Jumping? --04/unlimited


419 名前:ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w   投稿日:2005/05/05(木) 17:38:00 

収録は無事に終わった。
しかし、これから無事で帰れる確率は低い。
なぜなら、あの山本はこれからキングコングとまだやり合おうとしていたからだ。
「・・・西野、梶原。あとで」
「・・・ん」「・・・はい」
2人とも仲間がいる前でそう声をかけられたものだから、無難に返事をした。
――――くそっ、博の奴まだやる気かよ?!疲れてる筈なのに!
堤下がじれったそうにぼそっと漏らす。
「先行くからさ、ちゃんと来てね」
「わかっとる」
山本は先に局を出た。
「どないする?梶」
「・・・どないする?って、行くしかないやろ?」
「せやけど・・・、多分決着つかへんぞ、あれは」
それも相手が俺達だと、と誰にも聞こえないように2人は会話した。
それから、仲間達がぽつりぽつり会話しながら時間は過ぎる。その間に何人かが出ていった。
10分ほど経っただろうか。山本をあまり待たせるのも良くないなと西野が思った時だった。
「・・・あれ?山本君は?」
ドランクドラゴン・鈴木拓が不意に言った。
突然にそんな声が上がったもんだから、2人はびくっとした。
「博なら随分前に出ていったけど・・・」
「あ、そう?どこ行ったか分かる?」

西野は刹那どうするつもりだろう?と言うか気付かなかったのかよ!と思ったが
「・・・ちょっとさ、物貸したから、返してもらおうと思ったんだよね」
鈴木がそう付け足した。
「あ・・・、そうなん?」
ちょっとした嫌な予感の同化した返事を返す。
言って良いのか、悪いのか・・・。
自分が行かなければならない、とある近くの公園の名前を鈴木に告げる。
「そこに行ったらいるの?」
「いますよ」
「ほんと?」
「ほんまですって」
・・・というか嘘をついてもメリットがないだろ。と西野は思った。
「そっかー、ありがと西野。行ってみる」
「・・・・・・はい。」
もう何と言ったらいいか、彼には分からなかった。
時間も時間だ、暗い中で相手の顔はあまり見えない。山本は自分と間違えて鈴木を襲うかもしれない。
みすみす仲間が襲われるのを待っているのは嫌だ。
やっぱり自分も一緒に行くべきだ、いやそうしなければならない。
「あ、いや待って拓さん!」
遅かった。
彼の姿は何処にもなかった。

追いかけなければ・・・、そう思った西野を鞄の中身が引き止める。何か、感じるような気がする。
西野は、ふと考えるのを止めて箱を取り出していた。
それを見て梶原は声をかける。
「・・・西野、お前何して」
「先行っとけ」
「あ?」
「先行け、言うてんねん」
「・・・・・・」
真剣な眼差しの相方の言葉に、仕方なく頷いてから梶原は外へ飛び出した。



「さぶいなー・・・」
鈴木は、西野から聞いた公園のほうを目指していた。
そう言えばもう日没は過ぎてたな、と鈴木は思った。それもそうだ、辺りは暗くなり始めていた。
彼を凍えさせるのは、やや冷たい、夜風である。
遠くに、小さく看板が立っている。公園の入り口だ。
・・・ここに山本君がいるんだよね、確か。そう言い鈴木はやや早足で中へと入っていった。
夜の公園は、亡霊でも出そうな暗さを保っていた。寂しげにブランコが揺れる。
そして明かりのある奥の方に、何やら人影が見える。恐らく、これが山本だろう。
――――山本君!
早足で駆け寄り、声をかけようとした瞬間、眼前が光に包まれた。
バチバチッ!!と言う何かの炸裂音。
鈴木は、焦ってそこらへんの遊具の後ろに隠れた。
そっと脇から覗くと、そこには山本と同じ位の細い体がいた。何処から現れたのか、それは分からないが。
「・・・いきなり酷いな、板さん」
「酷いな?俺の相方に手ぇ出しといてそりゃないよ、博」
山本の目の前の地面は焼け焦げている。
そして、その現象を起こした張本人である板倉は、鈴木のいる遊具の前側、数メートル先にいた。
鈴木のほうへは、その声は聞こえてはこなかった。
「なーんだ、つっつんからホントの話聞いちゃった?」
「勿論。なんか引っかかってね」
「へぇ・・・、じゃあ板さんは俺とやりあうつもりだ?」
「目を覚ませよ博、その石持ってからおかしいよ?」
「答えになってない。」
「答えなくても・・・分かってるんだろっ?!」
板倉の周りを青白い光が走って消えていく。

恐らくあれは、雷とか、電気とかそういう類の物であろう、と鈴木は思った。
アンクレットから漏れるのは黄色い光。石の名はカクタス。平和を意味する石である。
「板さん面白そうな能力持ってるねぇ・・・。こっちにくりゃいいのにな」
「俺達はどっちにも興味ねぇんだよ!」
その言葉が、彼だけの本心なのか、或いは2人の決断なのかは分からなかった。
板倉はその場から動かずに、再び地面に電撃を走らせた。
青白い色は失われずに、勢いよく山本の方へと向かっていった。
しかしその電流は山本の立っている位置より少し右へそれる。
「凄いな・・・、普通電気って地面通らないのに・・・」
山本は感心していた。
それもこれも、板倉の石がそんな力を秘めていたから。
水とか、風とか、炎とか、様々操る石があるのは聞いていたが、まさか電撃とは。
しかもそれがこの板倉だとは正直な所信じられなかった。
その彼は、目の前で悲しそうに言う。
「博、頼むからその石を俺に渡してくれないか?」
――――答えは初めから分かっていながら、山本を最後まで信じたいから。
板倉は最後の望みをかけて聞いた。



「・・・・・・?」
鈴木は遊具の後ろで、世界の音が静まったのを感じていた。
あの2人が、動かない。それとも、動けない?
しかし決着がついたような雰囲気も感じ取れない。
ならば、おそらく前者だろう。
一瞬だけ自分の足元を確認する。この場をどうする事も出来ないであろう、そう思い。
またそっと・・・、少しだけ遊具の影から外を覗いた。


「・・・っくくっ・・・」
「・・・・・・?」
「甘いよ。甘すぎるよ板さん」
どっかで聞いたような台詞だ、そう思いながらも板倉が眉を潜める。
「何笑ってんだよ」
「・・・・・・だってさぁ、相方と同じようなこと言うんだもん」
「?!」
刹那、その広場が黄色い光であふれた。板倉はその眩しさと、驚きで顔を一杯にする。
――――馬鹿な・・・、まだこれだけの力を秘めていたのか!
そう言いたいが、言えない。
思っていたよりも疲労が身体に溜まっていた。このままだと・・・、ヤバイ。
足を後ろに引いた拍子に上着のポケットから何かを落す。・・・電池だ。
「そうか・・・、こいつの電気を引っ張ってきたんだ?」
なるほど、静電気だけじゃ限度があるもんね。
これで、電撃のからくりは分かった。もし今板倉が電撃を放つことが有っても、避けるのは容易だろう。
それにどうやら、相手はもう動くことすらままなら無いようだった。
操作する力は、疲労が溜まるのが早いのか。それとも彼がまだ上手く制御できていないのか。兎に角次の一撃で、仕留める!
ぐっと身体を縮めて、今板倉に突撃しよう、そう思った刹那。
「博!」
板倉よりも背後、入り口の辺りから女性の声。

「・・・伊藤ちゃん?」
遠くから桃色の光が暗がりを照らす。板倉は後ろを振りかえらずに、その声の主を特定した。北陽の伊藤である。
一体何処から、何しに来たのか?それは誰にも分からなかったが。
伊藤ちゃん、何しに来たんだよ・・・、今は博は危険な状態で・・・。
その思考も纏まらないまま、優しい光が辺りを包んだ。
桃色が辺りから明かりを奪い始めたころに。
「博、ダメでしょ?勝手にどっか行ったら」
伊藤は今までの流れを全て無視して、山本に呼びかけた。
板倉の横を通りすぎて、山本の目だけを見つめて。すると、彼のほうも何事も無いかのように
「うん、ゴメンね・・・」
まるでラブラブなカップルの如くの会話を始めた。
「ちょっと?私はお酒買いに行くって言うから待ってたのに・・・」
「あ〜、ごめんごめん、忘れてた」
「忘れてたじゃないでしょ〜?」
「あ・・・、あはははは」
「ちょっと!笑って誤魔化さないでよ!・・・ふふっ」
「あははははははっ!」
「ふふ・・・、はははははっ!!」
「・・・帰ろっか?」
「帰ろっ!」
そのまま、2人は手を繋いで公園から出て行ってしまった。
それを呆然として見つめながら、板倉はその場に倒れこんだ。
鈴木はと言えば、その時にはもう公園にはおらず、家に帰っていたという。
そして、その後何も知らないキングコングの2人が公園に来た時には。
「・・・・・・」「・・・・・・」
ただそこには、倒れている板倉と、砂煙と焦げた地面が残っていた。



426 名前:ブレス@はねる編 ◆bZF5eVqJ9w  投稿日:2005/05/05(木) 17:44:24 

こんな感じではねる編4話投下完了です。と言う訳で能力。

北陽
伊藤さおり
石:ピンク・コバルトカルサイト(石言葉は「セクシーな美」、とても希少な石らしい・ピンク)[アンクレット]
能力:相手をメロメロにして、カップルになりすますことが出来る。
(相手は伊藤を彼女だと思うし、伊藤は相手を彼氏だと思う)
ただし、自我が強い人間や伊藤に全く興味のない相手に使うことはできない。
効果が持続するのは10分くらい。
ただし、その時の伊藤と相手の感情等によって変化することもある。
条件:勿論だが、相手が男でないと発動しない。
また、相手に対しての好感度が低い場合も発動確率が下がる。
発動中は相手に対して「好き」と言う感情を持ちつづけなくてはならない。
使用しすぎると、お互いに本当のカップルだと勘違いを起こす。