ナナイロ短編


506 : ◆mfl6EhR6DM :2007/06/10(日) 01:07:41 

「…コンビ名にかけてあんのかな」 

簡素な照明に照らされ、石がキラリと赤く光った。 
金子がぎゅっと握ると、石は青に変わる。 

「その石、ナナイロって名前なのか?」 

斎藤が尋ねる。 

「ううん。…エマイユって云うんだって。」 

金子は微笑んだ後にやんわり否定した。握って開くと今度は藍色。 

「エマイユの日本名?が七宝って云って、七つの石が混ざってるんだよ。
 だからナナイロって事かなーなんて。」 
「ふーん…。」 

斎藤はさして興味も無さそうに相槌をうった。 
しかしそれはあくまで興味がない『フリ』で、実際は気になって仕方がない。 

――何故相方の金子には石が来たのに、自分には来ないのか―― 


「金子は…どっちに入る?」 

邪な考えを断ち切るべく、以前も聞いた事を聞いた。 
答えも以前と同じ。 

「どっちにも要らないよ…こんな能力。」 

自嘲気味に金子が言った。 
石が紫色の光を強く放つ。次は赤。橙、黄…次々と変化していく。 

「光を出すだけで、他に何も出来ないんだもん。…役に立たないでしょ。」 

金子の返事はいつもこうだった。 
斎藤はそのときの金子を見ながら苛立ちを抑える――石があるだけ良いじゃないか―― 

「てつさん…てつさんは、おかしくならないでね。」 

質問の後、決まって金子はこう言った。 

「…わかってる」 
「なら、良いけど…」 


――金子のポケットに隠されているもう一つの石に、斎藤は気付いていない。