陰と陽 [5]


711 名前:156=421 ◆SparrowTBE   投稿日:04/09/29 17:25:40

突如、強い光が辺りを照らした。

「いやっ!!もう何よ!?」
余りの強さに、友近は目を押さえて蹲る。
「川島っ!!」
光の先から聞こえてきた声に、川島は目を見開いた。
「…たむ…らっ?」
川島は伏せていたお陰で平気だが、友近はまだ目を押さえて蹲っていた。
そしてすぐに光の中から田村の姿が現れ、川島の体を抱き起こした。
「石の…力を…?」
川島は力無く田村を見上げる。
そんな川島に、田村は泣きそうな顔で答えた。
「当たり前やろ!!お前一人置いていけるかっ!!」
「田村…。」
田村は、川島を再び横にさせて友近の方へと向き直った。
「…川島、お前はいつも一人で背負い込みすぎるけどな…俺等二人で麒麟やないか。」
友近が怒りの形相のまま身を起こす。
田村は石を強く握り締めた。


「俺かて、戦える。」

その手はもう震えていない。

「もうっ!肌荒れちゃうじゃない!!アイツもやっちゃって!!」
ヒステリックに友近が叫ぶ。
しかし蝶はふらふらと見当違いの方向に飛び回る。
「な…何…あなた達、どうしちゃったのよ!?」
「なんかの漫画で読んだんやけどな…」
田村は不敵な笑みを浮かべながら石を構える。
「蝶っつうのは強い光があると方向感覚失うんやで!!」
田村の石が光を放った。

「おらぁっ!!」
田村は力強く腕を振り上げ、石の光によって次々と蝶を倒していく。
地面に落ちた蝶は、僅かに光を発しながら消滅していった。
大量にいた蝶も、少しずつ数を減らしていく。
田村は視界を蝶に邪魔されながらも、段々と友近の方へ歩み寄っていった。


その時だった。

「ぐあっ…!!」
後ろから聞こえた声に田村が振り向くと、いつの間に移動したのか友近が川島の腕をねじりあげていた。
「田村さん、そんなに相方が大事なら側に置いておかなきゃ。」
友近はまた妖しい笑みを浮かべている。

「川島っ…」「動かないでっ!!」
鋭い声をあげ、友近は石を川島の口元へ持っていった。
「ただでさえ弱ってるのに…更に毒を吸い込んだらどうなると思う?」
川島はなんとか抜け出そうと身を捻る。
しかし、石の力なのか、もしくは追い詰められたからこその力なのか、女とは思えないほどの力が川島を押さえ付けた。
「石を捨てなさい。そうしたら川島君を放してあげるから。」
石を手放す…つまり、蝶の攻撃をまともに浴びろということだ。
田村はぎり、と奥歯を噛み締めた。
―どうすればいい?
どうしようもなく、石を持った手を下ろした。

「田村ッ!!」

川島の声が響く。
田村は弾かれるように顔を上げた。
押さえつけられている川島の、その燃えるような目が田村を見つめていた。
その目を見た田村は、ぐっと唇をかみ締める。
そして、石を構えた。