東京花火−scene3


359 :[東京花火−scene3] ◆yPCidWtUuM :2005/11/19(土) 23:47:42 



…さて時は数日前にさかのぼる。 


その夜ギターケースを小脇に抱えた小柄な男は自宅前で、もはや幾度めかわからない黒の襲撃を受けた。 
もっともその日の刺客の連中は、かなり強力な石を持っていたにもかかわらず、本人たちの実力が 
石に見合っていなかったため、途中で石の力が本人たちにはねかえって自爆したので戦闘は早々に終了している。 
さらに襲撃の場所が場所だったこともあって、波田は最後の力を振りしぼり、どうにか我が家の扉のむこうに 
滑り込んでから力つきて気絶したのだった。 

…そしてまさに今、玄関で自分の靴にまみれて目覚めたところだ。 

玄関で倒れたせいであちこち打った体が痛かったが、まずはとにかく先ほど刺客から回収して握りしめたままだった石を 
しまっておかないと、と手を開く。その手のひらには小さな石が1つのっていた。 

…1つ? 

おかしい。自分はさっき、3人に襲われたのだ。そしてそいつらは1つずつ石を持っていた。 
ならば回収した石の数は3つであるべきなのに、1つしかない。まさかうっかり回収し忘れたのだろうか? 
いや、そんなはずはない、確かに自分は連中から石を回収したはず…と、そこまで記憶をさかのぼったところで、 
波田は自分の記憶の異常に気づいた。 


そうだ、自分はこの手の中にある石をまず拾って、それから次の石に手をのばしたはずだ。 
そのあと…そのあと、どうなったのだろう?おかしなことにその先の記憶がすっぽり抜け落ちている。 
どうやって自分はこの玄関までたどり着いたのか、それもなんだか曖昧だ。 

手の中に残ったのは、変わった光を放つ透明な石のみ。ひょっとしてこれが何か力を発したのだろうか? 
かるく握ってみると、何となく自分と波長が合うのを感じる。これを拾ったとき、まだ自分の石、ヘミモルファイトの力が 
切れていない状態だったから、波長の似ていたこの石の力を自分が引きだしてしまったのかもしれない。 
光にすかしてみると、透明な石の中でちらちらと虹色の光が踊る。戦闘の際に刺客がこの石を使っていた様を 
思い出してみようとするのだが、この記憶にもまた靄がかかっている。 

波田はあきらめのため息をつき、あまり成果を見ることのなさそうな思索に終止符を打った。 
この石を持ち歩くのは気が進まない。かといって自宅においておくには敵の多い身だし、まさか捨てるわけにもいかない。 
気休めにしかならないが、今まで回収してきた他の石とは分けて布に包み、持ち歩くことに決めた。 


 [波田陽区 能力]