陰と陽 [4]


623 名前:156=421 ◆SparrowTBE   投稿日:04/09/20 23:13:10

「どうしたの?さっきより随分動きが鈍いわね。」
友近はのんびりと川島を見つめている。

その川島は必死に蝶の攻撃を避けている所であった。
「くそっ…!」
クラクラとする頭を押さえて、川島は精神を集中させ、影の中へ入る。
友近は笑みを浮かべた。
「そんな能力はもう通用しないのよ!!」
友近が手を振りかざす。
その合図を受け、蝶は辺り一面にばらけた。
蝶から発される光が、周りにある全ての影を消す。
「影から入ったからには、影から出なきゃいけないんでしょ?こうしたら…」
川島が影から姿を現す。
「私の影から出るしかないわよね?」
「しまっ…」
影から出たばかりで無防備な川島に、蝶が一斉に襲いかかった。

まともに蝶の攻撃を受け、川島は倒れ込んだ。
すぐに身を起こそうとした時、川島は体の異変に気付いた。
「美しい薔薇の花に刺があるように、とっても美しいアタシの蝶にも毒があるの。貴方はもう動けない…。」
「なっ…!!!」
意識が朦朧としてきた川島に、友近は笑いながら近づいた。
「残念ね、貴方みたいな強い人が封印側にいるなんて。」
友近は膝をついて、川島の顎を自分の方へと向けた。
「綺麗な顔してるねぇ。どう?アタシの仲間にならない?そしたら命は助けてあげるわよ?」


川島は荒い息をしながらも、にやりと笑った。

「うるさいわ…年増。」

友近の表情が一変する。
川島はその表情を見て更に笑みを浮かべたが、次の瞬間には蝶によって壁に叩きつけられていた。

ガッッ
遠くから響いてきた鈍い音に、田村はドアを叩く手を止めた。
―まさか、川島が…。
最悪の事態が頭に浮かんだ田村は、再びドアを叩いた。

「くそっ!開けっ!!」
―出たいのか?
突然頭の中に、何者かの声が響いた。
「誰や!?」
その時、手に握りっぱなしだった石が強く光りだした。
―もう一度聞こう。力が必要か?
「…まさか、お前かっ!?」
田村は乱れた息を抑えて、強い口調で答えた。
「ええから早く力を貸してくれっ!!」
石の光が強まる。
石を握る手が、震えた。
―大きな力には大きな犠牲がつくものだ。
石の言葉に、田村は言葉を失う。
が、強い眼差しのまま頷いた。

「アイツばかり、戦わせてられへん。」

田村の体を、眩い光が包み込んだ。

「ぐあっ…。」
まともに体を打ちつけ、川島は低く呻いた。
しかし続けざまに、蝶の塊が川島を襲う。
友近の顔は、怒りに満ちていた。
「そんなに死にたいなら…お前達!やってしまいなさい!!」
ばらけていた蝶が一つに集まる。
はっきりとしない意識の中で、「死ぬんやろうなぁ」とどこか人事のように川島は思っていた。

「田村…。」

こんな時に相方の心配なんて、と苦笑を浮かべて川島は目を閉じた。

光の蝶は、まっすぐに川島へ向かってきていた。