後藤秀樹編[5]

529 : ◆UD94TzLZII :2007/07/05(木) 17:15:19

「はぁ・・・っ、はぁ・・・っ・・・っ」
「菅・・・お前、何で・・・?」
「とにかく・・・こいつを!」
久馬は石の能力で、菅の傷を癒した。
「・・・裏切ったんか?」
後藤の冷たい声が響く。
「なぁ、どうなん?菅」
後藤は菅に近づき、顎をつかみ上げた。
「・・・俺には、もう無理です」
「へぇ・・・」
その瞬間、苦しむ4人の声が無くなる。
「・・・熱く、なくなった?」
「どうして・・・」
「・・・裏切り者から始末せんとなぁ」
後藤はぽつりと呟き、石から光を放つ。
「・・・おーばーひ」
「やめるんや!後藤!」
久馬の声に後藤の光が陰る。
「・・・何や」
「そんなぼろぼろの体で・・・戦う気か?」
「何や、心配してくれんの?」
軽々しく言う後藤に久馬が静かに言う。
「・・・お前、死ぬぞ」

「え?何?」
話は、すこし前に遡る。「せやからやりすぎちゃうかって、言うてんの」「何でよ?」
若干怒った調子で喋る菅に宇治原は首を傾げた。
「ほんまに、久馬さん達・・・プラン9を始末せなあかんのか?」
「・・・この間言うたやろ?邪魔者は始末や」
「せやけど!」
「ん?」
「ほんまに・・・ほんまにそれは正しい事なんか?」
菅の言葉に宇治原の顔が一瞬険しくなる。
「菅ちゃん、何言うてんねん」
「茶化すなや」
「茶化してへんわ。そっちこそ何やねん、急に」
宇治原は刺すように菅を睨んだ。
「最近のお前はおかしい」
「俺には・・・わからへんねん。何が正しくて何が間違ってるんか・・・わからへんねん」
菅は落胆するように呟いた。
「俺らは間違ってない。安心せぇ」
「・・・正しいんか?」
「あぁ。でも、それには・・・多少の犠牲は仕方ない」
「犠牲・・・やと?」
「下剋上、なんて言うとまるで戦国時代みたいやけど、俺達は頂上に上っていく。一番を目指して」
菅は宇治原の言葉に行き場のない怒りを感じていた。
「・・・浅越さんにこの石をもらった時から俺達はそう決めたやろ?せやから、これはその目的を果たす為の第一関門にしか過ぎひん」

「目的を与えてくれた人さえも・・・?」
「あぁ。一番は俺ら2人だけ。ほかの人は・・・いらん」
菅には宇治原が得体の知れない物にとりつかれて自分を失っているようにしか見えなかった。
「・・・宇治原、それ貸して?」
菅が指したのは石が詰まった箱。
「あぁ、ええよ」
「サンキュー・・・っう!」
箱を受け取ろうと宇治原に近寄った菅の腹に一発のパンチが入る。
「今のお前に俺が渡すと思うたん?」
「くそ・・・っ」
「大方、この石を割ろうとしたんやろうけど・・・」
「・・・・・・」
「どないしてんや?まさか・・・裏切ったりせぇへんよな?」
宇治原の言葉が発する冷たさに菅はみじろぐ。
「まさか・・・なぁ?菅ちゃん」
そう宇治原が言うと、菅は部屋を飛び出した。





そして話は元に戻る。

「何を。俺は死んだりせぇへん」
「やめてくれ、後藤・・・」
棘のあった久馬の声が震える。

「・・・やめたってもええよ」
「後藤!」
「でも、条件があんねん」
「何や」
「・・・降伏を宣言して、その石をここで割れ」
「何やと!」
後藤の攻撃から回復したなだぎが叫んだ。
「できひんのやったら・・・」
石が再び光を放つ。
「菅は・・・な?」
後藤はニッコリと微笑んむ。
「・・・っ」
「さぁ、どうすんねん。久馬」
「久馬、後藤に乗ったらあかん!」
暫くの沈黙の後、久馬は口を開いた。
「・・・俺は、お前を救う為にこの石を持ってるんや」
「そういう事なら、交渉決裂や」
後藤の石から再び光が放たれる。
「・・・さようなら、菅ちゃん」
「後藤!」

「おーばーひーと」

久馬の叫びも空しく、後藤は再び、技を発動した。
「・・・っあ!っ・・・、うぁっ!」
菅は石から発せられる熱にもがき苦しむ。
「ついでに・・・石も・・・」
しかし、後藤はそう言うとその場に崩れ落ちた。

「後藤!」
「後藤さん!?」
回復した4人とともに久馬は後藤に駆け寄った。
「後藤!」
しかし、後藤は全く反応しない。
「久馬さん!菅はどうするんですか!」
菅を心配した、浅越が叫ぶ。
「あ、僕は・・・大丈夫、です・・・」
「本当か?」
「はい・・・後藤、さんが・・・倒れたから・・・ですかね?」
「・・・後藤・・・」
久馬の声が震える。
「後藤!」
「久馬・・・」
後藤の顔からは、どんどん血の気が失せていく。
「今は、後藤さんの心配してる場合ちゃいますよ・・・」
「せやけど、鈴木!」
「久さん!」
鈴木は握った拳を震わせながら言った。
「俺かて後藤さんの事は心配です。でも今俺達がせなあかんのは・・・後藤さんをこうした大元を倒す事なんですよ!」
「それはちょっと違うやろ」
なだぎが間に入る。
「え?」
「後藤もそうやけど、菅も宇治原も・・・この石から救わなあかんねん」
「・・・・・・」
「せやろ?鈴木」
鈴木はなだぎに無言の肯定を示した。
「・・・気絶してる間に後藤さんの石割っちゃいましょうか?」
ぽつりとギブソンが言う。

「それはあかん!」
菅がいきなり叫ぶ。
「何でですか?」
「そんなしたら、この事が・・・宇治原にバレてまう」
「・・・そうですか」
「あの、疑問に思った事があるんやけど」
「何ですか、浅越さん」
「菅の石って・・・今どうなるん?」
その言葉に4人ははっとした。石を持っている以上、彼は石の力に・・・。
「・・・あ〜ぁ。バレてもうた」
菅は気だるそうに体を起こして言った。
「何やと?」
「あんたら騙して取り入るんが作戦やったのに・・・」
「・・・嘘や」
「はい?」
「嘘やろ?菅」
「嘘とちゃいますよ、久馬さん。これが作戦やったんです」
そう言って菅は笑う。
「・・・俺の作戦勝ちですね」
「菅・・・お前・・・!」
突然、菅の石が光を放つ。
「一番は俺たち。ほかのやつらは・・・いらんねん」
「・・・なだぎさん、あんな事言ってる場合やないみたいです」
鈴木が攻撃態勢に入る。「せやけど・・・!」
「あんたは甘いわ」
菅が笑って言う。
「いや、それとも・・・怖い?」


「何やと?」
「もう仲間を傷つけるんが怖いんでしょ?せやから平和的な方法を提案した・・・」
「・・・・・・」
「最も、あんたらは俺の仲間とちゃうけど」
くくっと菅は笑う。
「さぁ、どうします?」
「・・・なだぎさん、諦めて下さい」
「・・・しゃあないか」
ゆっくりとなだぎは攻撃態勢に入った。
「そうこなくちゃ」
菅も攻撃態勢に入った。「っらあ!」
なだぎが攻撃を仕掛けた。
「そんなもんで俺に勝てると思ってるんですか?っら・・・!あ・・・っ」
攻撃をしようとした菅は、突然血を吐いた。
「菅・・・?」
「はぁっ・・・何突っ立ってるんです?いきますよ!かは・・・っ」
菅の周りには赤い水たまりが出来た。
「はぁ・・・っ、あ・・・」
「何で・・・急に?」
「・・・あ、たま・・・ふらふらしてきたなぁ・・・」
それでも尚も菅はふらりと攻撃体勢をとる。
「菅、お前何で・・・」
その痛々しい菅を見ていられないとばかりに久馬が呟く。
「・・・ふふっ」
「何やねん、不気味な笑い方しよって」
「石の代償ですわ・・・」
ぺっ、と血を吐き出すとポケットから石を取り出す。その石は見た事もない輝きを放っていた。
「それが・・・お前の石・・・」

「正確には・・・宇治原の持っていた中で一番強い石。この石で・・・この戦いを終結させるんです」
「・・・例え己の命を削っても、か?」
「あぁ」
5人の内、誰のものでもない声に菅は答えた。
その声の主は、宇治原。