アンジャッシュ編[2]


640 名前: 581  Mail: sage 投稿日: 07/09/13(木) 11:37:24 


「この状況で寝たフリってあるかいっ」
豪快な笑い声と共に頭をはたかれ、渡部はハッと目を開けた。
自分の感覚が戻ってくる。コーヒーの苦い後味。右手に握っている硬い熱。
瞬きを繰り返す。辺りを見回す。視力は正常だった。
どうした、と不思議そうに自分を見つめる上田に向き直って。
「パインと、…マンゴーあたりっすかね」
自信はあった。
上田は少し考えて、「それだ!」と顔を輝かせた。「お前すげえな」、と。

結局少し会話を楽しんだ後、上田は次の仕事のため立ち上がった。
「じゃ体に気をつけろよ」と言って去ろうとする先輩に、
「むしろそちらが」、と笑った。
仕事の量は、圧倒的に上田のほうが多いに決まっているので。

残された渡部は、缶コーヒーを一気に飲み干した。ぬるくて苦い。
甘酸っぱい後味は、もう無かった。


その日を境に、渡部は石の能力を小出しに使用し、実験するようになった。

そうして分かったのが、自分は目を閉じて念じることで他人と「同調」できるらしいこと。
対象人物一人の見るもの、聞くもの、味わうものなどを共有できるらしいこと。
つまり、相手の五感を探る事ができる、ということ。しかも、本人に気付かれずに、だ。
あと、どうやらそれは自分の目の前にいない人物でも可能だということ。
また、同調している最中は自分の体が全くのお留守状態になってしまうという、こと。

「…なあって!」
不意の大声に驚き、「同調」を解く。
目を開けると、児嶋がバックミラー越しに自分を睨んでいた。
今は、児嶋が運転する車で仕事に向かう最中だった。
一人後部座席に揺られる退屈を紛らわすべく、さっきまで山崎に「同調」していたのだ。
居酒屋らしきところで仲間と飲んでいた後輩は、相変わらず大きな声で喋り散らしていた。
店の熱気と喧騒から帰ってきた今も、耳に違和感。相方のせいではない。
「寝るなよ、人が話してる時に」苛立った様子で、児嶋。
「寝かせろよ、退屈なんだから」
「退屈ってあるかい、相方が喋ってんだぞ」
「わりいわりい」魂を込めずに謝ると、渡部は窓から遠くを眺めた。
何でさっさと焼き鳥食わねえんだよ、と山崎のおしゃべりな性格を、恨んだ。


児嶋は、局内の喫煙コーナーに足を踏み入れた。
濁った独特の空気の中、タバコを咥え、一人思考する。
(渡部の様子が、おかしい)
最近相方が頻繁に居眠りをすることには、とっくに気付いていた。
ほぼ毎日。しかも、時にはこちらが話している最中にさえも、目を閉じている。
おかしい。一体どうしたのだろう。極度の疲労なのか?
そういえば、顔色も悪くなった気がする。気のせいだと思いたいけれど。

…いや、実は、心当たりがあった。
「石」だ。
俺は馬鹿だけど、頭が悪いわけじゃあない。
あいつは何も言わないけど、もしかして何か能力が目覚めたんじゃないか?
その能力を使った反動で、疲れが出ているんじゃないか?
……。

「…って、漫画の読みすぎかなあ」
ぼそりと呟く。もちろん独り言だ。
左手を掲げると、チャラ、とチェーンの擦れる音がした。白と虹色が揺れている。
本当に選ばれたのか、俺は。
そう石に問う。
返事が無いのは、もちろん独り言だ。

溜め息が白くないことで、ようやく火をつけ忘れていたことに、気付いた。


局の外に出ると、渡部は深呼吸した。禁煙中なので、タバコは見たくもなかった。
都会独特の空気の中、空を見上げ、一人思考する。曇り空。
(近頃、体がだるい)
渡部は、首に下げていた石を手に取った。相変わらず透明だな、と思う。
疲労の原因は分かっていた。能力の多用だ。タダで使える力なんてこの世には無い。

程度こそあれ、物事はいつだって何かと引き換えなんだ。知ってんだ、俺。

渡部が毎日のように石を試すのには、目的があった。
一つは、自分の能力をよく知るため。
使い慣れていないと、いざというときに困るだろうから。
すっと自然に「同調」できるようにしておくことは、今後役立つだろうから。
一つは、能力を磨くため。
何度も力を使ううちに、精度が上がるかもしれないから。
今は五感だけだが、いつか精神さえも共有できるようになるかもしれないから。
(…できるようになって、どうするんだ?)
自分の不安な心が干渉してくる。うるさいな、なっといた方がいいんだよ。
(何に使うんだ、その力を)
悪いことには使わない。他人の心まで覗かなきゃいけない日が、いつか来る。
(「いつか」って、いつのことだ?)

「…一生来て欲しくない日のことだろ」

声に出す。何故か、全ては"もう一人の自分"が理解していた。知ってんだ、俺。


とある日。渡部は楽屋のソファに腰掛け、台本を確認していた。
児嶋は、他の芸人の楽屋に遊びに行っている。暢気なやつだな、と思う。
一通り確認した台本を閉じる。そろそろ、「練習」しなくては。
今日のターゲットは、設楽に決めた。理由なんて無い。なんとなく。いつもの事。
渡部はおもむろに目を閉じた。「同調」の体勢だ。
普段の練習のおかげで、「同調」に至るまでの作業は幾分スムーズかつ精確になっていた。
気分はコンピュータ。遠くの対象に素早くアクセスし、情報を読み取る。

真っ先に得たのは、視覚。漫画を読んでいるようだった。不気味な絵だな、と思う。
続いて、触覚。左手で頬杖を付き、右手はページを掴む。肌と紙の感触。
「で、そっちはどう?」
そして聴覚。設楽の、気の入っていない、緩い声が届く。
いわゆる骨伝導のせいか、普段の声より少しくぐもっている気がした。
「…いえ、全然。設楽さんみたいに大胆には聞き出せませんよ」
穏やかな声。聞き覚えがある。誰だっけ、ええと。
「はは、俺そんな大胆かなあ」
軽く笑い、右手がページを一枚繰る。本当に独特の絵柄だ、と思う。
「大体、聞いたところでそう簡単に教えてくれますかね」
「そりゃーもう。お前誠実そうだし、大丈夫だろ」
「っていうか、話聞いてます?」
相手の一言に、視点がゆるゆると漫画から人物に移る。
ああ、そうだ、こいつの声だったか。
「大事な話なんですよ」諌めるような口調で、ラーメンズ・小林はそう続けた。


「わーかってるよ。先公かっての、もう」設楽の右手が、渋々漫画を閉じて。
(大事な話だからこそ、漫画読みながらでも聞けるのにさ)
心で呟く。これは、しかし渡部の心中ではなかった。
ということは。

今一瞬、設楽の精神に同調できたのでは、ないか?

逸る気持ちを抑え、渡部は再び感覚を研ぎ澄ました。
読み取ってやる、もう一度。来い。

「いいか、」とのんびりした声は、設楽。
「人間っていうのはな、誰だって不安なんだよ」
はい、と真剣な声は、小林。
「誰だって、最初っから自分のことペラペラしゃべらねえよ。分かるだろ?」
「…はい」
「でもさ、相手がすげえ気の合う奴だったり、頼れる奴だったらさ、ほら。
自分から喋りたくなっちゃうんだよ。共有してもらいたくなるんだ、全部」
「いや、だからそこが難しいんですって、」真面目な声が頭を掻いた。
「設楽さんと違って、人を誘うのに向いてないんですよ、"僕の"は。」
"僕の"が修飾しているであろう名詞は、省略されていた。何だろう、顔か?
「それ、『シナリオ』に頼りすぎ。俺だって、毎回『説得』するわけじゃねえもん」
(…それにしても、随分真剣にナンパ論を語るんだなあ)
心で呟く。これは、しかし渡部の心中であった。


(やっぱり、変だ)
児嶋は、ソファに座ったまま動かない相方を、ドアの隙間越しに観察していた。
実は、他の芸人の楽屋に遊びに行くフリをして、楽屋の入り口にじっと潜んでいたのだ。
もちろん、渡部の挙動を探るためだった。
一人になれば、「石」を使うかもしれないから。

渡部が台本を閉じたとき、いよいよか、と身構えた。
が、期待に反し、どうやらそのまま眠ってしまったようで。肩を落とす。
…でも。
居眠りなら、普通身じろぎの一つぐらいしていいんじゃあ、ないか?

そうして観察を始めてから5分が経過しようとした時。
渡部の胸の辺りから、微かに透明の光が漏れていることに、やっと気が付いた。
(…いつから光っていた?最初からだったか?一体何が光っている?)

そうだ。「石」の疲労で居眠りが増えたんじゃあない。
多分、「石」の使用が居眠りに見えていたんだ。
そんな頻度で石を使っていたならば、そりゃあ体調だって悪くなる、はずだ。

答えが分かった瞬間、児嶋は勢いよく相方の元へ駆け出していた。
力を使うのを、やめさせるために。


渡部は、急に「同調」の精度が落ち始めたのを感じた。
かろうじて視覚は残っているが、いまや触覚と聴覚が完全に奪われつつある。
接続した自分の意識が、設楽の中から徐々に追い出されていくような、感覚。
必死に視覚だけでも保とうとしたが、それも上手くいかない。
(そういえば、設楽の中に入ってから、どれぐらい経った?)
普段は、安全のために3分程度に留めていた。
しかし今日は、とっくに5分ぐらい経っていそうで。
(限界か、くそ)

両肩を掴まれているのを感じた。触覚。
次いで聴覚。何度も名前を呼ばれている。聞こえてるっての。
ゆっくり目を開ける。うろたえまくった表情は、相方だった。視覚。
割と何度も両肩を揺さぶられていたのだろうか、前後の方向に眩暈を感じた。
「…何だ、居たのかよ…」
平静を装うも、内心は焦りに満ちていた。自分の能力については、隠していたので。
やられた。いつから見られていた?ばれただろうな、さすがに。
だがここで、急に瞼が鉛のようになった。とても目を開けていられない。

しまった、と思った時には、すでに遅すぎた。
何でもっと早くに気付けなかったんだろう。
今となっては、それも無意味な思考かもしれなかったけれど。

児嶋の顔や声が一気に遠のき、渡部の意識は、ついに途切れた。
気分はコンピュータ。強制終了。


(ーー今、何時だろう)
目を覚ました渡部の、最初の思考だった。

重い瞼を無理やりこじ開ける。頭が痛い。
どうやらベッドで眠っていたようだ。自分のベッドでないことは分かった。
布団にくるまれている感覚を再認すると、また意識が遠のきそうになった。まだ眠い。
目だけで辺りを見回す。もちろん、自分の部屋でないことも、分かった。
なぜここに居るのかは把握できなかったが、場所には見覚えがあった。確かここは…
「お、いけるか渡部」
ドアから、声が近づいてくる。苦労してそちらに目をやると、眠気が飛んだ。
「…有田さん?」
そうだ、昔よく遊びに来たっけ。
渡部が上半身を起こそうとするのを、しかし有田は冷静に制した。「無理すんな」、と。
言葉に甘え、再び枕に頭を落とす。確かに、まだ体は本調子ではない。
「あの、」と渡部。「何で僕、寝てんすか、有田さん家で」
覚えがなかった。最後の記憶を必死に辿ってみる。台本しか思い出せない。
「そうそう、それね。楽屋で倒れたんだよ、お前」
さらりと言ってのけると、有田はドアの向こうに呼びかけた。
「おーい、やっと起きたぞ」
えっ、という弾んだ声の後、どたどたと騒がしくやってきたのは、山崎だった。
「ああよかった、大丈夫ですか?」渡部を覗き込み、満面の笑みだ。
渡部はというと、与えられた情報を消化しきれずに、呆然と頷くだけだった。


山崎から水の入ったコップを受け取り、一気に飲み干す。
その渇きの具合から、気を失っていた時間が長かったことを、悟った。
「…どれぐらい寝てました、僕」疑問を口にしてみる。
有田は腕時計を見やり、今は1時前だなあ、と噛み合わない返答。
「1時…ってことは…?」
「ああ、夜中のですよ」
山崎が補足する。いや、うん、そこじゃなくてさ。
「冗談冗談。11時間ちょっとだよ。仕事の方は田中がなんとかしてくれたから」
当たり前のような口ぶりで有田。しかし、どうしても意味が飲み込めない。
「…田中…?」
「ああ、アンガールズのですよ」山崎が補足する。いや、うん、そこじゃなくてさ。
改めて有田に問う。「っていうか、田中が何をしてくれたんすか?」
「収録を来月に延期するよう、プロデューサーさんに頼んでくれたんだよ」
「ほら、石ですよ。田中さんの能力、相手を納得させるやつなんです」
山崎の補足。今度はありがたかった。
(…って、石、だって?)
目を見開く。田中が石を持っていること以上に、有田と山崎がその能力を把握している
ことに驚いた。
「あれ、石、知りません?渡部さんだって持ってるじゃないすかあ」
「っていうか、力の使いすぎでダウンしたんだろ、お前」
「いや、その…」どう答えていいか分からない。
「聞いたぞ、児嶋から。何で隠すんだよ」不機嫌そうに、有田。
「そうですよ、水臭いなあ、」山崎も、軽く笑って便乗する。「仲間でしょ、俺ら」

ーー『仲間』。

月並みな単語だが、その一言で幾分心が軽くなった気が、した。


直後、携帯の電子音が鳴り響く。急な物音に心臓が跳ね上がった。
「あ。わりい、俺だわ」と有田。のそのそと応答して。
何やら親しげに会話を交わしたあと、それを渡部に差し出してきた。
「…え、」
「上田。替われってさ」
よく分からないまま携帯を受け取り、もしもし、と呼びかけてみる。
『おう、どうだ、よく寝られたか?』
「…はは、おかげさまで」受話器越しのジョークに、力なく笑んだ。
『ったくよー、自販機前で忠告しただろ?"体に気をつけろ"ってさ』
叱られた。何だ、そういう意味だったのか、あれは。
「って上田さんも知ってたんですか、石のこと」
『まあな。大体あれだ、お前が寝たフリしてた時、光ってたぞ、石』
「……」
『児嶋からお前が倒れたって聞いたときは、まあピンときたね』
「…すみません」
『病院に担ぎこむのも、ややこしいしな。
それにその症状じゃ周期性傾眠症とか言われるのがオチだろうから、
とりあえず児嶋には、車で有田ん家に運ぶよう指示しといたってわけだ。この俺が』
「あー…」倒れるまでの記憶が蘇ってくる。
石。設楽。同調。以降闇のち現在。
『うお、じゃあな、後で柴田にも礼言っとけよ!』
そう言い残すと、上田は慌ただしく電話を切った。
仕事の合間に、わざわざ電話をくれたのだろう。その心遣いが嬉しい。
渡部は、やっぱりこの人のほうが忙しそうだな、と改めて思った。

「柴田の石はですね、」と突然口を開いたのは、山崎。
「回復とか手助けに役立つ能力なんです」
渡部と有田は同時に声の主を見つめた。
「…ああ、そうそう。柴田が介抱してくれたおかげなんだぞ、今お前が動けるの。
仕事があったから、もう帰ったんだけどな。心配してたぞ、あいつ」
思い出したように有田が説明する。
それによって渡部は、先刻の上田の台詞を理解した。
山崎が続ける。
「僕の能力は召喚で、有田さんの能力は、ええと…弱点エグリです」
「もっと言い方ってあるだろ」
有田は苦笑し、あとの台詞を引き継いで。
「上田はサイコメトラーだ。いちいち薀蓄言わないと駄目とかで、うっとおしいけど」
「ほんと、なんか偉そうで腹立つんですよねえ」
「な、生理的にきもいよな」
そう言い合って、からからと二人笑っている。
渡部は、終始ぽかんとしていた。


「ほら、渡部さんも。教えてくださいって、能力」
「そうそう、秘密はみんなで持った方が、楽だろ。荷物は軽いに限るんだって」
脳が、だんだん巡り始めてくる。

確かに一人よりも、『仲間』同士で助け合った方が、楽だ。
だがその結果、その大切な『仲間』まで危険に巻き込んでしまうと、したら?

また、"自分"の声。そんな事分かってる。
…だけど、その時は。

(ーーその時は、俺が責任を取れば、良いから)

そうして慎重な"自分"を押さえ込んで。
覚悟を決めると、渡部は自分の能力について、ゆっくりと話し出した。


『でもさ、相手がすげえ気の合う奴だったり、頼れる奴だったらさ、ほら。
自分から喋りたくなっちゃうんだよ。共有してもらいたくなるんだ、全部』

心の中で"自分"に言い訳。
設楽のナンパ論も的を射ているな、と自嘲気味に笑んだ。


それから二日後。児嶋は、自分の楽屋に向かう途中だった。が。
「おざーっす!」と元気の良い挨拶に背中をぴしゃりとぶたれ足を止めた。
びっくりして振り返る。にこにこテンションの高いのは、柴田だ。
「いてえな、もう…」叩かれた箇所をさすりながら苦情を漏らす。
「今日は、ネタ番組ですか?」
って先輩殴っといてスルーかい。せめてイジれよ。
頷いてやると、「よかったですね」、と返される。どうも柴田との会話は、ちぐはぐだ。
「…ほらあ、渡部さんですよ。もう元気になったんですよね?」
「あー、昨日会ったらピンピンしてた。人騒がせな奴だよ、まったく」

これも上田の機転と、柴田の石、そして有田・山崎のフォローのおかげだろう。
あと、半日弱もの睡眠といったところか。羨ましい。自分だってたっぷり寝たい。
児嶋はというと、渡部を有田の家に運んだ後は、離れた地で田中と飲んでいた。
だって、仕事の件のお礼に奢ってやりたかったし。
大体、別にあの場に居たって自分じゃ何の役にも立てなかったろうし。

「で、やっと教えてもらったんでしょ、渡部さんの能力」
「…っつうかさ、あいつ慎重すぎだよな。偉そうなくせに、てんでビビリなの。
もし俺だったら、自分の能力分かったら、まず皆に自慢して回るって、はは」
「ってまだ分かってないんすか、自分の能力!?」
「そこかい」
何だ、やはり間の抜けたことなのか。恥ずかしくなり、自分の頭を乱暴に掻く。
「でも大丈夫ですよ、いつかは分かるもんですから」
「『いつか』っていつだよ?」
「そりゃあ、一刻も早く来て欲しい日でしょうよ」
そう言うと、柴田は満足げに去っていった。
何じゃそりゃ。後輩の適当な返しに、呆れ顔になった。


児嶋は楽屋のドアノブを捻った。
正面の壁時計を見て、また早く来すぎたことに気づく。

どうせ今日も、渡部は遅いんだろうな。
どうせ今日も、タバコ吸いまくる羽目になるんだろうな。
そう考え、苦笑を浮かべた。


児嶋の期待する『いつか』は、これから三週間後の、とある日。

渡部の危惧する『いつか』は、既に動き始めている。