 「そう、まるで――――」 
 「――――操られてるみたいだよな」 
 亮と有田は、そこまで言った後お互いに顔を見合わせ、そして石澤を睨んだ。 
 「お前まさか?」 
 「・・・そうですよ、そこまで言ったんならばれたも同然ですもんね・・・」 
 2人の推測が正しい事を、石澤はあっさりと認めた。相当の自信があるのだろう。 
  
 操る力・・・これ以上、厄介な能力もそうないだろう。 
 仲間同士を相討ちにする事も可能な、かなり悪質な能力である。 
 「ちっ、ムカツクな、お前さ」 
 有田がかなり険しい顔をしていた。相当やり辛いのだろう。 
 相方に目を向けて、そっと合図を送ってみる・・・。何の反応もない。 
 「このまま貴方達は〜上田さんにやられちゃってくださいな♪」 
 かっと光る蒼い閃光。そして、相方に一撃を与えようと、上田が有田に向かって走りこむ。 
 「有田さんっ!避けて!」 
 「うぇっ?!」 
 亮が有田をかばい、その一撃をまたも腹部に受けていた。 
 流石、高校時代ラグビーをやっていた人間である。 
 その勢いから放たれたタックルは、歳相応とは思えないほどに重かった。 

 「・・・っ!」 
 「亮!上田!!」 
 彼ほどの意思の強い人間も、隙を作ったが最後。そう思い知らされた。 
 「お前・・・、やめろよっ!」 
 強く呼びかける静止の声。 
 「無駄ですよ!今上田さんは僕の操り人形も同然ですからね」 
 「・・・そんな・・・」 
 そして、傍らの中本もようやく立ち上がろうと言うところだった。 
 「・・・テツ」 
 厄介な事になっていた。 
 亮は上田に再び追われていたし、有田はたった今中本に狙われているところだ。 
 そして、その光景を遠巻きに、1人の男が眺めていたが、それは誰も気付かなかった。 
  
 「もう止めてくださいよ上田さん!」 
 そう言いながらも、亮はこの状況をどうしようか悩んでいた。 
 『上田さんを操っているのはトモさん・・・つまり、トモさんをやっつければ!』 
 以上のような結論に達し、亮はすかさず 
 「ちょっと上田さんをなんとかしてくださいよー!!」 
 と相方・有田に叫んでいた。 
 その有田と言えば、赤ジャージを少し汚した中本と対峙している。 
 中本が、自分の腕にはめたややごつめの腕輪にゆっくりと精神を集中する。 
 そこにおさまる紅い石・トパーズがジャージに似た赤を放ち始めていた。 
 「さっきの一撃で分かってる・・・、強化系だろ?お前」 
 「まぁ、そういう事になりますかね?身体能力を上げるだけなんですけどね」 
 紅い光が、ゆっくりと中本を包んでいく。 
 ――――マズイな・・・、このままじゃ勝てない・・・ 
 有田は、自分のズボンのポケットにしまってある石を取りだし、そっと力を込める。 
 「頼むぜ、パイライトさん・・・」 
 が、しかし。 
 目の前に対峙する、この赤いジャージの方が行動は先だった。 

 ――――速い。避ける事も、受身も不可能だろう・・・。 
 その時だった。 
 「有田さぁぁあん!そこどいったってくださいっ!!」 
 「・・・・・・・・・は???」 
 その声がした方向を向けば、亮が深い蒼の光に包まれながら有田と中本の間に割って入るところだった。 
 後ろから追うは上田。 
 どちらもかなり走り回っていた様で、疲れが如実に表れている。 
 かっ、と一瞬全ての視界を遮る蒼い閃光。 
 そして――――中本が有田に放ったはずの攻撃は亮が防ぎ、中本は再びカウンターを受けていた。 
 更に後ろから飛び掛ってきていた上田の存在を忘れていたが、彼もまたカウンターで後ろに吹き飛んでいた。 
 がしゃあん。どさっ。とあちらこちらから衝撃音。 
 「なんで上田まで・・・」有田が密かに呟いていた。 
 今まで何度か攻撃を防ぎ、亮の力には限界が近づき始めている。 
 それは、客観的に見ても明らかだった。額に汗が滲む。 
 「・・・大丈夫か?亮」 
 「まだ・・・まだ大丈夫です・・・後1回位なら・・・」 
 と言いながらも、亮がその場に崩れ落ちかける。それを有田が支える。 
 「ぜんっぜん大丈夫じゃねぇじゃんか!」 
 「・・・まだ・・・、まだ倒れるわけには・・・!」 
 「亮っ・・・!!」 
 亮の気力にも限界が来ていた。 
 そんな時。 
  
 ――――亮君・・・・・・。 
  
 「・・・淳・・・?」 
 ――――亮君・・・、亮君・・・! 
 「淳・・・淳が・・・どっかにおる・・・?」 
 何処かから、相方の声が聞こえてきた。幻聴で無ければ良いのに。 
 そして、その場に居る筈の無いその姿を、亮と有田は見つけた。 
 「淳・・・」「なんでお前が・・・」 
 そこにいたのは、まさしく田村淳その人。2人は、淳の方へと一度向き直った。 
  
 [テツandトモ 能力]