遅れてきた青年 [1]


565 名前:遅れてきた青年 ◆5X5G3Ls6lg   投稿日:05/01/30 19:54:14 

「あーあ」
そういいながら今野は恨めしそうな顔で窓の外を見た。
朝は雲ひとつなく晴れていたのにぽつぽつと雨が降り始めている。
今日は雑誌の人力舎特集で二人にも取材があったが、
皆が先に取材や写真撮影を受けていたのでその順番を待ってた。
「なんだよせっかくおろしたのに」
高橋はその言葉を聞いてなんとなく今野の足元を見た。
シンプルだかいかにも高そうな靴。
何でも行きつけの服屋でわざわざ予約までして買った5万近くする物らしい。
朝の天気で判断して買ったばかりのその靴をおろしたらしい。
「止まねえかなー雨」
ひどいしかめっ面だ。
「力で止めたら?」
高橋が今野の足元から読んでいた雑誌に目を移してから言った。
「でも、明日も仕事あんじゃん」
「そのつもりだったのかよ。止むだろ、取材終わる頃には。
 夜は晴れだってさ」
「そう」

そっけなくも聞こえる言い方だったが機嫌は直ったようだ。
高橋がもう一度今野に視線を戻すと、今野は携帯をいじっていた。
きれいな紫がかったピンクの石のついたストラップ。
高橋は無意識にTシャツの下のお守りを触った。
静かな部屋の中で、雨足の強くなっていく音だけが聞こえている。
−あの時雨降ってたよな
高橋は一週間前の夜のことを思い起こした。