ザ・プラン9編[4]


348 名前:22  投稿日:04/11/30 11:39:52

双方譲らないまま、楽屋は長い沈黙。浅越が来るという焦りに、鈴木はドアばかり見てしまう。
こんな石さえ拾わなければ。やはり捨ててしまおう。そう思い、チョーカーを外そうとした時、ゆっくりとドアが開く。
現れたのはもちろん、浅越。
「来たな。」
灘儀がいち早く、浅越の前に立つ。
「ちょっ、灘儀さん!」
「おいゴエよ。鈴木の石を壊すんやて?その目的は何や?」
「邪魔なものは排除する。それ以外に何か理由が必要ですか?」
「なんで邪魔なんや?お前も何か、石持っとるんか?」
「一つだけ言えることは、あなたが目障りだということです!」
浅越は声を荒げ、片手で灘儀の胸倉を掴んだ。ゆっくりと、灘儀の足が床から離れる。
それに抗おうと灘儀は必死にもがくが、浅越の異様なまでの強い力がそれを許さない。
「やめろ!」
久馬が止めに入ろうとするが、空いたもう片方の手で、浅越は簡単に振り払う。
(おい、石!なんとかせぇ!俺の声に応えろ!)
(御意)
鈴木の声に石が応え、ネフライトと、灘儀のサンストーンが光を放った。

ジーパンのポケットに入れていたライターから大きな炎が出る。一瞬怯んだ浅越から、何とか灘儀は開放される。
浅越は真正面から食らった炎に包まれている。しかし平然と立ち、声も上げない。
「おい水!このままやったらゴエが・・・」
「ほぅ、敵の心配をするなんて余裕ですね。」
灘儀が鈴木に叫ぶが、浅越を包んでいた炎は見る見るうちに消え、浅越自身も無傷。
携帯のストラップが光を放っている。
「やっぱりお前も何かの石、持ってるんやな。」
「持っていますよ。一瞬にして俺を癒してくれる、便利な石です。」
言いながら、浅越は鈴木に歩み寄る。間に入ろうとした灘儀を軽く突き飛ばして。
灘儀は突き飛ばされた勢いで激しく机に激突し、額から血を流して倒れる。
すると、久馬の持っていた石が光り始めた。その光が灘儀に向けられようとした時、浅越の言葉がそれを遮る。
「いいんですか?ゴールドストーンの癒しの力は、一度使うと次に使うまでに少し時間がかかります。
今が本当に使いどころですか?」
言われて久馬が戸惑うと、石から光は消えた。
「不便な石に当たりましたね。俺の石なら、何度でも自由に癒すことができたのに。」
浅越は勝ち誇ったように笑って、さらに鈴木に迫る。
「大丈夫や。」
灘儀はゆっくりと立ち上がり、2人に笑って見せる。
(おい、石!何とかせぇよ。攻撃とかないんか!)
(王は自ら動きません。我らにできるのは、兵を呼び集めることのみです。)
(じゃあ早よ呼び集めろや!)
(この近くに、石を持つ人間はあの2人しかおりません。)
灘儀の石はまだ光っているが、浅越の持っている石がある限り、意味はなさそうだ。
浅越の手が鈴木の石に伸びる。鈴木は石を握りこんだが、浅越はその手を開こうとする。力では、勝てない。


灘儀と久馬が全力で止めに入り、浅越がそれを振り払う。
そうやってバタバタともみ合っていると、再び楽屋のドアが開いた。
「浅越さん!」
息を切らせながら、駆けつけたのはヤナギブソン。
入ってくるなり鈴木作のチョーカーが光り始め、
鈴木のチョーカーを奪おうとしていた手に触れると、浅越の手がはじかれた。
「ちっ、赤花菊花石か。厄介な石を持っている人間が現れたものだ。」
一旦距離を置き、ヤナギブソンを睨み付ける浅越。それにかまわず、ギブソンは鈴木を案じる。
「大丈夫でした?」
「ああ、何とかな。」
「浅越さん、もうやめましょう!元の浅越さんに戻ってください!」
「うるさい!」
「何があったんかは知りませんけど、こんなんイヤですわ!」
「・・・・・今日はここまでにしておきましょう。でも、次でおしまいです。」
ヤナギブソンの石の存在がよほど面倒だったのか、浅越は身なりを整え、4人に背を向ける。
「浅越さん!」
「この世で絶対なのは、黒の力のみだ。すべての石を破壊し・・・・」
「?ゴエ?」
そこまで言いかけて、浅越は言葉につまり、うずくまる。
「黒の力は・・・お前たちには・・・絶対にっ・・・敗れない・・・くそっ!」
思い切り自分の頭を叩き、浅越は意識を保とうとしている。けれど何かがそれを邪魔しているらしい。
「浅越さん!聞こえてるんですか!戻ってきてください!浅越さん!」
すかさず駆け寄り、ヤナギブソンが浅越の体を揺さぶる。
「ギブ、ソン?みんな・・・・うるさい!」
普段の浅越の人格を振り払うように大声を出し、浅越は急に立ち上がり、楽屋を飛び出した。
ヤナギブソンがそれを追う。
「なんやねん。2重人格になっとるんか?」
残された3人も、慌てて2人の後を追った。とにかく、浅越を、元に戻さなければならない。
原因も方法も分からない。それでも、浅越はひどく苦しんでいるように見えたから。