361 :[東京花火−scene4] ◆yPCidWtUuM :2005/11/19(土) 23:50:36
井上と河本は珍しく、2人並んで帰途についていた。
それなりに仲はよくとも、普段はプライベートを異にしている2人がこうして一緒に帰ることにしたのは、
やはり今日楽屋で聞かされた話が気にかかったからだ。
結局2人の石の力は不明なままだったが、だからこそなおさら襲撃を受けたときの不安が大きい。
上田と有田が波田陽区に連絡をとってみると言っていたので、近日中に少しは事態が進展するだろうが、
今現在心細いのに変わりはない。2人いれば運良くどちらかが戦える能力を持っているかもしれないし、
少しはマシだろうということで今に至る。
夕暮れの陽がさし込む局の廊下をとぼとぼと歩きながら、河本がぽつりとこぼした。
「…どーなるんやろな、これから」
井上はそれに答える言葉を持たなかったので、
2人は無言のまましばらく廊下を進み、エレベーターに乗り込んだ。
他に誰も乗っていない小さな動く密室の中、井上はやっと口を開く。
「なあ」
「ん?」
「この先な、どーなるかわからんけど」
「…おう」
「何かな、俺ら頑張ったらええと思う」
「…」
「それでええと思う」
河本は少し黙って、それから、
「…そうやな」
と小さく笑って呟いた。
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