品川庄司編 [1]


719 名前:619 ◆QiI3kW9CIA   投稿日:04/09/29 20:00:06

「いいもん拾っちゃった」
庄司は道端で拾った石を品川に見せた。
一見ガラス玉の様なそれは、日光に反射してやわらかな光をちらつかせている。
「なんていうんだろ、これ。知ってる?」
綺麗だよなぁと言いながらそれをコロコロと転がした。
品川は庄司の石をじっと見た。
色、形は違うものの、それは自分の持っている石と同じような感覚がする。
数日前、石が「解放」した品川は、その日からよく襲われるようになっていた。
原因はやはり同じように拾った石だった。
人並み外れた力を手に入れようとする奴が多いのだ。
その中に能力つきの人間も少なくない。結構な人数が所持しているという噂も流れている。
さらに「能力」を使った後のダメージも大きく、損ばかりだ。
幸い、庄司の口ぶりではまだそれは「解放」していないらしい。
出来るなら、何も知らない方がいい。
「ただのビー玉なんじゃねぇの?」そう言って品川は立ち上がり、部屋から出た。
庄司はまだコロコロとビー玉のようなものを転がしていた。

缶ジュースを飲みながら、胸元の石を品川は取り出した。
割と大きめのその石は、自分に何か語りかけているようにも見えた。
「やっぱりアイツも持ってたのか・・・」


「何を持ってるって?」

物陰から突然、数人の男の声がした。
顔を見てもよく思い出せない。ここ最近襲ってくる奴がリーダー格のようだ。
手にはナイフのようなものを持っている。

「何か用か。」
「すぐに済みます。大人しく石を渡せば何もしません。」
「いい加減覚えろ。俺には勝てねぇって。」
「今日は人数が違いますよ。」
リーダー格は笑った。男たちが臨戦態勢に入る。

「何人来ても一緒だ」
一斉に男たちが品川に襲い掛かかった。
品川は掌に握り締めている石に力を込めた。石が内側から輝く。そして目を瞑った。

右から3人、刃物を持って突っ込んで来た。左からは4人。
そして品川の体をナイフが刺した。


男たちは笑った。品川は動かない。
しかし品川が目を開けると、その形勢は逆転した。
右の3人の男たちのナイフは3人の男たちを貫いていた。
そしてもう一人の男は、品川に殴られて床に落ちた。ナイフは品川の手にあった。
品川の周りに、気絶している男が一人、腕を押さえているもの6人が倒れた。
その光景に、男たちは血の気が引いていき、やがて逃げていった。

そして3分が過ぎた頃には、そこにはリーダー格しか残っていなかった。
「言っただろ。何人来ても一緒だ。」
そう言うと、またリーダー格は笑った。目が少し血走っている。
「そうですね。でも、今日は石を渡してもらいますよ」
「だから無理だって言ってんだろ。」
「いや、今日はあんたの石を奪います。
 俺も石を貰ったんでね!」
男は小さな欠片をポケットから取り出し、握り締めた。
するとみるみる男の腕が膨れ上がり、身長と同じ位までに膨張した。
「行きますよ!」

男の腕が振り下ろされる。品川は後方に下がった。
再び石を握りしめ、その場に立つ。そしてゆっくりと目を閉じる。

「どれだけ殴ろうとしても、俺には当たらない。」
男の腕は、品川の頭に振り下ろされた。

床に、男の腕の作った大きな穴と、倒れた男がいた。
「こんなんじゃ俺は倒せねぇ。」
黒い欠片は、品川に踏まれて粉々になっていた。