後藤秀樹編[2]

356 : ◆UD94TzLZII :2007/02/24(土) 11:05:51

「え・・・?」
信じられない話に鈴木は驚く事しかできなかった。
「もう一度言ってもらえませんか?」
半ば冷静を失った浅越が問う。
「・・・あいつらは、後藤を仲間に引き込みよったんや。」
怒気を含めた口調で久馬は答えた。
「僕が・・・僕が宇治原に、渡しさえしなけば・・・。」
「お前のせいとちゃう。あの石の力に魅了されたあいつらがやった事や。」
浅越を励ますようになだぎが言った。
「でもその原因は・・・」
「言わんでええ。」
浅越の言葉を久馬が遮った。
「石に操られたあいつらを止める事ができんかった俺にも責任がある。」
「・・・・・」
「でも、一つ厄介な事があってな・・・。」
久馬はさらに険しい顔をした。
「なんですか?」
「後藤は、この事実を知らん。」
久馬の意味不明な発言に4人は首をかしげた。
「・・・どういう事や?」
「後藤は・・・誤った知識を植え付けられたんです。・・・宇治原たちに。」
「この今の出来事を誤って・・・まさか!」
「そうです。あいつらやのうて俺達が悪やって、思うてるんです。」
4人は絶句した。同時にこれから起こる出来事を嫌でも想像してしまった。

「俺の石は、後藤に取られてもうて力になれないですけど・・・。」
「平気や。」
なだぎが力強く答えた。
「俺らはお前の仲間や。お前が駄目でも俺らが何とかする!」
なだぎの言葉に3人が頷いた。
「ありがとうござ・・・」
「その言葉は後にとっとけ。」
「・・・はい。」
早速4人は作戦を立て始めた。



「しょーもな。」
誰かが彼らのいる建物の外で呟いた。耳には小型のイヤホンをしている。
「アホやなぁ。先輩方は。」
そこにいたのは菅だった。どうやら中の声を盗聴しているらしい。
「こっちには仲間がおるちゅーの。」
どうやら仲間というのは宇治原と後藤だけではないらしい。
「発動まではまだ時間ある・・・な。楽しみやわ〜。さて、帰るか。」
謎の言葉を残して菅はその場を去った。

その頃、一番年下のギブソンはある事に悩んでいた。
それは、時折ぼーっとしてるのか、はっと気がつくとそれまでの事を覚えていないのだ。
まさか、と思い心配になった。しかし、今は後藤の事が優先。
これは自分で何とかしようと誰にも言わなかった。
「・・・おーい?ギブソン?」
鈴木が心配気に尋ねる。
「・・・あっ、すいません!」
「どないしたん?最近なんかおかしいで?」
「何でもないです。・・・っ!」
ギブソンの体に鋭い物が走った。そしてギブソンは鈴木を突き飛ばした。

「うわっ!・・・っにすんねん!」
そして彼らしくない表情で口元を歪めながら言った。
「愚かな奴らだ。正義は我々だと言うのに・・・。」
その言葉に全員が凍りついた。この言葉の意味は、今の状況からしてただ一つだからだ。
「お前・・・まさか・・・!」
彼はふっ、とまた口元を歪めると力無く倒れた。
「ギブソン!」
「・・・あれ、俺・・・今・・・?」
駆け寄った鈴木がギブソンのポケットを探った。するとなぜか2つの感触がある。
「・・・これは!」
取り出してみて、鈴木は落胆した。最も出て欲しくないものがそこにあったからだ。
「どないしたんや?」
鈴木は久馬に苦々しい声で答えた。
「石が・・・黒い石があるんです・・・。」


「・・・発動したみたいやな。」
菅はイヤホンから聞こえた朗報ににやついた。
「そうか。これで一人は消えたも同然。」
「どういう事や・・・?消えたも・・・同然?」
欝陶しかったがまた発動されても迷惑なので、宇治原は後藤に話した。
「喜んで下さい。ギブソンがまもなくこっちにきます。」
「そうなん?」
「ええ。」
「よかった・・・。これで・・・。」
後藤は満面の笑顔を浮かべた。それにつられて宇治原も笑った。
もちろん、それはこれから徐々に割れていく彼らを想像して、だが。

「・・・なんで持ってるん?」
鈴木は静かに怒りを燃やしながら聞いた。
「・・・え?」
「何でこれがここにあるんか聞いてんねん!」
目の前に突き出されたものにギブソンは言葉を失った。
「・・・なぁ、なんでなん?」
「わからないです・・・。」
その言葉で鈴木は怒りを増幅させた。
「知らん訳ないやろ?」
「本当に知らないんです!何でこんな所にあるのか・・・」
「そうか、わかったわ・・・・。」
鈴木は少し自嘲的に笑った。
「裏切ったんか。」
その声の冷酷さにギブソンは凍りついた。
「おい、鈴木!何言うてんねん、落ち着け!」
「なだぎさん。・・・落ち着いとって、こいつがほんまに裏切り者やったらどないするんですか?」
なだぎは何も返す言葉が出なかった。
「今すぐ出てけ・・・裏切り者。」
鈴木がそう言い放つとギブソンは鈴木の手から黒い石を奪い去り出ていってしまった。止める声も聞かずに。
「・・・お前何してんねん?」
「何って裏・・・っ!!」
鈍い音が部屋に響いた。
「・・・何するんですか。」
「こんな時に何してんねんて言うとんのや、ボケ!!」
普段温厚な久馬が怒りをあらわにした。
こうして、5人の関係は宇治原たちの思惑通り、崩れ始めた。