God bless you [3]  〜God bless you〜


509 名前:ブレス◆bZF5eVqJ9w 投稿日:05/01/07 22:31:23

淳と亮と、そして有田は、互いに向き合いながら、そして睨み合っていた。
先程までとは違う、静寂が辺りに漂っている。
「お前まさかと思うけど、『黒』のメンバーなんかじゃ無い・・・よな?」
唐突に有田が聞いた。
ここにいるという事は、即ちこの闘いに関係があると言うこと。
自分達は、淳の存在が有ったことを知らなかった。つまり・・・。
「だとしたら・・・、どうしますか?」
「・・・しゃあねぇけど、やるしかねーわな」
有田は、目の前の後輩に、その相方を支えながら勝負する気があることを伝える。
「・・・・・・・・・っ」
淳の顔が一瞬だけ歪んだ。別に本人は、戦う気は一切無い様で。
その時、突然。
「・・・んです」
「え?」
「・・・いいんですよ、有田さん。」
亮が、微かに自己主張する。
「いいって、何がいいってんだよ?」
「別に、淳が『黒』でも『白』でも、いいんです、俺は。
淳は、自分が助かる為に、頑張ってくれればええんです。」
その一言を、淳は何も言わずに黙って聞いている。

「でも――――」
「でも?」
亮がまだ何か言おうとしだす。
「でも、もしその事で淳が困っているんだったら・・・。
淳が、『黒』の人に操られているんだったら・・・」
「・・・亮君・・・」
そんなボロボロになって、まだ俺のこと考えてるのかよ?
淳が、そう言おうとして、不意に自分の頬に手をやる。
――――暖かい。
「淳・・・、どうなんや?」
「・・・っ、亮君!俺は・・・っ!」
はっとする。
もし、このまま黒の言うことに忠実に従い続けなければ、自分も相方も危ないかもしれない。
それでも自分は、自分の命のことしか考えていなかった。
でも、亮は?その、何時も背負っていた相方は?
ずっと、自分の事よりも、何時でもこの相方の事を考えてくれていた。
こんな相方の事を考えてくれていた。
亮――――、何時も大切な、ずっと一緒に頑張った相方!
「亮君!!俺・・・!!」
「わかっとる!」
亮が突然、大声で叫んでいた。

有田も困惑しているようすである。
「・・・・・・亮?」
「お前、きっと『黒』かなんかに脅されて困っとるんやろ!」
「・・・亮君・・・」
亮は、淳のことをずっと見つめながら、喉が枯れるほどの大声で叫んでいた。
「淳ぃぃぃ――――っ!!ええか!?
・・・もし!お前が!・・・『黒』とか、『白』とかっ!そんな事で困っとるんやったら!!」
「・・・・・・・・・亮・・・・君・・・?」
「淳ぃっ!!!
・・・・・・お前を困らせとる奴とか!泣かす奴とか!そういう奴は、俺が許さへんから!」
「・・・・・・りょー・・・くん・・・・・・??」
「別にお前は『黒』でも『白』でも構わへんっ!!自分の為に!頑張ればええねん!
もし!お前が!俺に何かせなあかんかったら!殺したって構わへんからっ!!」
「・・・・りょーぐん・・・・・・っ!」
「もしっ!お前が!困ってるんやったら!!
・・・・・・お前を!お前を俺が助けてやるからっ!!」
「・・・りょーぉお・・・ぐん・・・・・・!!」
「お前をぉっ!俺が!!今度は背負うから!!!背負ってやるからっ!!!」
「りょぉぉおおおおぐぅんっっ!!!」
2人とも、ぼろぼろと大粒の涙を零しながら、泣いていた。

「そんな友情ごっこはもう終わりですよ!」
不意に聞こえてきた、その言葉。
ぐっと体を締め上げるような音が響いた気がした。
「ぐあっ・・・」
「?!」
驚いて、有田と亮とがその声の方を向いてみると、
取り残されていた石澤が、倒れていた上田の首を絞めていた。
「う、上田・・・!」
「大切な相方でしょ?有田さん?ほおって置いたら駄目ですよ」
そう言いながらも、なおも石澤が力を込めて上田の首を締め上げている。
「・・・有田さん、任しといてください・・・、ここは俺が」
と、涙を拭きながら亮が申し出たのを、有田は
「いやいいや。俺も・・・、大事な事思い出したから。」
「・・・大事な、事ですか・・・?」
「だってアイツさっ」
有田が満面の笑みを零して、亮に心配をかけまいとしていた。
「俺の大切な相方で、一番の友達じゃんか!」
そう言い残して、掌に残したパイライトに意識を集中する。
「・・・トモ、俺の相方に手ぇ出したらどうなるか、覚悟しろよ」
不適にも、笑いながら。
全ての意識を眩ませる、強い光が辺りを一瞬包み、それが収まる頃には。
「「・・・・・・消えた!?」」
二人の声がだぶった。
そう、有田の姿が眼前より消えたのである。

「・・・何処に消えたっ?!一体何を・・・?」
自然と、石澤の力が緩んでいる。
その時、ふと、亮は石澤の後ろに何か、大きい気配を感じた。

――――がしゃん。

「・・・はっ?」
気がついた瞬間には、既に時遅し。
何時の間にか、石澤の後ろには大きなレールのような物が天高く建っていた。
そして、それに取りつけられている座席に石澤が固定されている。
亮が思い出す、これは確か――――「スペースショット!」
そう、よく遊園地で見かけるアトラクションの一つで、座席がレールを猛烈な勢いで上昇する、絶叫マシンだ。
けほけほと上田が咳き込んでいる後ろで、石澤が青ざめた顔をする。
「ちょ・・・っ!ちょっと待って・・・!!俺高所恐怖症なんだよっ・・・」
それを見ながら
「・・・・・・ったく・・・、こんな・・・物にまでなれるんだな・・・、お前・・・」
と、ポツリと残された相方が呟いたのを、有田は聞いただろうか?
そして、暫くしてその機械が動き出したのを、亮と上田は、フェードアウトしかける意識で確認した。
その場には既に、淳はいなくなっていた。
上田は、最後の意識で見つけた、何処かへ去っていく影へと一言。
「god bless you・・・」
そう伝え残して、そして大きな音に感覚を遮られていった。

その後、3人が密かに手を結んだことを、淳は自分の能力で知ることになるのだった。
「でも・・・、それでも俺は、俺のために頑張るよ・・・、亮君。」
それが運命の呪縛ならば、彼は何時解き放たれるのだろうか。それは、誰にも分からない。


※「ロンブー過去編」に続きます。