後藤秀樹編[4]

491 : ◆UD94TzLZII :2007/05/26(土) 19:26:45

「後藤さん」
「ん?」
後藤に話し掛ける宇治原の手には石が握られていた。
「あのですね。今度後藤さんに向こうに行って欲しいんです」
「・・・久馬のところか?」
「えぇ」
「何でや」
後藤は宇治原を睨みつけた。
「そんな怖い顔しないで下さいよ。僕に考えがあってそうするんです」
「そうか・・・」
「あ、これどうぞ」
宇治原が後藤に自分の持っていた石を渡す。
「あぁ。・・・え」
後藤はその石を持った瞬間、酷い倦怠感に襲われ、床にへたりと座り込んでしまった。
「なんや・・・これ・・・?」
「大丈夫です」
「そうか・・・?」
酷い倦怠感でぼーっとしている後藤の目を見つめ、宇治原は言った。
「全て忘れて下さい。今までの事を全て忘れて下さい。しかし貴方はある現象を目にすると頭が痛くてたまらなくなりますそして・・・」
宇治原は最後に後藤の耳元で小さく囁くと、その手から先程の石をとった。
「後藤さん」
「・・・あれ、俺なんでお前と・・・?」
「僕が呼んだんです。もう用事済みましたから」
「あ、そう・・・」
後藤は状況がわからず、首を傾げながら、部屋を出ていった。
「出てったけど・・・ええの?」

「あぁ。そのまま久馬さんのところに行くやろ」
「あれで・・・大丈夫なん?」
「あぁ。そんなに不安か?」
「いや、別に・・・」



「・・・ここは」
気がつくと、後藤は久馬たちの楽屋に歩みを進めていた。
「なんで・・・?」
別に用もないのに後藤の体はここに来た。そして今、中に入ろうとしている。

コンコン

後藤がドアを叩くと中からはなだぎが出てきた。
「・・・何しに来たんや」
出てくるなり怖い顔のなだぎに後藤は驚いた。
「な、何ですか・・・そんな顔しはって・・・」
「何しに来たって聞いてるんや!」
「誰か来たんですか?」
奥から聞こえた久馬の声に後藤は反応した。
「久馬!俺や」
「・・・後藤?」
どよめいていた室内が久馬の一言で静かになった事に後藤は首を傾げた。
「なんで・・・ここに・・・」
「俺も何やら・・・。気ぃついたらここ来てた」
「・・・どういうつもりなんですか?」
静かに響く鈴木の声。彼もまた後藤に対しての怒りをその声に含んでいた。
「宇治原たちの差し金ですか?」
「差し金・・・?何のや・・・?」
「とぼけんのもええ加減にせぇ!」

なだぎは後藤の胸ぐらを掴んだ。
「ちょっ・・・止めて下さいよ。お、俺が何したって言うんですか!」
「・・・っんやと!」
埒のあかない会話に鈴木がしびれを切らして言った。
「まだとぼける気ですか。そんなとぼけるんやっら教えてあげますよ!」
鈴木の石が光を放つ。その光を見るなり、後藤はガクガクと震え、頭を抱えた。
先日までの後藤とは違う様子になだぎは後藤から手を離す。
「後藤・・・?」
「痛い・・・痛いよ・・・」
「後藤!」
「止めて・・・頭・・・が・・・」
「鈴木!止めろ!」
「え・・・?」
「早く!!」
凄い剣幕の久馬に圧倒され、鈴木は光を止めた。光が無くなると後藤は力なく倒れた。

「後藤!何があったんや・・・?」
「俺・・・一体、どないしたんやろ・・・。俺にも・・・わからへん・・・」
「石や・・・」
そのギブソンの言葉に全員が沈黙した。
「石ですよ。石の力で・・・宇治原たちに・・・」
「石・・・・・・」
ぽつりと言うと後藤は立ち上がり、ニヤリと笑った。
「石、かぁ・・・」
「後藤?」
「やっぱり後藤さんは・・・」
「・・・躊躇わんと攻撃すれば?」
後藤は先程攻撃を踏みとどめた鈴木を挑発するように言った。

「なだぎさん・・・!」
「あぁ」
二人は同時に後藤に攻撃を仕掛けた。
「え・・・?」
二人は驚いた。いとも簡単に後藤に攻撃が決まり、まるで避ける気配もなかった。
「どういう・・・?」
「・・・たい、よ。なんで・・・っ・・・」
か細い声に5人は驚愕した。何故なら、その声は後藤から発せられていたからだ。
「なんで・・・俺、に・・・攻撃・・・を・・・」
久馬が後藤に駆け寄る。すると今までの後藤が嘘のように、久馬に攻撃をくらわせた。

「久馬!?」
そしてなぜか、攻撃をした本人が一番驚いていた。
「俺今・・・久馬に・・・」
「っらぁっ!」
なだぎの攻撃にまた後藤は攻撃を打ち返し、また自らした事に驚いていた。
「なだぎさん!?」
「どういう事なんですか?」
ギブソンは浅越に問うた。おそらくこの今の状況に答を出してくれるであろう人物に。
「後藤さん・・・」
「・・・やっぱり、差し金やったんですね」
そしてまた、鈴木が攻撃する。・・・見事に後藤は攻撃を返し、そして頭を抱えた。
「何で・・・何で、俺は・・・」
後藤は半狂乱になっていた。
「俺が・・・攻撃・・・した?」
「後藤さん!」

浅越は後藤に話し掛けるが、後藤は頭を抱えてぶつぶつと何かを言っていて反応しない。
「後藤さん!駄目です!」
「俺が・・・俺、が・・・俺・・・」
そこで後藤はぴたっと口を止めた。
そして突然、狂ったように笑い出した。
「・・・後藤、さん?」
「・・・そうや、俺や。俺がやったんや・・・ははっ。滑稽やわ・・・」
そしてギロリと浅越たちを見た。
「俺に近付くなよー。ははっ・・・。久馬達みたいにするでー。俺は今、別人や・・・。きゃははっ・・・」
ギブソンははっと気付いたように浅越に言った。
「この感じ・・・浅越さんと同じや・・・」
「え・・・?」
ギブソンは苦虫をかみつぶしたように言った。
「浅越さんが、黒い石に完全に飲み込まれてもうた時と・・・同じなんです」
「じゃあ、後藤さんは・・・」
「たぶん・・・」
「だったら・・・・!?」
何故か浅越の背筋にひやりとした感覚が通った。
「おーばーひーと」
ぽつりと後藤が言うと5人の体は熱くなり始めた。
「うわ・・・っつい・・・」
「なんや・・・これ・・・」

焼けるような体の熱さに5人はもがき苦しむ。
何とかそれを我慢しながら、浅越は原因を探した。皆、体の一部分が酷く熱い。と言う。
そこで浅越は自分の熱いところを見てみた。そこには・・・。
「・・・石・・・?」
そう、自ら持ち合わせている石が酷い熱を持っていたのだ。
「そのとーり!やっぱ浅越は頭ええわ。うん」
ニコニコと笑いながら、後藤は手を叩いていた。
「・・・後藤さん・・・」
「うん?」
「どうして・・・。黒い力に身を委ねるんですか!」
一瞬、後藤から笑顔が消えた。
「・・・・・・」
「いい事なんてないんですよ?その石は・・・人の心を狂わせる・・・悪魔の石なんですよ?」
そう浅越がまくし立てると、また後藤はニッコリと笑った。
「浅越。お前やったらわかると思うんやけどなぁ・・・」
「僕だってわかってる上で言ってるんです!僕はその石のせいで仲間を傷つけました・・・。僕がその石を宇治原たちに渡したから・・・貴方は今・・・ぁっ」
さらに酷い熱さが浅越を襲う。
「うるさいわぁ・・・。もう石割ったろかな」
浅越が小さく悲鳴を上げたと同時にパリンという音がして、浅越の体の熱は引いていった。

「さぁてと、次は誰の石にしようかな〜?」
後藤はニヤニヤとイヤらしく笑った。
「待て、後藤・・・」
「・・・きゅーまやん。まだ立ち上がれるんか・・・」
ふらりと立ち上がる久馬。
「戻ってくるんや・・・後藤・・・」
「うるさい・・・」
「戻ってこい、後藤!」
「う、うる、さい!」
後藤は物に当たり散らした。
「はぁ・・・っ、はぁ・・・っ」
後藤は苦しげに息をつく。
「お前の体でそんな無理したらあかん!もう・・・限界なんやろ・・・?」
「・・・ふっ。たしかに俺は体が弱い。せやけどなぁ・・・」
後藤はふらりとゆれた。
「後藤・・・!」
「人一人、殺る体力は残ってんねん・・・!」
後藤は雷を起こすと、久馬に一直線に落とした・・・はずだった。
「っはぁ・・・間に合い・・・ました・・・ね・・・」
「菅・・・!?」
雷の直撃を受けたのは、久馬ではなく・・・菅だった。

498 : ◆UD94TzLZII :2007/05/27(日) 08:44:22

後藤秀樹・新能力
完全に石に飲み込まれた時に使える。
「おーばーひーと」の一言で自分の周辺の石を持つ者の石を高温で発熱させる。そして、その石を破壊する事も可能。
かなりの体力を要する為、一回の発動につき一度しか使えない。二回以上は、死を招く恐れがある。